276章 一杯の水
ミサキのおなかは空腹のサインを発する。10個のパンを食べただけでは、おなかを満たす効果は限定的である。
「おなかすきました」
ミサキの声が聞こえたのか、エマエマは目を覚ます。
「ミサキさん・・・・・・・」
エマエマは睡眠をとったことを、頭を下げて謝っていた。
「ミサキさん、すみません。ついつい、眠ってしまいました」
ミサキの最優先事項は、エネルギー補給。すぐにやり遂げなければ、生命を維持するのは厳しくなる。
「ミサキさん、おなかすいているんですか?」
「はい。シノブちゃんたちを待っています」
エマエマは神妙な面持ちで頷く。
「早く戻ってくるといいですね」
「そうですね」
ミサキの家から、スーパーまでは結構な距離がある。散歩だけだったとしても、1時間以内に戻ってくるのは、至難の業である。
「ミサキさん、水を飲みましょう。ちょっとくらいは、空腹をごまかせると思います」
エマエマはすぐさま、キッチンに向かった。できることはやるという姿勢に、おおいに胸を打
たれることとなった。
「ミサキさん、水です」
「エマエマさん、ありがとうございます」
水を一気飲みすると、空腹はほんのちょっぴり和らぐ。食べ物と同じ効果はなくとも、おなかを満たす効果はあるようだ。