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336章 サイン

 アヤメは室内をゆっくりと見回す。

「ズービトル、ルヒカさん、エマエマさん、DRAZさんのサインが並べられているのはすごいね。通常の人は一枚を入手するのも難しい」

「そうかな?」

 アヤメは深呼吸をする。

「本当に好かれているからこそ、サインをもらえるよ。他の人がどんなに頼み込んでも、サインをもらうのは不可能。大金を積んだとしても、心を動かすのは難しい」

 ミサキは過去にあったことを伝える。

「フユコさんは、エマエマさんから特別にサインをもらっていたよ。絶対に入手できないというものではないような・・・・・・」

 最初のCDを持っていたこと、すべてを購入していることをつけくわえる。

「フユコさんの場合は、偶然的な要素が複数重なっただけだよ。ミサキちゃんのように、最初からサインをするつもりはなかったはず」

 ミサキは室内に飾られている、四枚のサインをじっくりと眺める。

「ホノカちゃんは、おかあさんになるみたい」

「ホノカちゃんは、おかあさんとしては超一流。私は彼女の子育てを、心から応援しているよ」

 ミサキはこくりと頷く。ホノカなら、最高の母親になれると思われる。

「アオイちゃん、ツカサちゃんはいろいろな企業を懲戒免職になったみたい。住む家もなくなっ
て、路頭をさまよっているみたいだね」

 アヤメは思い当たる節があるのか、首を何度も縦に振っていた。

「アオイちゃん、ツカサちゃんはアイドル時代から、まったく成長していないみたいだね。単純ミスの多さ、空気の読めなさは、かなりのネックとなっていた」

 ミスが多い、空気の読めない人物は真っ先に排除されやすい。仕事をするにあたって、最低限の常識は必要だ。

「二人はまだ若い。心を入れ替えれば、うまくいくかもしれないね」

 心の入れ替えはできても、ミスを減らすのはできないような気がする。状況打破は、絶望的といえる。

「ミサキちゃん、一緒にお風呂に入りたい」

「いいけど、胸、○○に触るのは絶対にNGだよ

「わかったよ。ミサキちゃんは、胸、○○を触らないよ」

 胸、○○に強いこだわりを持つ。よほど心を許さない限りは、誰にも触れられたくなかった。

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