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男は高級ブランドのスーツに身を包み、顔にはサングラスを掛けていた。

「だったら、なぜあんなことを?」
マスターは俺に耳打ちしてきた。
「彼女の気持ちを弄ぶような真似をして……」
俺はマスターを睨みつけた。
「おい、余計な詮索はやめろ」
「しかし……」
「もういい。俺はおこったぞ。死ね」
やおら俺はバスタードソードを抜き、マスターの首を切り落とした。店内は騒然となる。常連客が次々に剣を構えてメリダに襲い掛かる。俺はそれを素手で叩き伏せた。
俺はテーブルに金貨を積み上げると立ち上がった。
俺は店を出て行くと、路上に停めておいた自転車にまたがった。
ペダルを踏み込むと、勢いよく加速していく。俺は全力で走った。やがて国道に出ると、俺はスピードを上げて突っ走る。背後からはパトカーや救急車がサイレンを鳴らして追いかけてくる。俺は必死の形相でペダルを漕ぐと、やがて追いつかれて包囲された。
俺は両手を挙げて降参した。警察官に連行された先は警察署ではなく、陸上自衛隊の駐屯地であった。俺が連行されたのは特別室と呼ばれる部屋で、そこには一人の男が待っていた。男は高級ブランドのスーツに身を包み、顔にはサングラスを掛けていた。
俺は男の向かいの椅子に腰かけた。室内には俺と男以外に誰もいない。
男は俺を値踏みするような目で見つめた。
沈黙に耐えかねた俺は男に話しかけた。
すると、相手はおもむろに語り始めた。
異世界難民の会の背後には異世界からやってきた魔王がいる。
魔王は異世界人を使って世界征服を企んでいる。
魔王は異世界人を奴隷にして、やりたい放題に振舞っている。
魔王は異世界からやってきた異世界人で、異世界難民の会は魔王の配下のカルト集団である。
俺は唖然とした。異世界難民の会が魔王の配下? しかも魔王は異世界からやってきた異世界人だと?! 俺は思わず立ち上がっていた。
冗談も休み休み言え。
俺は声を荒げていたが、すぐに我に返った。
いかん、落ち着け。冷静になれ。こんな所で感情的になっても仕方がないぞ。
俺は深呼吸すると、再び椅子に座った。
俺は男に質問をぶつけた。
お前はいったい何者なんだ? すると、男は胸ポケットから名刺を取り出した。
株式会社エターナル・ドラゴン、代表取締役CEO、鈴木勇雄。
俺がその名刺を見つめていると、相手が口を開いた。
俺は異世界難民の会について調査している。そこで君に協力してほしいことがある。
俺が黙っていると、男は懐から拳銃を取りだした。
俺は銃口を向けられて身動きが取れなくなった。
「俺に協力しないか?」
俺は歯噛みした。「断ると言ったら?」
「君の答えは決まっているだろう」
「ああ、そうだな」
俺は覚悟を決めた。
「協力しよう」
「それでこそ日本人だ」
男は満足そうにうなずいて見せた。
「君は異世界難民の会が魔王の配下だと思っているんだろう」
「違うのか?」
「残念だが、魔王の配下は自衛隊だ」
俺は驚愕して目を剥いた。「そんなバカなことがあってたまるか」
「本当だ。魔王は自衛隊に異世界人を誘拐させて、洗脳教育を施している」
「異世界人を洗脳できるのか」
「そうだ。魔王は異世界人の肉体を乗っ取って、異世界からやってきた異世界人を操ることができる」
「信じられないな」
「信じる信じないは自由だが、事実は事実として受け止めてもらおう」
俺は苦笑を浮かべた。まさか自衛隊の連中も魔王の一味とは思わなかったぜ。
俺は腹をくくることにした。「その話を詳しく聞かせてくれ」
「もちろんだとも」
俺は勇者として異世界召喚された。
だが、魔王の配下に騙されて殺されそうになった。
俺は魔王を討伐して元の世界に戻った。
魔王は滅んだが、異世界難民の会は健在だった。俺は魔王の配下に拉致され、魔王に体を支配された。
魔王は異世界難民の会の連中に俺の体を貸し与えた。
そして、異世界難民の会の連中は異世界からやってきた異世界人の体に憑依した。
そして、魔王は異世界難民の会の連中を手足のように使って世界を手中に収めた。
俺は絶句した。異世界難民の会は魔王の手先じゃなかったのか? 俺は混乱しながらも、どうにか言葉を絞り出した。「待ってくれ。魔王は異世界難民の会を利用して何をするつもりだ」
「魔王の目的は世界の統一だ」
「そんなことは分かってる。そうじゃない。魔王は異世界難民の会の連中を何に使うつもりなんだ?」
「魔王は魔王以外の何者でもない」
「どういう意味だ?」
「言葉通りの意味だよ。それ以上でもそれ以下でもない」
「つまり、異世界難民の会は捨て駒というわけか」
「魔王にとってはどうでもいい存在だ」
「なぜだ?!」俺は苛立って叫んだ。「どうして魔王がそこまでする必要がある」
「異世界人と人間はいずれ滅びる運命にあるからだ」
「異世界人が人間を滅ぼすって言うのか」
「そのとおりだ」
「馬鹿な。異世界人は魔王の忠実な下僕じゃないか」
「異世界人は人間より優れた存在だ」
「異世界人は人間を凌駕しているというのか」
「そのとおりだ」
「証拠はあるのか」
「あるとも。異世界人は魔法のアイテムを所持している。その効果は絶大で、魔法を使える異世界人は人間を遥かに上回る身体能力を有している」
「魔法なんてただのお飾りだろう」
「魔法を侮るな。異世界人は人間よりも優れている」
「どうしてそう言い切れる」
「異世界人が魔法を使うからよ」
「その根拠は?」
「魔法は人間の魂を堕落させるのよ。悪魔の誘惑に勝てると思う?」
「悪魔は魔王の味方じゃないのか?」
「魔王は魔王よ。それ以外の何者でもない」
「どうしてわかる?」
「魔王は魔王よ。それ以外の何者でもない」
俺は理解に苦しみながら、腕輪の力を封印した。
「それはそうと、この前、タチの悪い客が来て困っているんだけど」
「どんな奴だ」
メリダが指さしたのは、カウンター席に座っている小太りの男であった。
俺は眉をひそめた。どこかで見たような顔だ。
メリダは俺が腕輪の力を使っているのに気づいたようだ。
俺はメリダを睨みつけた。
すると、メリダは気まずそうに視線を逸らした。
メリダが俺を裏切ったわけではないと知って、少しだけほっとした。
俺はメリダを庇うように前に出た。
メリダに近寄るな。この子は俺の恋人だ。俺は威嚇するように言った。
しかし、相手は動じることなく、俺を無視してメリダに近づいてきた。
俺は相手の肩に手を置いた。
すると、メリダが悲鳴を上げた。
俺は驚いて手を放した。メリダはその場に崩れ落ちると、苦しそうに悶え始めた。
男はメリダの腕を掴むと、力任せに引っ張った。
俺は慌てて止めに入った。
「おい、やめろ」
男は振り返ると、俺を睨みつけた。「貴様か」
「何のことだ?」
男は俺に掴みかかってきた。俺は反射的に拳を突き出し、男を殴り飛ばした。男は床に叩きつけられると、泡を吹いて失神した。
俺は呆然としていた。
今の攻撃は俺の意思ではなかった。まるで誰か別の人間が勝手にやったような感じだった。俺は不安になってメリダを見た。メリダは顔を真っ青にしながら震えていた。
「今のは一体なんだったんだ?」
俺は自分に問いかけるように呟いた。
メリダは首を横に振った。「分からないわ」
「俺にも分からない。だけど……」
俺は嫌な予感がしてならなかった。

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