294章 サイン交換
ラクマキイは鞄の中から、サイン色紙、黒のボールペンを取り出す。
「ミサキさん、サインをください」
「わかりました。サインさせていただきます」
ミサキはいつもの要領で、サインを書き上げていく。数万枚以上もサインしたからか、お手の物となっていた。
「キイさん。サインです」
キイは受け取ったサインを、保管ケースの中にしまった。大切にしようとしているのは、はっきりと伝わってきた。
「ありがとうございます。私の一生の宝物にします」
ラクマキイはサイン色紙を取り出すと、愛情をたっぷり込めたサインをする。
「私のサインも差し上げます。大切にしてくださいね」
「ありがとうございます。部屋の中に飾らせていただきます」
ズービトル、エマエマ、ルヒカの横に、キイのサインを並べようかな。4大歌手のサインは、あまりにも贅沢すぎる。
「キイさんは、どれくらいいらっしゃるんですか?」
「夜の9時には、家を出発することになっています。かなり無理をいったので、長い時間を確保するのは厳しいようです」
キイと過ごせるのは、7時間程度。超一流とあって、スケジュールは過密のようだ。
「ミサキさん、デュエットした曲を録音するようにいわれています。協力していただけないでしょうか?」
エマエマだけでなく、ラクマキイとも共演をする。ミサキの心の中を、大きなプレッシャーが襲うこととなった。
胸に手を当てた状態で、深呼吸を繰り返す。スーハー、スーハー、スーハー、スーハー。
「ミサキさん、どうかしたんですか?」
「共演するのは、とっても緊張します」
「プレッシャーを感じているんですね」
「はい。心臓が押しつぶされそうなくらい、緊張しています」
キイは背中を優しくさすった。
「下手でも構いません。一緒に歌いましょう」
「わかりました」
「時間はありませんので、さっそくお付き合いいただけないでしょうか?」
「はい。お願いします」
エマエマは眠っているので、場所を移動する必要がある。ミサキは歌うのにぴったりな場所に、キイを案内しようと思った。