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第百三話 革命政府の最後

--時間を少し戻した 死の山(ディアトロフ) 山腹 ユニコーン小隊

 ラインハルトとナナイ、ジカイラとティナの二機のガンシップ型飛空艇(※以後、ガンシップ)は、山腹から這うように山頂を目指して飛ぶ。

ジカイラがティナに話し掛ける。

「ガマガエル一味は、一体、何処に逃げるつもりなんだ?」

「私も分からない。何処に逃げるつもりなんだろう?」

 程なく山頂が見えてくる。

 ラインハルトとナナイが周囲を見渡し、逃走した革命政府の輸送飛空艇を探す。


 

 ラインハルトが小さな点のように見える革命政府の幹部が乗った輸送飛空艇を見つける。

 輸送飛空艇は、北北西の方角へ飛んでいた。

 ラインハルトがナナイに話し掛ける。

「居た!あいつらだ!!」

「逃がすものですか!!」 

 ナナイはジカイラ達にハンドサインで革命政府の輸送飛空艇の方角を伝える。

 ラインハルト達の二機の飛空艇は、革命政府の輸送飛空艇を追いかける。

 ラインハルトがナナイに話し掛ける。

「今から追い付けるか?」

「奴等の輸送飛空艇より、こっちのガンシップのほうが速度は遥かに上よ! 追い付けるわ!!」





 革命政府の輸送飛空艇とラインハルト達のガンシップの間の距離は、次第に縮まってくる。

 ナナイが彼我の距離を測定する。

「距離! およそ2,000!!」

 ラインハルトは輸送飛空艇に照準を合わせ、主砲の引き金を引く。

 轟音と共に二発の砲弾がガンシップの機首の大砲から発射され、輸送飛空艇に向かって飛んで行く。
 
 二発の砲弾は、輸送飛空艇の後部に命中する。

 輸送飛空艇の後部が爆発し、黒煙を吹き上げる。

 その様子を見たジカイラ達もガンシップの主砲で輸送飛空艇を攻撃する。

 ジカイラが撃った砲弾は、輸送飛空艇の船舷に命中。

 輸送飛空艇の船倉の隔壁が爆発する。

 ジカイラが軽口を叩く。

「いやぁ~。的がガマガエル一味だと思うと、引き金を引く指にも力が入るわ~」

 ティナが呆れる。

「ジカさん、楽しそうね」

 





--革命政府 輸送飛空艇

 ヴォギノ達、革命政府幹部は、死の山(ディアトロフ)の山頂から港湾自治都市群を目指して輸送飛空艇で逃走していた。

 山頂から飛び立って小一時間が過ぎた頃、突然、輸送飛空艇に衝撃が走り、船体が大きく揺れる。

 ヴォギノが船員たちに怒鳴る。

「何事だ!?」

 船員が答える。

「船尾に被弾しました! 帝国軍のガンシップです!!」

 ヴォギノが命令を出す。

「なに!? すぐに撃ち落せ!!」

 船員が即答する。

「そんな無茶な! 相手はガンシップですよ!?」

 再び輸送飛空艇に衝撃が走り、船体が大きく揺れる。

「船尾に被弾しました! 隔壁が吹き飛んだようです!!」

「なんだと!?」

 ヴォギノは必死の形相で船倉に向かう。

 輸送飛空艇の船倉は、ジカイラの砲撃によって隔壁が吹き飛んでいた。

 ヴォギノが船倉の中を見ると、荷崩れを起こして保管箱は壊れ、大穴が空いた船倉の隔壁からヴォギノの金貨が大空に舞っていた。

「金貨が!! ワシの金貨がぁあああああ!!!」

 ヴォギノは必死に金貨を掻き集めようとする。

 しかし、船倉にぎっしり詰められた膨大な量の金貨は、ヴォギノ一人ではどうすることも出来なかった。

 




--ユニコーン小隊 ガンシップ

 ラインハルト、ナナイ、ジカイラ、ティナの乗った二機のガンシップは、革命政府の輸送飛空艇に一撃づつ攻撃をすると、速度差から革命政府の輸送飛空艇を追い越して、大きく旋回する。

 輸送飛空艇から対空砲火が放たれる。

 ラインハルト達のガンシップは対空砲火を避けながら、再び輸送飛空艇の後方から下へ回り込む。

 ラインハルトがナナイに告げる。

「死角に入ろう」 

「了解!」

 ナナイはジカイラ達にその旨をハンドサインで伝える。

 ラインハルト達は、輸送飛空艇の下から垂直に上昇、再び主砲を発射する。

 四発の砲弾は、輸送飛空艇の底部に命中。

 輸送飛空艇の底部が爆発し、更に輸送飛空艇の隔壁を破壊して、黒煙を吹き上げる。

 ラインハルト達のガンシップに、キラキラと光る金貨が輸送飛空艇から振ってくる。

 ティナがジカイラに尋ねる。

「なにこれ? 輸送飛空艇から振ってきたキラキラ光るモノが、機体にコンコンと当たっているんだけど??」

 ジカイラが驚く。

「なんだぁ? ガマガエル一味は、金貨をバラ撒きながら飛んでいるのか!?」

 ラインハルト達の二機のガンシップは、輸送飛空艇の脇をすり抜けて直上に出ると、再び大きく旋回しながら、輸送飛空艇の後ろに回り込む。
 



--革命政府 輸送飛空艇

 船底に攻撃を受けた輸送飛空艇は、大きな衝撃の後、高度が下がり始める。

 船員が悲痛な声を上げる。

「船底部に被弾! 浮遊(フローティング・)水晶(クリスタル)の浮遊機構がやられました!! 高度が下がります!!」

 報告を聞いたヴォギノが悔しがる。

「ぐぬぬぬう! 少しでも港湾自治都市群に近づくのだ!!」

 革命政府の輸送飛空艇は、更に高度が下がり雲の中に入る。

 高度が下がり続ける輸送飛空艇は、雲の下に出る。

 船員が絶叫する。

「もう駄目です!! 墜落します!!」 

 ヴォギノが地団駄を踏み、悔しがる。

「くそっ! もう少しだったのに!!」

 ヴォギノ達、革命政府幹部の目前に地表が迫る。

 ヴォギノが叫ぶ。

「労農革命、未だならず! 同志よ! 努力せよ!!」








 革命政府の輸送飛空艇は北西街道の近くの森に墜落した。

 ラインハルト達が雲の下に抜けた時には、既に革命政府の輸送飛空艇は森林の中に墜落、地上で黒煙を噴き上げる大破した残骸となっており、周辺の森林では火災が発生していた。

 ラインハルトがナナイに話し掛ける。

「あいつら、死んだかな?」

「森林じゃ飛空艇では着陸出来ないし、後は地上軍に任せましょう」

 ラインハルト達の二機のガンシップは、進路をユニコーン・ゼロに向けた。

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