295章 カラオケボックス
キイをカラオケボックスに案内する。
「カラオケボックスです」
「すごい広さですね。ここなら音は漏れません。歌うのにぴったりな場所だと思います」
「一人暮らしの家にカラオケボックスは珍しいですね」
「そうかもしれません」
「私もいつか、カラオケボックスを家に設置したいです」
「願いが叶うといいですね」
キイは息を大きく吸う、大きく吐くのを繰り返す。常人では考えられない肺活量は、歌手になるための必須事項なのかなと思った。
「一度だけ、練習をさせてください。そのあとにデュエットしましょうか?」
キイの生演奏を聴けると知って、心はおおいにときめいていた。彼女はどのような歌を聴かせ
てくれるのだろうか。
「キイさんの曲を、胸に焼き付けたいです」
「ミサキさんのために、最高の曲を披露します。最初から最後まで、しっかりと聞いてくださいね」
キイは最新曲である、「瞳と君とエリーゼの世界」を披露する。何度も歌っているからか、歌声、息継ぎのタイミングなどは完璧だった。
4分ほどの曲は終了。ミサキは最高の曲に対して、惜しみない拍手を送った。
「キイさん、最高に素晴らしいです。私は心から感動しました」
「エマエマさん、ルヒカさんからすれば、まだまだだと思っています。彼女たちに追いつくためには、精進は欠かせません」
超一流でありながら、謙虚な気持ちを持ち合わせている。彼女はこれからも、どんどん伸びていくに違いないと確信した。
「ミサキさん、デュエットしましょう」
「はい。よろしくお願いします」
ミサキはマイクを取る手が震えていた。超一流とデュエットするとあって、心拍数は大きく上昇している。