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第2章10話 緊急会議 近づく影

乾襲撃から1週間後、急遽リモートで師団長会議が開催された。

 悠:
 「急な召集に応じてくれてありがとう。」

 スターク:
 「それはいいが、怪我はいいのか?大怪我したって聞いたけど。」

 悠:
 「あぁ、うちの医療班は優秀だからな。もう問題ない。」

 アクエ:
 「それで私たちを集めた要件ってなに?」

 悠:
 「まずは1週間前にうちの基地であった出来事を報告する。彩音。」

彩音が1週間前にあった乾襲撃の出来事を事細かに報告した。

 彩音:
 「以上が1週間前にあった乾襲撃の詳細です。」

 マキシム:
 「まさか陸王の眷属を倒すとは。」

 シーラ:
 「領土奪還の大きな一歩ね。」

みんなが報告を聞いて喜んでいる中、

 氷室:
 「確かに、眷属撃破は喜ばしいことだが、喜んでばっかりではいられないぞ。新しい問題も出たからな。薊の件だ。」

氷室の発言に悠は軽く頷き、氷室は話を続けた。

 氷室:
 「まず、あの場に居合わせた俺の意見だが薊が悠の父親であることは間違いないと思う。」

 李:
 「なぜ、そう思ったネ。」

 氷室:
 「あいつの言葉に嘘は感じれなかった。それに、あの時の悠の反応を見たら偽物だとは思えない。」

 マキシム:
 「悠坊どうなんだい?」

師団長全員が悠のほうを向いた。

 悠:
 「隠していて悪かった。確かに薊は俺の実の父親だ。」

 悠:
 「だけど信じてほしい。親が誰であろうと俺は俺だ。みんなを守るために様々なものを捨てて戦うことをいとわない。それだけは・・・。」

悠は内心不安だった。薊が自分の父親だとわかった時みんなに攻められるのではないか、蔑まれるのではないか。はたまた親の全責任をとって殺されるのではないか。そんな不安に悠は押しつぶされそうだった。

 氷室;
 「なんでお前を攻める必要があるんだよ。」

 悠:
 「え?」

 氷室:
 「俺たちはお前がいろんなもの捨てて頑張ってきたのも知ってるし、お前が俺たちを裏切るなんてこれっぽっちも思ってねぇよ。」

 マキシム:
 「変な心配しなさんな悠坊。」

 シーラ:
 「子供が親の責任なんてとらなくていいんだよ。」

みんなの温かい言葉に悠は思わず涙をこぼした。

 悠:
 「みんな・・・ありがとう。」

 スターク:
 「やっと泣けたな。そのほうが子供らしいぞ。」

 李:
 「悠ハもっと俺ラを頼るネ。」

 悠:
 「あぁ、そうさせてもらう。」

一方その頃、南部のルーカス大統領は総司令のもとに訪れていた。

 ルーカス:
 「突然の訪問に対応していただきありがとうございます。総司令殿。」

 千代:
 「いえ、訪問理由と時期は聞いていましたのでご心配なく。」

ルーカス大統領は深く頭を下げて南部でのことや集合会議でのことを謝罪した。

 ルーカス:
 「この度は私の部下がそちらの師団長殿に多大な迷惑をかけて申し訳ない。」

 千代:
 「もう大丈夫ですよ。悠が許したのに私が許さないのは違いますからね。」

ルーカス大統領は思わず安堵の息を漏らした。

 千代:
 「それで訪問はそれだけですか?」

 ルーカス:
 「流石総司令殿、鋭いですな。南部に陸王の眷属という魔物が現れました。」

 千代:
 「!なんですって。名前は聞きましたか?」

 ルーカス:
 「はい、名を巽と言っておりました。」

 千代:
 「巽・・・聞いたことのない魔物ですね。何か被害がありました?」

 ルーカス:
 「いえ、市民や街には被害はありませんでした。報告によると現れてすぐに帰っていったらしく。」

 千代:
 「成程、わかりました。そのことについても師団長達と相談しましょう。」

 ルーカス:
 「はい、お時間をとっていただきありがとうございます。」

 千代:
 「いいんですよ。最後に。」

 ルーカス:
 「?」

 千代:
 「今後、悠に同じようなことがあったら私何するかわかりませんから。努々お忘れなく。」

千代のあまりの圧にルーカス大統領は一歩後ろに引いてしまった。

 ルーカス:
 「肝に銘じておきます。」

ルーカス大統領は総司令のもとを後にした。その頃師団長会議では、今後の対策について話し合われていた。

 氷室:
 「どうしたもんかね。このまま攻め込むのも有りっちゃありだが。」

 悠:
 「いや、それはやめたほうがいいだろう。」

 スターク:
 「なんでだ?陸王の眷属の一角が落ちた今、陸王の領地を攻め込むのは一つの手だと思う。」

 悠:
 「確かにその意見は正しい。だが、時期が早すぎると思う。何より今はこっちの力をつけるべきだと思う。」

 悠:
 「正直、ここいるメンバーなら眷属には勝てると思う。だが、あいつらにはとっておきがあるからな。しかも、相当強力になるやつ。」

 マキシム:
 「とっておきじゃと?彩音ちゃんが言っていた薬ってやつか。」

 悠:
 「あぁ、乾の説明によると向こうで災害級の魔物の力を打ち込むらしい。坤のお手製だそうだ。」

 アクエ:
 「そんなに強くなるの?」

 悠:
 「あぁ、乾の場合は単純な力の強化だったがそれでもやられかけたが。」

 その頃、南部のスタークのいる基地に近づく怪しい影が1つ。

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