バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

215章 アヤメの食欲不振

 アヤメはパンを口にしたものの、喉を通っていくことはなかった。

「アヤメちゃん、食欲なさそうだね」

「そんなことはないよ。おなかは究極の空腹だよ・・・・・・」

 究極の空腹で満足に食べられない。アヤメの体は危機的状況である。

「深呼吸をしたら、パン、野菜炒めを食べようと思う」

 アヤメは深呼吸を繰り返す。メンタルをリラックスすることで、食べ物を食べられる状態を作り出そうとしている。

「食べられないのであれば、無理して食べることはないよ」

 アヤメははっきりとした意思を持って、首を横に振った。

「ミサキちゃんは、食べ物を用意してくれた。粗末にするわけにはいかないよ」

 玄米パンを食べようとするも、体は消化を拒否する。

「アヤメちゃん・・・・・・」

「食べたいという気持ちはあっても、食べ物は喉を通過しない」 

 精神的ショックの大きさから、食べ物を食べられなくなっている。そんな女性に対して、水分補給をするように伝えた。

「アヤメちゃん、水分補給しよう」

「そうだね」

 アヤメは水を飲む。こちらについては、しっかりと喉を通過する。

「水は飲めそう・・・・・・」

 水を飲んだ女性は、玄米パンを食べる。喉を通っていくように、ちょっとずつ、ちょっとずつ食べていた。

 アヤメはパンを完食したあと、野菜炒めには手を付けなかった。彼女の状態では、野菜炒めを食べるのは厳しいようだ。

「ミサキちゃん、野菜炒めは明日にするね」

「アヤメちゃん、私が食べようか」

 アヤメは力なく頷く。ミサキは何もいわずに、野菜炒めを完食する。

しおり