253章 なんで?
ズービトル、ルヒカ、エマエマの夢の競演が終わった。それぞれの個性が重なり合って。最高の一曲に仕上がっていた。
コンサート終了かなと思っていると、予期せぬサプライズをつきつけられた。
「ミサキさん、歌を披露してください」
エマエマからの唐突な要望に、しどろもどろになってしまった。
「私は素人です。みなさんの前で、歌えるようなレベルではありません」
小学一年のときのあだ名は「天性の音痴」。ミサキは生まれつきの歌下手だ。
「うまい、へたは関係ありません。ミサキさんの歌を聴きたいです」
ルヒカも続いた。
「私も聞きたいです」
ズービトルも同じ意見だった。
「大食いガールの歌を聴きたい」
ミサキは会場を一瞥する。予期せぬサプライズに対して、会場は本日一番の盛り上がりを見せることとなった。ズービトル、ルヒカ、エマエマのときよりも、歓声は大きかった。
「大食いガールの歌を聴けるぞ」
「どれくらいの歌唱力かな?」
「本人は下手といっているけど、実はうまかったりして」
「聴いてみないとわからないね」
「本当に下手というパターンもありえる」
「下手なら下手で、親近感沸きそう」
好き勝手に話されるのは、気分のいいものではない。ミサキの気分は、30パーセントほど低下する。
シノブはこちらに声援を飛ばす。
「ミサキさん、ファイトです」
マイも続いた。
「ミサキちゃん、歌を聞きたい」
フユコはアホ毛をぴんと伸ばしていた。
「ミサキちゃんの歌を聞きたいのだ」
ユタカも続く。
「ミサキちゃん、ファイト」
シラセも続いた。
「ミサキちゃん、期待しているよ」
ミサキは覚悟を決めて、歌うことに決めた。