190章 焼きそばを作るようにいわれる
ミサキは仕事をするために、焼きそば店にやってきた。
「ミサキさん、おはようございます」
「シノブちゃん、おはよう」
「体の疲れは取れましたか?」
「それなりといったところだよ」
ミサキは髪をくくっている、マイに朝の挨拶をする。
「マイちゃん、おはよう」
「ミサキちゃん、おはよう。張り切ってやっていこうね」
マイは今日もポジティブ。ミサキのメンタルは大いに癒されることとなった。
店内を見回すと、従業員は3人のみだった。ユタカ、シラセ、フユコはやってきていないのだろうか。
「他のメンバーはいないの?」
ミサキの質問に、マイははきはきとした声で答える。
「ユタカちゃん、シラセちゃん、フユコちゃんはお休みだよ」
「3人でやっていけるの?」
焼きそば店を回すためには、4人以上は必要である。3人は明らかに戦力不足だ。
「うん。今日は問題ないよ」
ミサキはカウンターに向かおうとしていると、シノブから声をかけられた。
「ミサキさん、焼きそばを作ってください」
「私が焼きそばを作るの?」
「はい。ミサキさんの焼きそば調理デーです」
心の中にわずかな期待、大きな不安が入り混じることとなった。割合にするならば、期待1、不安9だった。
「焼きそばの味はどうするの?」
「焼きそばの味については、オリジナルです。ミサキさんのオリジナル焼きそばを、お客様に提供してあげてください」
「私のオリジナル焼きそば?」
「はい。好きなように作ってください」
調理をしていない人間に、レシピなしで作らせる。あまりにも危険な賭けに出ているような気がする。
焼きそばを作ろうとする前に、
「6時間くらいの勤務になると思うので、覚悟しておいてくださいね」
といわれた。6時間の勤務であると知り、体の中の力は抜けそうになった。
「4時間くらいはいけそうだけど、6時間はきつい気がする」
「2時間ごとに、1時間の休憩を取る予定です。6時間勤務、2時間休憩でやっていこうと思います」
「体力は持つかな?」
「ミサキさんの体調に合わせて、時間調整するようにします。無理をしないように仕事をしてくださいね」
開店時刻は迫っている。シノブはカウンターのほうに、ゆっくりと向かっていった。
「お店を開けるときは、ミサキさんもついてきてください」
「わかった」
ミサキはゆっくりとついていく。疲れは完全にとれていないのか、鉛のように重たかった。