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第2章9話 決着! 悠vs乾

坤の薬によりベヒモスの力を得た乾の猛攻により、悠はピンチに陥っていた。

 乾:
 「すぐに楽にしてやろう。」

 悠:
 「何勝った気でいるんだ。まだ俺は立ってるぞ、まだ武器を持ってるぞ。そんな相手がいるのに勝った気でいるなんて傲慢だなお前。」

 乾:
 「そのよくしゃべる口ごと叩き潰してやる。汝さえ殺せばここは制圧したも同然よ。」

 乾:
 「もうその体も限界であろう。死ね。」

 悠:
 「俺は第1師団師団長だ。様々物を捨ててみんなを守るためにここに立ってるんだ。こんな俺でもついてきてくれるみんな、認めてくれるみんな。そんなみんなを守るためこんなところで倒れるわけには行かないんだよ。」

三度激しくぶつかり合った。乾の攻撃は一切緩むことはなく、スピードは速くなり破壊力も増していった。しかし、

 乾:
 「なんでだ、今の我にはベヒモスの力が宿っているのだぞ!それなのになぜ我が押されている!」

悠の猛攻に乾の攻撃は悠に届かなくなっていた。

 悠:
 『彼岸 黒 黒縄荊≪縛≫』

悠は『黒縄荊』で乾の四肢を拘束した。

 悠:
 「この世には様々な発電方法がある。火力・風力・原子力。この技は戦いの中で様々な方法で電気を蓄える。その中には痛みも含まれる。お前が攻撃してくれたおかげで最大まで溜まった。」

 乾:
 「クソが―!」

 悠:
 『彼岸 黄色 霹靂神・雷華(はたたかみ・らいか)』

『彼岸』の電撃を纏った最速の一撃は乾の腹部を貫いた。
『黄色 霹靂神・雷華』は戦いの最中で様々な方法で電気を彼岸に蓄電し、一気に放出しながら攻撃する技。最後に使えば使うほど威力は増し、最大まで溜まった時の一撃は音速を超える。

 悠:
 「まだ息がある。これもベヒモスの力の影響か。」

 乾:
 「ごふっ、次は絶対殺してやる。完膚なきまでな。」

 悠:
 「お前に次なんてないよ。俺の部下に手を出したんだ、人の大事なものに手を出した罰を受けてもらう。」

 悠:
 『彼岸 黒 黒縄荊≪胎≫』

黒い荊が乾の体を球状にゆっくり包んでいく。

 悠:
 「黒縄荊≪胎≫は包んだ対象に地獄を見せ、トラウマを植え込み自我を崩壊させる。さらに、内側からは絶対に壊せない。解除できるのは俺だけだ。悪夢の中でゆっくりお休み。」

 乾:
 「やめろ、やめろー!」

乾は完全に包み込まれた。

 悠:
 「彩音聞こえるか、防護壁を解除して荒太の手当てをしてくれ。」

 彩音:
 「すぐに向かいます。」

その後、防護壁が解除され医療班が訓練場に急行した。

 彩音:
 「団長も早く手当てしないと、すぐ無理するんですから。」

 悠:
 「先に荒太を。」

 彩音:
 「荒太はもう治療を受けてます。命に別条はありません。」

 悠:
 「よかった。」

 彩音:
 「団長行きますよ。」

悠は医療班からの治療を受けた。骨を数本折られていたが命に別状はなかった。少しして、第2師団長の氷室と総司令の千代が乾を回収しにが第1の基地へとやってきた。

 氷室:
 「悠、大丈夫か?だいぶボロボロだけど。」

 悠:
 「あぁ、なんとかな。」

 千代:
 「早速で悪いんだけど、乾ってやつのもとに案内してくれない?こちらで幽閉と尋問するから。」

 悠:
 「わかりました。こちらです。」

悠たちは乾がいる第1訓練場へと向かった。

 悠:
 「あの中にいます。涼介兄、もし暴れたらお願い俺はちょっときつい。」

 氷室:
 「任せろ。」

悠が黒縄荊を解除しようとした時、突然50代後半くらいの男性が黒い霧から現れた。

 男性:
 「本当に強くなったな。俺は嬉しいよ。」

その男性は涙ぐみながらそう言った。

 氷室:
 「なんだこいつ?」

氷室が悠のほうに目をやるとひどく震えていた。

 氷室:
 「おい、悠。大丈夫か?震えているぞ。」

 悠:
 「おい、なんでこんなところにいる『薊万作』!」

その場にいた全員が驚いた。この世を崩壊させた張本人がその場にいることに。

 薊:
 「おいおい、そんな寂しいこと言うなよ。悲しいだろ我が息子よ。」

そう、この世を崩壊させた張本人薊万作は悠の実の父親だった。

 氷室:
 「息子だと?どういうことだ。息子がいるのになぜこんなことを。」

 薊:
 「俺は世界がつまらないと思っていた。それと同時に生まれてくる子供にこんなつまらない世界を味あわせたくないとも思った。だから、スリリングで楽しい世界にしようと考えた。その結果がこの世界だよ。どうだ悠?とても楽しい世界だろ?」

 千代:
 「まさか、そのためだけに何十万・何百万という人を犠牲にしたの?」

 薊:
 「そうだ、俺は悠と妻さえいればいい。家族で幸せに暮らそう。この楽しい世界で。」

悠は恐ろしく感じていた。全世界の人を巻き込んだ行動が底なしの悪意でも飽くなき好奇心でもない純粋な親心であったことに。本気で家族以外犠牲にしてもいいと思っていたことに。

酷く震えていた悠に千代が触れようとした瞬間

 薊:
 「おい、なに許可なく人の息子に触ろうとしている。悠に触っていいのは俺か妻だけだ。」

 悠:
 「何が俺か妻だけだ。母さんは俺を生んだ時に亡くなってるよ。」

 薊:
 「大丈夫、お前のお母さんはいるよ。」

霧から氷漬けされた母親が出てきた。

 薊:
 「本当にお母さんは美しい。本当はすぐにも悠を連れて帰りたいけどそれはまた今度。」

薊はいとも簡単に黒縄荊を壊した。

 乾:
 「薊様、すみません。」

 薊:
 「あぁ、本当に悠は強くなったあの乾がここまでやられるなんて。やっぱり俺の行動は正しかった。でも、乾お前は用済みだ。」

薊は銃で乾の頭部を撃ち、乾を殺した。

 悠:
 「乾を殺した?」

 薊:
 「それじゃあ悠、絶対迎えに来るからね。待っててね。」

薊は乾の死体を担いで、帰っていった。

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