332章 うごき
ホノカは食事を終えると、ゆっくりと横になった。新しい命に負担をかけないようにしているのが、こちらにも伝わってくる。
「ミサキちゃん、とってもおいしかったよ」
「どういたしまして・・・・・・」
自販機で食事を準備するより、手作りをしたほうがよかったかな。愛情も伝わるし、より健康にいいものを食べてもらえる。
「赤ちゃんの生育のために、アルコール、栄養ドリンク、生肉、コーヒーなどは避けているの」
ホノカのあげた食べ物は、赤ちゃんの生育によくないものばかり。摂取しすぎると、生育に大きなデメリットとなる。
ホノカは小さく深呼吸する。
「来月いっぱいをもって、パン屋をやめることになったよ」
子供を育てながら、仕事をするのは難しい。退職はやむを得ないといえる。
ホノカはお腹をさすった。
「パン屋をやめるのは残念だけど、新しい命の誕生はとってもうれしいよ。二人で力を合わせて、子供を育てていく」
「ホノカちゃん、ファイト!」
「ミサキちゃんもいつか、子供を出産できるといいね」
ミサキは苦笑いをする。
「そうだね」
腹ペコ少女のままでは、出産するのは極めて難しい。妖精と話をして、通常の体に戻さなければならない。
「ミサキちゃんに子供ができたら、腹ペコ親子になるのかな」
「それはどうなのかな・・・・・・」
腹ペコ赤ちゃんになれば、食事を間に合わせるのは難しい。三日としないうちに、魂は天国に送られることになりそうだ。
「ナナちゃんも、彼氏を作ったよ。メールをするたびに、彼氏のことを話している」
ホノカ、ナナは焼きそば店をやめてから、人生好転するようになった。二人にとっては、仕事を辞めたことはプラスに働いている。