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第3章の第58話 X5 マルチメスとラテックスアレルギーとシックルメス



【手術前 手洗い場】
――手術室前にて、手を洗う2人。
それは、クレメンティーナとスプリングの2人だった。
――そして今、手術室では、人に代わりアンドロイドが、手術で使う医療機器の点検を行っていた。
あくまで今回は、クレメンティーナに実際の医療現場を経験させ、なおかつ、医療事故という目的の元、預かっているのが人の命というものを自覚させるのが、狙いだからだ。
手洗いを済ませ、アルコール消毒をすることも忘れない。
「……クリスティ
Christie(クリスティ)」
「……はい
……YES(イエス)」
彼にしては珍しく、あたしの仮名ではなく、本名で尋ねてきた。
いったい何かしら?
「現場(リアル)と遠隔操作(リモートコントロール)、どちらを希望だ!?
On-site or Remote Control,Which do you Prefer!?(ワンサイド オア リモートコントロール、ウィッチ ドゥ ユー プリファー!?)」
「私は現場を選びます!
I Choose the Scene(アイ チューズ ザ シーン!)」
「そうか……わかった……。
I See……I Understand(アイ シィ……アイ アンダースタンド)」
「……」

【――あたしは、何を当たり前だとばかりに、嘆息したの】
【でも、今になって思えば………………後悔してる……ッ】

手洗い場から連れ添って、手術室に向かう2人。
手を汚さないように、手を胸の高さに上げて入っていく。
人型アンドロイドが、2人に代わり、医療機器の総点検を行っている。
あたし達は、手術台の前に立ち、
「………………」
「………………」
送られてくる患者さんを待つ。
次第にその意識を、命を尊ぶ医師の心の在り方に。

――その時、手術室の自動ドアが開き、機器出しを受け負っていたドクターライセンが入室した。
押しているのは手押し車、その上にはいくつもの手術器具が置かれていた。
「済みません、遅れました」
「……イヤ、バッチリだ!」
「……」
ライセン先生(僕)は安心したように、呼気を吐く。
そして、あるものに目が留まってしまい。
「うわぁ……」
と呟きを漏らしてしまった。
「?」
そう、それは、見事なまでのオールナチュラル、クレメンティーナさんのおっぱいだった。
名付けるなら、そう、クリパイならぬクレパイ。
プリン
それは、手術着の上からでもわかるくらい、不自然なまでに盛り上がっていた。
とスプリング様が。
「……どうした?」
「いや……毎度ながらいつも思うのですが……、……その……大丈夫なんですか?」
「何が?」
と尋ね返すスピリング様に、
その横からクレメンティナーさんが振り向き、そのおっぱいが、プルルン、と揺れる。
「……いえ、手術なんてそもそもできるんですか!? 僕でもわかりますよ! 遠隔操作はできても、現場は無理だと……!!」
僕はそう異議を唱えた。
「あぁ、そんなこと!?」
そう問い返したのは、クレメンティーナさんご本人だった。
彼女はこう呟く。
「エキナセア!」
『YES マスター!』

【クレメンティーナ(本名クリスティ)のAIナビ:エキナセア】
その学名は、echinacea(エキナセア)。
花言葉からきているの、癒しと治療を思って。
主な花言葉は、日本では、深い愛、優しさ、あなたの痛みを癒します。
この花言葉が、海外(西洋)では、強さと健康を表すのよ。
誕生開花は、10月13日から。
開花時期は、6月から8月頃。
この花言葉は、日本の折り鶴(ペーパークレイン)からもイメージされているの。
入院患者さんの早期退院を願って。
エキナエアには、色別の花言葉がある。
それぞれ、日本では、赤は深い愛、ピンクはやさしさ、オレンジは暖かな愛、黄色は包み込む愛、白は癒し。
これが西洋では、赤は強さ、ピンクは優しい強さ、オレンジは健康、黄色は眩しい健康、白はあなたを守ります……。
つまり、彼女には5段階のボディカラーがあるの。
今の彼女のボディカラーは、『赤』、強さモードね。
そして、こちらは、クリスティ(あたし)の仕様に合わせ、流れるような『赤くて』長い髪に、青い瞳に、手術着の上からでもわかるグラマーな体形を施していた。
もちろん、現物のあたしほど大きくはない。
無駄にぜい肉だと思われるからね……。

シュイ―……
「えっ!?」
「フッ」
「フフフッ……」
見る見るうちにクレメンティーナさんのおっぱいが縮んでいく。
驚き得るドクターライセン、
笑みを浮かべるスプリング様にあたし。
見る見るうちに、胸部が圧迫されていく。……も、もしかして……。

「『乳房圧迫抑制スーツ』だ!」

そう、このスーツの名前を明かしたのはスプリング様。
それは今、手術着の下に着こんでいるものだ。
クレメンティーナ専用装備である。
僕はその名を聞いて。
「『乳房圧迫抑制スーツ……!?』」
と驚いた様で、オウム返ししてしまう。
「クレメンティーナは取り分け、本校に在籍しているどんな女性よりも大きいからな!! 俺が造るよう特別受注製作依頼したんだ……!」
「フフッ……すごいでしょ!?」
シュイ―……
とクレメンティーナさんのおっぱいが縮んだ。いいや胸部圧迫抑制されたんだ。
す、すごいッ。
「手術でどうしても邪魔になってくるからね……。これ……?」
あたしは手は使えないので、腰を振って、胸部圧迫されたおっぱいを揺らした。
揺らしてみるが、固定圧迫されているので、柔らかさは伝わらない……。
むしろ、逆に硬さを伝えるくらいだ。
まぁ、ここまで圧迫されているので、見た目以上にギュッギュッされてて、長時間の運用は痛いんだけどね……。
まだまだ、要改良の余地があるわね……。
「一般的にG以上になると、頭を下げても胸が邪魔して、足元なんて見えないものね……!
そんな危ない状態で、とても手術なんて行えない……。
だからこれは、その人達向けに、特別な依頼を受けて、オーダーメイド製作されているの!」
「完全オーダーメイド……」
「ええ! だから一般的には、手術する女医の理想体型は、D、もしくはEがいいとされてるの……!」
「D……E……。し、失礼ですが、クレメンティーナさんは今……?」
「H!」
あたしは自分の胸を護るように、おっぱいガードした。
絶対にタダで触らせないんだからねッ。
「……」
僕は、彼女等を見ながら、心の中でこう思う。
(……D、Eカップ……。それでもまだ、まだ、クレメンティーナさんのおっぱいの方が、すこぶる大きいような……)
「……」
「……」
ギチッ
と胸部圧迫されたおっぱいが訴えていた。
「ゴクリ……」
と喉を鳴らすドクターライセン。
(きっと、あの中は凄い事に……!?)
「……そんなに気になるなら、自分で手で計ってみたら? ねっ? ダーリン!」
「え?」
「フッ、ああ、そうだな!」
「フフッ」
「……」
勝ち誇った顔様な笑みを浮かべるダリーン。
あたしはそのダリーンの隣に並び立つ。
そして思わず、ライセン先生がこう呟きを漏らしてしまう。
「いったい……その中はどうなってるんですか……?」
「え? う~ん……そうねえ、気になる――?」
「ええ」
「フフ、そうね……。じゃあ特別に教えてあげる! こう周りからギュギュされてて、肺が圧迫されてるから……、失敗談の時は、呼吸不全になりかけたわね?」
「え……?」
「あったなそんな事ー!?」
「うん」
という事は、少なくとも、ここにいるスプリング様なら御周知のとおりだ。
当然、失敗談もあって当然である。
それだけクレメンティーナは、取り分け周りの学生達の中でも大きいのだから。
「その後は、彼と、技術者さん達と相談しながら、調整調整して、ようやくこのデザインまで落ち着いたの」
「失礼ですが……まさか……」
「大丈夫よ、基本、彼以外は女性だから」
「ですよねー!?」
うんうん
とこれには彼も何度も頷き得る。
だが、その技術者達の多くが女性であり、一目見ただけで、クレメンティーナに恨み節を持った。
実は、彼女達の多くがスプリング氏に、内心惚れていたのだ。
片思いである。
いきなり現れた女に、奪われるぐらいなら、
思い知らせてやろうかと思い、必要以上に胸部圧迫を施したのだ。
メギツネに対する意趣返しである。
当然、必要以上に肋骨ごと肺を強く圧迫されたため、クレメンティーナは呼吸不全に陥り、泡を拭いて倒れ込んでしまう……。
う~ん……。
その後、彼の助けも借りながら、ようやくこのデザインまで落ち着いたのである。
女って恐いね……。
「とそうそう、どんな感じか……だったわよね?」
「……」
「タコ足よ! たこの吸盤みたいなイメージみたいな?」
「タコ……?!」
その時、ドクターライセンの脳裏に過ったのは、
クレメンティーナの顔をしたタコがおり、そのタコ足に見惚れて思わず自分が近寄ってしまう。
その様子に怒ったクレメンティーナダコが、ブ――ッとタコ炭を吐いて、
ライセン先生のその顔を、真っ黒にしてしまうのだった。
パチパチとお目めを開けるライセン先生。
何ともお粗末なイメージである……。
「その点は心配ないぞ、ドクターライセン!」
「!?」
「クレメンティーナは放課後、俺たちのところにきて、『仮想現実手術』Virtral Reality Surgery(バーチャル リアリティ サージェリー)を使って、毎日、仮想の患者を切っている!」
「なっ!?」
「V」
Vサインを上げるあたし。もう自慢だ。
「道理で……」
(そこまで腕が立つわけだ……)

【そう、あたしはみんなに潜んで、スプリング様の指導の下、仮想の患者さんを毎日のように切っていたの……! おかげでメキメキと腕が上がっていたわ】
【なるほど……それじゃあ……】
【ええ、少なくとも、クラスであたしの右に出る人はいなかったわね】
【ず……ズル……】

「……お前、さっき何を想像していた……?」
「え? いやぁ? ハハハッ」
笑って誤魔化すライセン先生。
あたしとスプリング様は。
ジト~~
視線を投げかけるのだった。
これにはドクターライセンも、つぐむ言葉もないぐらい内心慌てていた。タジタジである。
で、これを認めたあたしは。
「……フゥ……」
まぁいいわと、嘆息しちゃう。
だって仕方ないものね……うん、だってあたしはモテるもの。
みーんなあたしの肢体に夢中。
きっとこの人も、あたしの肢体を見て、Hな事を想像しちゃったのね。
ホントに、しょうもない人。
「……フフフッ」
「!」
「!」
でも、今は手術室。
今はあたしから、そんな話を持ち出すべきじゃない。
おかしく思われるものね。
こちらから、周りにいらぬ混乱を招くものね。
「さーてと……!」
あたしは頭にあったゴーグルを降ろすと、電子回路が起動し、システムが起動する。
『システムオールグリーン!』
それは、その電子音性は、クレメンティーナ(あたし)のAIナビ:エキナセアからのものだった。
「1番、手術台にアクセスして頂戴!」
『イエス、マスター!』
あたしとの質疑応答を経て、エキナセアが手術台のカメラにアクセスを行う。
もちろんこれは、本校の生徒、ほぼすべてが知るところ。
次にスプリング様の御言葉が発せられる。
「ドクターライセン!」
「!」
「あなたも知っての通り!
当院の手術台のカメラには、視点倍率(ズーム)機能が備わっている……!
しかも、カメラは複数台あり、逐一AIナビたちがリアルタイムで援助協力観察している!
その観察眼は、ほぼ360度!」
V
とあたしはVサインを上げる。その時。
「……あら?」
「どうした?」
「変ねぇ……どうしたのエキナセア?」
『……』
反応が途切れた……。
「おかしぃわねぇ……?」
不審に思うあたし。
(普段のエキナセアならあり得ない……いったいどうしたのかしら……?)
これにはあたしも、「う~ん……」と考え込む。
その様子を認めるように、ドクタースプリングが、ドクターライセンが、怪しく、深く、口角を吊り上げる。
それは、あたしの死角だったので、気づけないようがない。
「……」
あたしは仕方がないので、掛けてあったゴーグルを上げると、
ドクターライセンから、こう話しかけてきた。
「……どうかしましたか?」
それは、とても何気ない会話だった。
それに対しあたしは、不安や心配を与えてはならないと思い、こう話したの。
「……いえ、何でもないわ」
と。
それは異常事態。
あたしのエキナセアは、あたしの指示に忠実だ。
しかも、手術前だ。こんな大事な時に……、こんな事フツーなら有り得ない。
とその時。

PPP……
『救急車(アンビュラス)から、緊急を要する救急患者さんの容態を受信しました!
From an Ambulance,Received The Condition Of an Emergency Patient Requiring urgency
(フローム アン アンビュラス,リスィヴィ ザ コンディション オフ アン エマージェンシー ペイシェント リクワイアー アージェンシー!)』

【――きた! そう思った瞬間、現場の人たちは動いたの!】
【あたし達はマニュアルに則り、頭の上にかけてあったゴーグルを次々降ろし、掛けていくの】
【目の前に現れたのは……】
【現在、救急車で運ばられている、救急を要する患者さんの姿だったの】
【あたしは、その人を一目見た瞬間――】

「えっ……」

【――凍りついたのを、今でも覚えているわ……】
【それは忘れるわけがない、今日起こった出来事……】
【そう、あのバイクマンと同じ服装を着ていたから……】
【……あたしは……もしかして思い、この身が強張ったわ……】
【それは、例えるならば、恐怖】
【そう、あたしは恐怖に抱きしめられたの――】

『――今からそちらに、救急車(アンビュラス)から送信されてきた救急患者の3Dデータを再現します! 前手術の参考にお役立てください!」
Over There From Now On,Reproduce The 3D Data Of The Emergency Patient Sent From The Ambulance
(オーバー ザアー フローム ノゥ オン,リプロデュース ザ スリーディ データ オフ ザ エマージェンシー ペイシェント セント フローム ザ アンビュラス)』
「OK! すぐに再現してくれ!
OK! Please Reproduce it Soon!(OK! プリーズ リプロデュース イッツ スーン!)」
『承認しました!
Approved(アプルーヴ)』
ピッ
そして、救急車の担架の上に乗せられている救急患者さんの全身3Dデータを受信し、手術台の上に再現された。
それは、酷いの一言に尽きる。
「……ッ」
「こいつは思ったより酷いな……!」
「ええ……」
「4時間の長手術は覚悟しろよ、お前等……!」
コクリ
と頷くドクターライセンに。
自己を見失っているクリスティが、そこに突っ立っていた。


☆彡
【――その日、現場が慌ただしく動いたの――】
手術室から抜け出すドクターライセン。
その人の足が向かう先は、救急車から降ろされ、担架で運ばれてくる救急患者さんの元だ。
僕は、救急隊員の方とどういった経緯でどういった状態なのか、取り合わなければならなかった。


【手術室】
――そして、手術室に残る2人。
あたしは本手術の前に、前手術の予行演習を行っていた。
「『マルチメス』!」
患者さんの3Dデータを模した仮想人体。
あたしは、その人を切るために、同じく3Dデータのマルチメスを使うの。
マルチメスって何かって?
そうねぇ、一昔前のメスは、患者さんの胸部を切開するとき、1度でキメないといけなかったの。
その理由は、何度も患者さんの体にメスを入れてると、術後、縫合を外した時、手術痕が残る事があるからよ。
女の人にとっては、手術痕が残るのは嫌よね。
だから、外科医のメスは、その医師の技量が大きく問われるポイントなのよ。
このマルチメスは、機械式でね。
「胸部切開――」
ゴーグルの視点倍率機能が、適切な長さを算出する。
その胸部の適切な縦の長さ、120㎜。
「120㎜、切開します」
あたしは、その仮初の機械式マルチメスを当てがって、
ピッ
と甲高い音が鳴り、1発で奇麗に切開した。
さすが機械式、楽だわ。
でも、胸部の中で圧迫されていた、仮初の内部血液だまりが一気に噴き出してきた。
それがあたしのゴーグルの一部を、赤い鮮血で、点々と染め上げる。
でも、あたしはひるまずに、こう言うの。
「胸部に外部圧迫により、破裂した臓器を視認!
ここから見えるポイントは、破裂した肺から心臓へのアプローチで、縫合を始め。
人工心肺装置中の、空気の出入りを行う要(かなめ)である、肺の気管支から執り行い、
次に、重要な心臓の大血管から、血管吻合に入ります。
大動脈、大静脈、肺動脈へつながる血管の縫合を進めるのが、術後、回復した患者さんのためと思います!
……いかがでしょうか!? スプリング様!?」
「ブラボ―! 正解だ!
一般の外科医が執り行うのが、心臓からするのが基本(ベター)だが……。
良く気づいたな!
そうだ……! こう言う場合のケースは、肺に穴が開いている以上、気胸の疑いがある!!
術後の回復待って、息苦しさを覚えるだろうな……」
「うん……」
「人工心肺装置が活きている以上、先に肺から手術を行う事で、そうした危険、不活性ガスが体内に残留する危険を取り払うのが目的だ」
「はい!」
「さらに言うと、『生命兆候』Vital Signs(バイタルサイン)は、人工心肺と人口透析装置等で患者さんの命が保たれる!」
コクリ
とあたしは頷き得る。
「手術はその後だ!」
私は当たり前のことを言う。
手術の前に、ありとあらゆるケースバイケースを講じないといけない。なにせクレメンティーナは初めてなのだから。
「……」
私は、クレメンティーナから、体の向きを変え、あちらを向いて、こう告げる。

「時間との勝負だ……!」

私は、チラッと視線をクリスティに向ける。
「!」
続けて、こう注意を投げかける、極々、当たり前のことを言う。
「交通外傷……。モスキートドローンバイクでの乗車していた患者さんは、私が思うに胸部と腹部を強打した疑いがある」
「胸と腹を……」
「あぁ、顔のダメージも酷いが、それは後日で言い……。整形外科に頼るところだ」
「うん……」
悔しいけど、顔となれば、今のあたしじゃ手に負えない……。
専門の整形外科に委ねるのが、患者さんにとって、一番いいから。
「今、私たち、救急に求められるのは……?」
「それは、生命の維持……生命兆候(バイタルサイン)1番に確保するです!!」
「そうだ!!」
クレメンティーナは、救急の在り方について正解を告げ。
スプリングは、その理解を認める。
「……」
前を見据えるクレメンティーナ。
続くスプリングの言葉は。
「クレメンティーナ、君の診断の通り、執り行う……! ただし……!」
「!」
「難しいところは、私たちが行う……、……わかるな?」
「……はい」
それはわかってる……。
悔しいけど、あたしの腕はまだまだだから……。
「患者さんの術後の回復にしてもそうだが……。
人工心肺離脱後の心臓と肺の正常な機能回復にかかっている……。
心臓は、全身の血管に新鮮な酸素と空気を送るために……。
肺は新鮮な空気を取り入れ、いらなくなった二酸化炭素を吐き出すためにある。
心臓ももちろん大事だが、肺が壊死すれな、人は1日も持たない……、……わかるな?」
「……はい」
「……拍動する心臓。その大きな大血管……大動脈、大静脈に乗って、全身に送られてくる新鮮な酸素と血液循環が行われば、人体はたちまちその機能を失う……!
待ち受ける先は、壊死であり、脳死であり、患者さんの死だ……!!」
「……はい……」
「その命の刻限は……!
人工心肺を繋いでいられるその最大タイムリミットは……約4時間……!!」
(4時間……)
あたしの頬に冷たい雫が伝う。
「――だが、それは一般の患者(クランケ)の場合だ!
今回の場合(ケース)は違う……!!
なぜなら交通外傷の場合は、その命の最大タイムリミットは、血液の損失、出血性のショックが疑わられるからだ!
その『命の刻限』は………………、
3時間!!
……『この3時間が勝負だ』!!
――These 3 Hours are The Game(ジィーズ スリーアワーズ アー ザ ゲーム)!
But That Is The Case For The General Patient!(バット ザット イズ ザ ケース フォー ザ ジェネラル ペイシェント!)
This Case Is Different……!(ディス ケース イズ ディファレント……!)
Because Of traffic Injuries,The Maximum Time Limit Of That Life,Blood Loos,Suspected Hemorrhagic Shock!(ビカズ オブ トラフィック インジャリィ,ザ マキシマム タイムリミット オブ ザット ライフ,ブラッド ロス,サスペクト ヘモリジック ショック!)
『Time Limit Of Life』………………(タイムリミット オブ ライフ………………)
3 Hours(スリーアワーズ)!!」
コクリ
「……」
とあたしは頷き得る。
(3時間の勝負……)
あたしは、ギュッと拳を握りしめる。
「初めての難手術だ!
事故発生からここに送られてくるまでに、おおよそ20分はもう経過しているだろう。
土日祝日ということもあり、今の時間帯なら、交通渋滞だ……!」
コクッ……
「……」
とあたしは小さく頷き得る。
「残り時間は、2時間と40分……!! その短い時間で終えなければならない……!!」
「……はい」
とあたしは、そう返事を返した。
「そこで、要注意点だ!」
「!」
「一般の結紮ではせいぜい3~4程度だが、拍動する心臓が相手では5~7程度で適度に行う……。
だが、これができるのは、心臓の専門家(スペシャリスト)だからだ。
お前には、まだ無理だろう……」
「……」
「だから、締めすぎず、弱過ぎず、場で止める結紮を心掛けて欲しい。……7重結節だ!!」
(7重結紮……!!)
未知の領域ね……。しかも、初めてで、人の心臓相手に……。
いくらひったくり犯でもこれは……。
(……心臓は拳大の大きさと言われてる……。でも、それを行う術士にとって、それは広大な臓器……。
しかも7重結紮……で……。
………………。
これ……いくらなんでもハードルが高過ぎない……?)
私は、今となって恐れを抱いてしまう。
まるで未知の領域だ。
今のあたしが挑んではいけないような……気がしてきて……。
「クレメンティナ!」

「――!」
――その時、彼があたしの名を呼びかけて、沈みかけていたあたしの潜在意識を浮上させたのだ。
「今回の手術の順番は、やり易さから考えていい!!
安心しろ、いざとなったら俺がバックアップに就く!!
お前はただ、ひたむきに患者さんを救おうとするんだ!!」
「……うん」
スプリングは、あたしに安心させるように言葉を投げかけてくる。
ちょっとばかり、やる気の元気が出た。
「………………」
スプリングがついている。これ以上に、安心感はない。
「胸の位置に近い、右の肺、左の肺と続き、奥にある心臓と執り行う。……続いて、血管吻合と入っていこう!」
「わかりました……!」
私はそうやって、クレメンティーナに適切な手術の順番を教え合い、相互理解を取った。
万が一にも、手術中に故意的な医療ミスがあってはならない。
引いてはクレメンティーナのためでもあり、私の執刀医としての責任問題にもなる。
間違いがあってはいけない。
いくら、医療ミスを前提にしても……。
「……」
「……」
この時とばかりに、お互いを信じあう。
もちろん、実際の医療現場では、臨機応変に執り行い、この限りではないが……。
まぁ、この3D仮想人体を見る限り、私の診断に誤診はない。
「……」
私は視線を落とし、愛しきクレメンティナの手を見た。
その手術手袋に……。
「ではクレメンティナ……」
「はい……」
緊張の一瞬。
「手術前に、何に確認のアクセスを取るのが、失敗しない医師だと思う?」
「………………YES! それは、運ばれてくる患者さんの病歴を調べる事です!」
「では何に?」
「『マイナンバーカード』に付随する病歴等です!」
「素晴らしい(エクセレント)! 正解だ!」
「エキナセア! 患者(クランケ)のデータベースにアクセスして!」
『了解!』
ドクタースプリングの指示もあって、最小限のミスに抑えようと、事が運んでいた。
エキナセアが、救急患者さんの個人情報にアクセスを試みる。
クレメンティーナの指示が飛ぶ。
「調べて欲しい病歴は、天然ゴム繊維によるラテックスアレルギー持ちか!! もしくは金属アレルギーの保持者かどうかよ!』
『了解!」
「うむ」
間違いない。
もちろん、エキナセアならば、他の目ぼしい病歴等も調べるだろう。
(クレメンティーナ、私が見こんだ通りの女だ……!)
エキナセアがそれを調べ上げていく。
そして、辿り着いた病歴の回答は――

『――ラテックスアレルギー持ちです!!』

だった。
「……そうか~……」
それはもしかしたらの最悪の備えだった。

【――ラテックスアレルギーって?』
【天然ゴム Natural Rubber Latex(ナショナル ラバー ラテックス)製品の事よ】
【その製品の手袋を使う事によって、例えばあたしが、スバル君のその胸を切開したとしましょう】
【う……うん……】
【その際、あたしがスバル君の胸の中に手を入れるとしましょう】
【この時、あたしはいつものように手術手袋をしてるから、何気なく、君の血管や臓器などに触れるわよね?】
【うっ………………うん……】
【その時、異常事態が発生するの……! それがアナフィラキシーショックよ!】
【アナフィラキシーショック!?】
【ええ、そうよアヤネさん……。
【一般的には知られてないけど、ラテックスアレルギーにはアナフィラキシーショックを誘発する危険があるの……】
【あたしが誤って、手術を行うと、スバル君のその身は、ビクビクと痙攣を起こして、飛び跳ねる事が稀に起こり得る……】
【全身にジンマシンができて、不整脈が起こり、医療機器等で警告のサインが鳴り響くわね……】
【……ゴクリ……】
【……現場の医師たち、あたし達は大騒ぎで、何が原因かはわからない、パニック恐慌状態に陥る……】
【もう頭の中は真っ白、いったい、何が原因なのかわからないからね……】
【……きっと、どんな医師も冷静でいられなく、なくなる間もないわ……、それを知らないから………………】
【だいたい、研修医に多いわ】
【……その後、僕……どうなったの?】
【……】
【実はアメリカでも年間、死亡者数が10数名いて、そのアナフィラキシーショックによる事後症例報告が1000名以上も昇るのよ】
【……ねえ、僕は……?】
【フフッ、大丈夫よ、あたしは落ち着いて手術するから……】
【……】
【ラテックスは、いわゆるゴムの木を原料にしていて、天然ゴムラテックスと呼ばれているの】
【主にパラゴムの木 Hevea Brasiliensis(ヘベア ブラジリエンシス)から取れてね】
【液状の液体として採取して、それを工場生産で加工したものを、天然ゴムラテックスというのよ】
【……そのわずか1.5%に含まられるたんぱく質成分、アレルゲンが……実はラテックスアレルギーなのよ――】


思考を加速させるあたし、辿り着いた解は。
「――それなら、ポリイソプレン製、ポリクロロプレン製のクーパーがベストね! 保持(リテンション)クーパー!!」
あたしの指先に、リテンションクーパーが現れる。
しかもそれは、ポリイソプレン製のラバーでコーティングされていた。
これが解。
例え、ラテックスアレルギー持ちの患者さんでも、使える医療器具の優れモノを前準備するの。
実は、医療機器で使われるカンシには、様々な用途があってね。
まず、大別して、
太い血管に扱う血管鉗子と、
血管や体の組織を掴むために使われる、止血鉗子の2種類が挙げられるの。
続いて、個別にして紹介すると、
血管鉗子は、
ドベイリー、クーリー、サティンスキー、ブルドッグなど。
続いて止血鉗子は、
ペアン(主に内臓に扱う)、コッヘル(筋膜や腹膜に扱う)、ケリー、モスキート等々……が挙げられるわね。
もちろん、あたしの生きる未来では、より科学技術が発達しているから、デザイン性も用途もまた違ってくるわね。
まぁこれぐらい、現場のお医者様であれば、知っていて当然ね……。
あたしは、胸部切開した胸の中に手を入れて、大事な血管を守るように、1個1個丁重に仮止めしていくの。
「うん! 正解だ!」
「いいえ! まだよ! ここから見える位置から、噴き出している血管を視認!! 第一順位に繰り上げて、早急に止血が必要だと判断します!!」
(正解だクレメンティーナ……!)
「縫合に入ります! 血管吻合に入ります」
(外科医はマニュアル通りに動いてはならない……! 時に柔軟に、時に大胆に、その場その場で機転を活かし、どんなアクシデントにも備えるものだ……! なかなかどうして……!)
「リテンションダブルクリップ!!」
(お前は、努力家の金の卵だよ!)
あたしの指先に、リテンションダブりクリップが現れる。
もちろんそれも、ポリイソプレン製のものでラバー保持に優れている。
あたしは微小な血管にも、それで仮止めしていく。
血管吻合とは、その名の通り、血管組織に微細な穴が開いている場合や、断裂している場合などに用いられる血管縫合を指すの。
その名を、血管吻合と説くのよ。
そして、別に神経吻合というものもあって、こちらは、神経同士をつなぎ合わせる超高等技術なの。
あっもちろん、あたしは練習中の身だから、最悪、スプリング様達の御手を煩わせることになるでしょうけどね。

【天然ゴム、そのラテックスアレルギーに対する対策、ポリイソプレン製、ポリクロロプレン製のリテンションクーパーとリテンションダブルクリップ】
【そして、血管吻合が、当時のあたしの大きなスキルだったの……!!】
【それってすごいの?】
【さあ……?】
【私たちは医師じゃないし……】
【………………】

あたしは手早く、仮初の患者さんの血管を、血管吻合を施していくの。
その時――
ズキッ
「ッ!?」
「……」
後ろからクレメンティーナの手技を見て、怪しい笑みを浮かべるスプリング。
やったな……クックックッ。
「……」
あたしは異常事態にかられた。
左肩を通じて左腕左手全体に傷みと痺れが出て、右手にも痛みがある。
(まさか……もしかして……あれが……!?)
あたしの脳裏に、あの時、ひったくりに合った光景がフラッシュバックしたの。


★彡
それは恐怖だった。
恐怖が、肩から伝わり、腕、手と伝い、弛緩し、いつものように優れた手技ができなくなっていた……ッ。
しかも、それがくるのは、当事者本人の救急患者(バイクマン)だ。
最悪だ。

【――あたしは、パニックを起こしていたの……】
【それは……そうだよね……】
【そんな人相手に、当日でいきなり手術って……ねぇ……】
【最悪……としか形容できないな……う~ん……】
【……】
【……】
クリスティ、スバル、アヤネ、ミノル、ダイアン、ルビーアラと順にナレーションで語っていく。

そこへ、優しい声をかけてきたのは、他ならないスプリング様だった。
「――大丈夫かクレメンティーナ……?」
「……ええ……」
「……」
私はここだと思った。こう、優しい言葉を投げかける。
「こんな機会は滅多にないぞ」
「!」
それは誘惑の言葉だった。
「執刀医をやらせてやる……!」
「えっ?」
(助手じゃ……!?)
それは、その甘い奸計は、あたしの精神を大きく揺さぶる。精神を毒す。
「おそらく、救急患者はあのひったくりだ!」
「……」
スプリング様もそこに気づいてたのね。
「お前のAIナビも薄々は勘づいてるはずだ」
「え……」
『……』
黙るあたしのAIナビ:エキナセア。
黙秘を貫く。
「今のご時世、『位置情報システム』Location-Based Service(ロケーションベースサービス)、通称『LBS』があって当たり前だ! その当時の信号を辿れば、犯人を特定できる!!」
「……」
「おそらく、犯行にかられ、急ぎ過ぎてしまった犯人は、何かに合い……、そして、交通事故を引き起こしたのだろう」
「……」
「それは、本人のAIナビからの忠告か、現場を見ていた人達からの追いかけ回しか、もしくは警察車両か、はたまた別の犯罪をやってしまったか……それはわからない」
(……確かに……!)
「執刀医を譲ろうクレメンティーナ」
「!」
「お前が切れ!」
スプリング様は、ドクターライセンが機器出しで運んできたものの中から、1つのメスを手渡す。
「シックルメス……!」
それは200年前の時代を生きる、私たちの知るメスではなく、少し近未来先のメスだった。
デザイン性に近いのは、切りつけ包丁とカマキリの刃だろう。
切りつけ包丁は、西日本の文化包丁であり、ウナギ裂き包丁の斜め逆カットバージョンだ。これが後に、形を変えて三徳包丁になっていく。
一番の利点は、切っ先が鋭く、繊細な飾り切りをするのに打ってつけなところだ。
カマキリの刃は、刃の先が特徴的な丸いカーブのデザインを描いたもので、
刃が入りやすい。
持ち手のグリップは、滑りにくい仕様のものとなっている。
「そうだ! 前時代の外科用メス……シックルメスだ!」
私は、やさしくクレメンティナの手の中に、そのシックルメスを置いていった。

(――決めるのはお前だ!!)

「……」
精神が揺さぶられる。
スプリングは、そのメスの説明を行う。
「シックルメスの最大の特徴は、何と言っても、切りつけ包丁とカマキリの刃が独自のデザインセンスになっていることだ!
繊細な手技に、
その刃先の丸いカーブを描いたカマのようなデザインが、一役買っている!」
「……」
あたしはその刃先を見詰める。
「200年前のメスは、その鋭利な刃先で、患者さんの胸や腹部を切るのに、使われていた」
「……」
200年前の医師がこれを……あたしはそのメスを認める。
「だが、患者さんにより、その皮下脂肪の厚さの違いにより、一度で切る場合、多少の誤差が生じてしまう」
「誤差……!?」
「ああ……わずか0.1㎜の違いで、2度、患者さんの体にメスを入れる、そんな外科医もいたくらいだ……。
そうした問題点を解消するために、考案されたのが……それだ!」
「……」
「刃は3枚合わせのステンレスクラッド複合材ではなく、
地金を異なる刃物の二枚広げにして、その上から軟鉄ステンレス複合材でクラッドしている……4枚合わせのものだ!
しかも……!!
心材はなく、異なる鋼の層が幾重にも折り重なり、そう、まるでコアレスダマスカス鋼のようになっている。
心材がない事から、コアレス鋼という。
それにより、本来なら火造り鍛造の際、特殊合金刃物鋼にプレス機を打ち下ろした時、
炭素含有量が打ちつけられる度に、不純物として抜け落ちていくが……。
この仕様変更により、強力に、高い炭素含有量で保持しつつ、切れ味、長き切れ、靭性、錆びにくさ等を高めている!」
「……偉く詳しいですね……」
「ああ、世界に名だかる医療機器メーカの1つ! ジャパン クオリティー カイ メディカルのものだ!」
「ジャパン……!?」
「あぁ、そして、越前刃物の加藤打刃物製作所の協力も後押ししている……! 二枚広げで有名な、世界に名だかる日本の伝統文化だ……!
刃物と言ったら、ジャパニーズサムライブレードの日本刀が有名だろ?」
「……」
(男の人は、ホント好きだなぁ~……)
あたしはその世界についていけない……。
アメリカの男は、こうと決めたら一直線だ。
「カイジルシは、眼科用、皮膚科用、外科用、歯科用、そして受注生産品と、こちらの要望に厚く答えてくれる……!!
世界に名だかる医師たちが、垂涎している医療機器メーカの1つだ!
……覚えておくといい。フフフフ」
「……」
これにはあたしも、何も言えない、何も言い返せない……。
だけど、事実なのよね。
ジャパン クオリティー カイ メディカルは、医療機器メーカの1つとして、日本やアメリカばかりか、それこそ地球規模(グローバル)に、世界中どこにでも広がっているのよ。
200年前を生きるあなた達の知るところでは、
貝印は、眼科用のマイクロサージェリーナイフを初め、
皮膚科用のコーティング替刃メス、
外科用のカイインダストリーズ替刃メス、
歯科用のエステティックナイフ、
そして、一般人でも買える代物として、ディスポメスが番外として挙げられるわね。
その切れ味たるや、脂身の豚足をスパッと切れるのよ。

「へぇ~……よく切れそうですねぇー!」

キラーン☆
とそのシックルメスの刃先が、銀色に光る。
ホントに良く切れそう。
(フフッ、ああ、ホントに恐いくらい良く切れる……フフフフッ)
私は、その事をクレメンティナには伝えない。ホントによく切れるから、注意しろよ。
「でも、何でこんな形に……?」
「繊細さを求めるなら、術部に深く入りやすいのがその形だからだ!」
「!」
「……そして、人を切る際、微妙な力加減や、抵抗を感じやすくさせるために、その形(デザイン)になっていくんだ」
「へぇ~!」
あたしは感心の声を上げる。
さすがスプリング様だ、良く知っている。
「また、刃先が心持ち重いために、浮き上がり防止にも一役買っている! まぁ、それを感じる医師は……」
「……」
「私たちみたいな、繊細な手技の医師ぐらいなものだ……!」
「……」
あたしは、頬をほころばせる。
「……」
きっとスプリング様は、あたしに必要以上の緊張を与えないよう、配慮してくださっているのね。
そして、未来のあたしを心待ちにしている。
それだけの才能を、あたしが有しているから……。
「うん……」
その期待には応えなくちゃね。……んっ?
「……」
スプリング様は、あたしの前で、ワザと自分から肩の力を抜いて、動作行動(アクション)を取った。
「……」
あたしはそれを認める。
もしかして、あたし、緊張してた。
「……肩の力を抜け、クレメンティーナ……」
「……はい」
筒抜けだったのね。
「そんなに気負っていては、お前の手で、太い血管まで傷つけてしまうぞ」
「……仰る通りです」
「少し、別の話をしようか」
コクッ……
とあたしはその言葉に頷いたの。


TO BE CONTINUD……

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