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365章 ミクラサナエがやってきた

 ミサキの家に、ミクラサナエがやってきた。

「ミサキさん、こんにちは。ミクラサナエといいます」

「サナエさん、いらっしゃい」

 ミサキの視線は真っ先に、頭に向かうこととなった。サナエの髪の毛は、サボテンさながら。長い間生きてきたけど、このような髪形は初めてである。

「ミサキさん、髪の毛を気にしているんですか?」

「はい。初めて見たので、不思議な感覚です」

「ミサキさんも、髪型をサボテンにしましょう。注目度は大きくアップしますよ」

「せっかくの申し出ですけど、お断りさせていただきます」

 サボテン姿で歩いたら、公衆の前で大恥をかくことになる。恥をかかなくとも、笑われるのは確実だ。

「サボテンはダメなら、木の枝はどうですか?」

「そちらもお断りします」

 どのように髪をくくれば、木の枝になるのか。ミサキには見当もつかなかった。

 サナエは鞄の中から、一枚の絵を取り出す。

「ミサキさんのために、3日間かけて描いてきました。部屋に飾っていただけないでしょうか」

「ありがとうございます」

 あまりに独特な世界観ゆえに、絵の良さは伝わってこなかった。彼女の絵を見せられたら、100人中99人はいらないと答えそうだ。

 100人のうち99人はいらないといっても、1人が10万ペソを出したいと思える。絵の世界で生きていくためには、最高値をつける人間を必要とする。全員100ペソの評価よりも、突き抜けていたほうがいい世界。ルヒカ、エマエマ、ズービトルのように、大衆から評価を受ける必要は皆無だ。

 ミサキのおなかはぎゅるるとなった。

「ミサキさんの大食いタイムですね。とっても楽しみです」

 ミサキは自販機で、肉まん15個、豚まん10個、カレーまん15個を注文する。サナエはその様子を確認し、大いに興奮していた。

「噂で聞いていましたけど、すさまじい食欲ですね。私は絶対にマネできません」

 同じことをしたら、一カ月で20キロ以上の体重増。一年後には、自力で歩けない体になると思われる。二~三年後には、世界一の肥満だ。

 ミサキの体重は、異世界にやってきたときとまったく同じ。現在は身長160センチ、体重42キロである。

 肉まん15個を、3分で完食する。空腹から解消され、心は余裕を取り戻す。

 豚まん10個を、5分かけて完食。皮のもっちり感、肉のジューシーさは食べているものを幸せにした。 

 カレーまん15個を、6分で完食する。おなかを満たされたことで、幸せな気分になれた。

「ミサキさんの食事は素晴らしいです。見ている人を幸せにします」

 サナエは子供さながらに、瞳をキラキラとさせていた。

「ミサキさん、次の食事はいつですか?」

「2~3時間後くらいです」

 腹ペコ女性の必要摂取カロリーは、1日で20000キロカロリー以上。大量に食べなくては、あっという間にあの世送りだ。

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