旅立ちの日
・・・はずが、なぜかその道中にあった森の中で、すやすやと眠っている赤子を拾った。
赤子が入っていた籠や布も見てみたが、身元が分かるものは何もない。
「ふあ・・・?」
抱き上げた衝撃で目を覚ましたが、まだ眠いらしく、こちらをぼんやりと見つめている。
黒い髪に、赤い瞳。ここらでは見かけない容姿だった。
「・・・お前も、一人なのか?」
生きるために赤ん坊を置いていったのか、それとも、もう両親は亡くなってしまったからここにいるのか、
それは分からない。
だけど、その姿がなぜか今の俺と重なってしまった。
「・・・俺と一緒に行くか?」
優しく抱き直すと、赤子がこちらに手を伸ばした。
そして、髪飾りをつかみ、ぐいっと引っ張る。
「あうう~」
きゃっきゃっとうれしそうに笑っていた。
そんな赤子の姿を見て、俺は決意した。
この子は、俺が育てよう
俺自身もまだ子供だ。けれど、赤子をこのまま放っておくわけにはいかない。
孤独になってしまった寂しさもあっただろうが、それでも、この子を見殺しにして後悔する方がいやだった。
そうして、二人の旅が始まった。