252章 タイムリミットまで10分
シノブ、浴衣姿の女性が戻ってきた。時刻は8時50分。あと10分すれば、10時間の断食タイムに突入する。
「ミサキさん、おにぎりです」
「シノブちゃん、ありがとう」
ミサキは30%増しのスピードで、おにぎりを食べ進めていく。一つでも多く食べて、おなかを満たしておきたい。
10個のおにぎりを食べたところで、ペットボトルのお茶を一気飲み。そのあと、10個のおにぎりを胃袋に押し込む。
20個のおにぎりを食べると、おなかは安泰を取り戻すこととなった。
「ミサキさん、おなかはどうですか?」
「おなかはしっかりと満たされた。シノブちゃん、ありがとう」
ミサキはズービトル、ルヒカ、エマエマ、観客に深々と頭を下げる。
「個人的な事情によって、コンサートを中断させてしまいました。心より深くお詫び申し上げます」
ズービトル、ルヒカ、エマエマ、他の観客はどういうわけか、大いに盛り上がることとなった。
「大食いガールの生食事を見られたぞ」
「ブラボー、ブラボー」
「コンサートの余韻を、さらに盛り上げた。粋な計らいにもほどがある」
「もっとやれ、もっとやれ」
時計の針は、九時を示す。朝の七時になるまで、胃袋は何も受け付けない。周囲の期待に応えるのは、絶望的な状態だった。
「ミサキさんは、朝の七時までは何も食べられません。大食いショーは、ここで終わりです」
シノブの言葉に、観客は大いに落胆する。反応を見ていると、コンサートをやっているのかなと思ってしまった。