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248章 セクハラ? 同意あり?

 ズービトルの3人に対して、サインを手渡す。

「ミサキさん、ありがとうございました」

 ズービトルの歌担当から、ハグをされそうになった。ミサキは突然のことに、頭は真っ白になった。

 密着寸前というところで、二つの体は離れる。ギターを担当していた男が、歌担当の体を力一杯引っ張ったためである。ハグをできないとわかった瞬間、解放されたともいえる、残念ともいえる気持ちになった。

「ケン、セクハラ・・・・・・」

 ケンと呼ばれた男は、すぐさま土下座をする。テレビで堂々としている、3人とは思えない光景だった。

「ミサキさん、大変失礼しました」

 他の二人も土下座をする。

「ケンの過ちを、どうにか許してあげてください」

「私からもお願いです。ケンをお許しください」

 ミサキは土下座をする三人に、優しく話しかけた。

「私は気にしていないので、土下座をやめてください」

 ズービトルの三人は、ゆっくりと顔をあげた。

「ミサキさん、許してくださるんですか?」

「はい。今回のことは水に流します」

「ミサキさん、本当にありがとうございます」


「土下座はみっともないので、立っていただけないでしょうか」

 ケンたちはゆっくりと立ち上がった。

 ミサキはズービトルの3人に、あるお願いをする。 

「10年後、20年後で構わないので、コンサートに案内してほしいです」

「わかりました。ミサキさんを案内させていただきます」

 ミサキはハグをしようとした男性に、率直な思いを伝えた。

「嫌という思いもありましたけど、ハグをしたいという思いもありました。私の心の中では、50-50くらいの割合です」

「ミサキさん・・・・・・」

「本当にありがとうございました。最高のライブは、一生の宝物になりました」 

 ミサキはズービトルの三人と、がっちりと握手をする。今回で最後になると思われる握手は、人間とは思えない温かさを醸し出していた。

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