304章 ギリギリ
10人前の焼きそばを完食した。空腹時でないため、ちょうどいい量といえる。
エマエマに声をかけた女性、3人組の女性はいなくなっていた。ミサキが焼きそばを食べ終えるのを見届けると、会計をしていなくなった。
「シノブちゃん、今日はのどかだね」
「もう少しくらいは、お客様に来てほしいです」
ガラガラすぎると、赤字になりかねない。焼きそば店の店長として、赤字だけは絶対に避けたいところだ。
マイは焼きそばを持ってきた。マスク、フェイスガードをしているため、不気味さを漂わせていた。
「エマエマさん、焼きそばです」
「ありがとうございます」
エマエマは青のりをかけたあと、焼きそばを豪快にすする。
「シノブさん、おいしいです」
「ありがとうございます」
焼きそばを褒められたことよりも、お客の少なさを意識している。焼きそば店の店長として、利益は気になるようだ。
「ミサキさん、焼きそばを作れないですか?」
「エマエマさんを一人にするわけには・・・・・・」
ミサキは背中を、エマエマからポンと叩かれる。
「焼きそばを作ってほしいです」
ノリノリな二人に対して、冷静なツッコミを入れる。
「シノブちゃん、テレビでお休みといったよね。お客様をだますのはよくないよ」
シノブは形勢不利を悟ったのか、顔色は真っ青になった。
「そうですね。今日は難しいかもしれません」
ミサキはエマエマに対して、
「家で焼きそばを作るよ」
といった。エマエマはいつにもなく興奮していた。
「ミサキさんの焼きそばはとっても楽しみです」
「スーパーで焼きそばの具材を買ってくるよ」
エマエマは指で3のポーズを作った。
「3日連続で食べたいので、3つ以上は購入してください。味については、海鮮にしていただきたいです」
「わかりました。焼きそばを準備します」
エマエマが焼きそばを食べ終えると、会計に向かおうとする。直前に4人組の女の子が入店する。年齢は20前後だった。
紫色のロングヘアーの女の子が、こちらに近づいてきた。
「ミサキちゃん、どうしてここにいるの?」
テレビで話していたことと、矛盾のないように説明する。
「焼きそばを食べるために、こちらを訪ねています」
ピンク色の声の女の子は、エマエマに小さな声で話しかけた。
「エマエマさんですか?」
「はい、そうですけど・・・・・・」
水色の髪の毛の女の子は、顎に両手を当てた。
「エマエマさんの大ファンです。お会いできて、とっても光栄です」
茶髪の女の子は、スマートフォンを取り出す。
「友達を呼ぶぞ」
「私も・・・・・・」
「私も・・・・・・」
「私も・・・・・・・」
ミサキは事情を分かりやすく伝える。
「もうすぐ店をあとにします。友達を呼んでいただいても、会うことはありません」
人間ピラミッドが起きる前に、店をあとにできそうだ。シノブ、ミサキ、エマエマはそのことに安堵していた。