334章 これからもずっと(一部終)
シノブから仕事の指示を受ける。
「ミサキさん、お願いします」
「わかった」
ミサキはお客様の前に顔を出す。いつもと変わらぬ光景が、そこには待っていた。
「ミサキちゃん、サインちょうだい」
「ミサキちゃん、握手したい」
「腹ペコ少女の大食いを見たい」
「ミサキちゃん、調理した焼きそばを食べたいよ」
腹ペコ少女でなくなったら、ほとんどの人は離れていく。ステータスのなくなった女の子は、存在価値を失いかねない。
自分のためにも、腹ペコ少女であり続けようと思った。たくさん食べて、たくさんの人に評価される人生を送り続けられるといいな。
「お客様、何にいたしましょうか?・・・・・・・」
ミサキは満面の笑みを見せる。自分では見えないけど、とっても輝いているのを確信した。これからもずっと、輝いていけるといいな。
焼きそば店にある人物がやってきた。
「ミサキちゃん、こんばんは・・・・・・」
突然の来客に女性は度肝を抜かれていた。
「エ・・・・・・」
ある女性はマイクを手に取った。
「ミサキちゃんのために、新曲を披露します。耳に焼き付けてください」
焼きそば店の店内に、腹ペコ少女を応援する音楽が流れた。ミサキはそれを聞けるだけで、生きていてよかったと思えた。これからもずっとずっと、こちらの世界で生きていけるといいな。