335章 20歳になった腹ペコ少女(二部スタート)
ミサキの消費カロリーは、1日で20000キロカロリー。大量のご飯を食べることから、スーパー腹ペコ少女の愛称で親しまれてきた。
20000キロカロリーは、何もしなかったときの所要エネルギー。移動したとき、運動したときなどは、必要エネルギーは大幅にアップ。長時間の移動をしたときは、体内で使用するエネルギーは5倍くらいに膨れ上がっていると思われる。100000キロカロリーを摂取しなければ、体重をキープできない。
カロリー不足は体重減に直結。数日間の絶食をすれば、原形をとどめることはなくなる。体型をキープするために、通常の人の何十倍も食べることを余儀なくされる。
食べるのはつらいこともあるけど、楽しいと思うこともある。他の人の何十倍も食べられるのは、パラペコ女性の特権だ。
夜の9時から、朝の7時までは何も喉を通らない。食べ物を受け付ける14時間のうちに、カロリー摂取を終える必要がある。1時間平均、1400~1500キロカロリーはかなりきつい。
ミサキの年齢は20歳。成人したことによって、スーパー腹ペコ少女を自動的に卒業。今後のネーミングについては、いろいろな人と相談して決めたい。
ミサキのおなかはギュルルとなった。
「何を食べようかな」
自宅にある自販機で、肉まん15個、中華まん15個、豚まん15個を注文。しっかりと食べることによって、必要なエネルギーを確保したい。
肉まんを10個ほど食べたところで、玄関のチャイムが鳴らされた。
ミサキの家にやってきたのは、なじみのある女性だった。
「アヤメちゃん、いらっしゃい」
ミサキの家にやってきたのはクドウアヤメ。過去はトップアイドル、現在はフリーアイドルとして活躍中。
アヤメは日焼け防止として、黒い服を着用している。細かいところまで、気を配っているのを感じさせた。
ミサキは写真撮影、ジェットコースターなどで、一緒に仕事を行った。頻繁ではないものの、パートナーとなることもある。
「ミサキちゃん、お久しぶりだね」
「アヤメちゃん、お久しぶり」
アヤメは非常にストイックな性格で、敏感肌、オイリー肌のハンデと向き合っている。弱みを言い訳にしないところは、彼女の強さといえる。
稀に猫言葉を使用することもある。ストイックな女性から、想像もできない姿だ。
「ミサキちゃん、今日もたくさん食べているんだね」
「うん。大量のカロリーを摂取しないと、生きていくことは難しい」
1日に20000キロカロリーを続けると、食費は一カ月で10万ペソもかかる。通常の人なら、食費だけで破産する金額だ。
ミサキは妖精より、1カ月あたり100万の支給を受ける。食費を10万ペソ使用しても、生活に余裕がある。
「ミサキちゃんの大食いを見ていると、とってもほっこりするよ」
「そうなの?」
「うん。とっても幸せな気分になれる」
アヤメは大きく背伸びをする。
「ミサキちゃん、演劇もやるんだね」
「コメントもなかったから、なんとかなったよ」
「ミサキちゃん、どこか寂しそうだった。演劇中に何かあったの?」
ミサキは舞台でいわれたことを、アヤメにそのまま伝える。
「利用価値のある女性として、舞台に呼ばれたみたいだね」
「うん・・・・・・」
アヤメはゆっくりと背中を撫でる。
「私はいいと思うよ。人間は利用価値に対して、報酬を支払っている。利用価値のない人間に対
しては、1ペソすら払わない」
ミサキは小さく頷いた。
「そうだね・・・・・・」
「私は自分の価値を高めることによって、アイドル出演でお金を得られる。凡人だったら、1ペソももらえない」
アヤメの言い分は正論だ。ミサキは受け入れようかなと思った。