214章 アヤメのアルバイト探し
アヤメは片手に雑誌を持っていた。
「アヤメちゃん、何を見ているの?」
「求人票だよ。生活していくために、働く場所を見つけないと・・・・・・」
トップアイドルの栄光に縋りつくのではなく、未来のことを真剣に考えようとする。自身の置かれた立場をきっちりと理解するのはすごい。口でいうのはとっても簡単だけど、行動するのは非常に難しい。人間社会では過去の名誉にすがるあまり、未来の判断を間違う人であふれかえっている。
「ミサキちゃん、スーパーのアルバイトはどんなことをするの?」
アイドル一筋で生きたため、視野は非常に狭い。いろいろな社会を見て、社会常識をおぼえる必要がある。
「商品を補充する作業、揚げ物などの調理作業、レジ打ちなどがあるよ。どこに配属されるのかは、入社後に決定することも多い」
「そうなんだ。いろいろとあるんだね」
アヤメの口調からすると、あまり興味を持っていないように感じられた。
求人票のページは、3ページほどめくられた。
「バスの運転手はどんなことをするの?」
「バスに乗って、車を運転するんだよ」
アヤメは瞳を輝かせた。
「一度でいいから、やってみたい」
「バスの運転手になるためには、車の免許取得は必須だよ。免許を所持していない人は、車を運転できないよ。バスの免許を取得するまでは、5年くらいはかかると思ったほうがいいよ」
「そっか・・・・・・」
バス運転手に対する熱量は、瞬く間に放出されることとなった。熱しやすく、冷めやすい性格をしている。
アヤメはさらにページをめくった。
「ゲームの販売員はどんな仕事なの?」
「ゲームをやったことないから、イメージはよくわからないよ」
「ペットショップ勤務はどんなことをするの?」
「ペットのエサやり、接客などに関することをするよ」
アヤメはいろいろな職業について質問する。ミサキは細かく説明し、彼女のプラスになるように努めた。
「アヤメちゃん、どんなことをしているのか見に行かない。ここで話すよりも、ずっといいと思
うよ」
「そうだね。一緒に行ってみる」
ミサキのおなかはギュルルとなった。
「アヤメちゃん、腹ごしらえを先にするね」
「うん。わかった」
「アヤメちゃん、何か食べない?」
「玄米パン、野菜炒めを食べたい」
アイドルをやめても、健康志向にこだわりを見せる。アヤメの意識の高さに、大いに感心させられることとなった。