第百五話 皇太子の戴冠と結婚<完>
--三日後。
ユニコーン・ゼロは、帝都ハーヴェルベルクへ帰還する。
ユニコーン小隊と帝国四魔将が会議室に集まる。
アキックスが口を開く。
「革命政府は倒れた。大陸を覆っていた長年の動乱は終わるだろう」
ラインハルトが答える。
「おっしゃる通りです。伯爵」
アキックスが続ける。
「かくなるうえは、皇太子殿下に戴冠して頂き、帝位に就いて貰う」
ヒマジンが口を挟む。
「もちろん、我々が全力でサポートする」
ラインハルトが呟く。
「・・・帝位」
エリシスが微笑む。
「アスカニア大陸、最大最強の帝国の皇帝にね」
ナナシも追従する。
「うむ。民心を安定させるためにも、殿下こそ帝位にふさわしい」
ナナイも口を開く。
「私も貴方を傍らで支えるわ」
ラインハルトが答える。
「判りました」
帝国四魔将のお膳立てで話は進み、ラインハルトの戴冠式と、ラインハルトとナナイの結婚式は、一ヶ月後と決まった。
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-- 一ヶ月後。
戴冠式、結婚式、当日。
帝国竜騎兵団、帝国機甲兵団、帝国不死兵団、帝国魔界兵団、
一定間隔で誇らしげに帝国旗が掲げられている。
晴天の澄んだ紺碧の空のもと、帝国貴族を乗せた多数の馬車が
バレンシュテット帝国の皇帝への拝謁、謁見を許された高位の貴族達が
近隣の友好国の大使たちも列席する。
厳粛とした雰囲気の中、ラインハルトの戴冠式が始まった。
軍楽隊が帝国国歌を演奏する中、皇帝の礼装を着たラインハルトは、控えの間から中央通路を玉座に向かってゆっくりと歩く。
ラインハルトの後ろに皇妃のドレスを纏うナナイが続く。
中央通路の左右の貴族達や大使達は、通路を歩く二人に頭を下げる。
玉座に向かって左側にアキックス伯爵、ヒマジン伯爵が立ち、右側にエリシス伯爵、ナナシ伯爵が立って二人を迎える。
ユニコーン小隊の面々は特別に帝国四魔将の後ろに列席していた。
ラインハルトは玉座に座り、ナナイはラインハルトの傍らに立つ。
帝国大聖堂の大司教がラインハルトの前に歩み出て、承認の儀、宣誓の儀が行われる。
続いて、
ラインハルトは立ち上がって、ティナが差し出す帝冠を両手で受け取ると、自ら頭上に帝冠を乗せて被る。
ラインハルトの頭上にバレンシュテット帝国皇帝の帝冠が輝く。
ラインハルトは右手を上げ、宣言する。
「私、ラインハルト・ヘーゲル・フォン・バレンシュテットは、此処に第三十五代バレンシュテット帝国皇帝への即位を宣言する」
ラインハルトは、自分を拾って育ててくれた養父への敬意から、ヘーゲル姓をミドルネームとして残した。
宣言の後、大きな拍手と歓声が玉座の間に響き渡る。
「「
「「
ひと時の後、忠誠の儀が行われる。
最初に帝国四魔将が皇帝に即位したラインハルトに跪き、忠誠を誓う。
続いて列席する帝国貴族達がラインハルトに跪き、忠誠を誓う。
午前中一杯の時間を使って、ラインハルトの戴冠式は滞りなく執り行われた。
午後は、皇帝ラインハルトと皇妃ナナイの結婚式が始まる。
軍楽隊がファンファーレを演奏する中、純白のウェディングドレスを纏うナナイがブーケを持ち、病床の父親に代わり代理であるアキックス伯爵にエスコートされ玉座の間の中央通路をゆっくりと歩く。
ナナイのウェディングドレスの長い裾を持つ「ブライズメイド」には、ヒナとクリシュナがやっている。
花嫁姿のナナイの美しさに参列者の列から嘆息が漏れる。
花嫁の列は、玉座の前に立つ大司教の前まで歩みを進めると、アキックス伯爵がナナイの手をラインハルトに譲る。
ナナイとラインハルトは、並んで大司教の前に立つ。
結婚の宣誓が始まる。
ティナがお盆の上に結婚指輪を乗せて、二人の前に歩み出る。
二人は互いに
ラインハルトはナナイのヴェールを上げ、キスする。
再び、大きな拍手と歓声が玉座の間に響き渡る。
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ラインハルトとナナイの結婚式も滞りなく執り行われた。
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バレンシュテット帝国歴739年 第三十五代バレンシュテット帝国 皇帝 ラインハルト・ヘーゲル・フォン・バレンシュテット即位。
皇帝となったラインハルトは、国内産業の育成と公共事業によるインフラ整備、主要都市間鉄道の敷設、飛行場の建設などに力を入れた。
発展した産業と公共事業は、集中した資本を再分配し、帝国国民は豊かに暮らすことが出来るようになった。
皇妃となったナナイは、孤児院を開設し戦災孤児を集めて教育。
後に彼等は
バレンシュテット帝国は再び絶対帝政を敷き、周辺諸国と友好通商条約を締結。
アスカニア大陸の盟主として君臨し、その治世は平和であり栄華と繁栄を極めた。
< 完 >