354章 ほのかと顔合わせ
一人部屋でごろごろしていると、スマートフォンの電源が鳴った。
「ミサキさん、お体はどうですか?」
と、シノブからメッセージが入っていた。
「これといった問題はないよ。気にかけてくれてありがとう」
「迷惑だと思いますけど、定期的に連絡を入れさせてもらいます。返信があまりに遅かったら、宿関係者などに様子を確認してもらいます」
「シノブちゃん、そこまでやらなくていいよ」
「ミサキさんの一人旅は、生命の危機に関わるかもしれません。放置するというのは、こちらにはできません」
シノブとやり取りをしたあと、ミサキのよく知っている人物と顔を合わせる。
「ミサキちゃん、ヤッホー」
「ホノカちゃん、どうしたの?」
「今日はこちらで、ゆっくりしようと思って」
「おなかの中にいた子供はどうなっているの?」
ホノカはお腹をさすったあと、冷たい表情を見せた。
「トイレを利用しているときに、流産してしまったみたい。新しい命を誕生させるためには、妊娠させる必要がある」
「そっか」
「流産したことで、破局したよ。フリーとして、彼氏を探していくことになる」
二人をつなげていたのは、おなかの中にいた赤ちゃん。本物の心のつながりは、最初からなかったのかもしれない。
「ミサキちゃん、今日は一人だけなの?」
「そうだよ。一人旅をしたくなって・・・・・・」
「どうしてもダメだと思ったときは、こちらを頼ってくれていいよ」
一人旅をしようとしたところで、二人の知り合いと出会ってしまった。誰かによって、手回しをされた可能性を疑った。
ホノカは髪の毛を繰り返し触った。
「ホノカちゃん。どうかしたの?」
「妊娠直後から、髪の毛が大量に抜けるようになったの。最近は減ったみたいだけど、たくさん抜けるよ」
妊娠をすると、体内のバランスに変化が起こる。髪の毛は真っ先に、ターゲットになるのかも
しれない。
「大切に守ってきただけに、抜けていくのはとっても悲しい」
長髪の女性は手入れに時間をかける。毎日続けるうちに、大切な一部と思うようになる。
「ミサキちゃん、一緒に過ごしてもいい?」
ずっと一人でいるのは寂しい。ちょっとくらいなら、一緒に過ごしてもいいかなと思った。
「うん。いいよ」
「ミサキちゃん、ありがとう」
ホノカはいつにもなく、ミサキに甘えてきた。流産したこと、破局したこと、紙の抜けたことのショックは、予想している以上に大きいようだ。