176章 髪を乾かす
三人の入浴を終えると、念入りに髪の水分を切っていく。適当にやってしまうと、髪の劣化を早めてしまいかねない。
ユタカはショートヘアにカットしているため、髪をすぐに拭き終えた。髪は短ければ短いほど、労力は小さくなる。
男子児童の丸坊主を思い出す。1ミリくらいの髪の毛は、どれくらいの時間で乾かせるのだろうか。
ユタカは髪をふいたタオルを、洗濯機の中に放り込む。髪は短いからか、タオルに毛はあまり付着していなかった。
「ミサキちゃん、ドライヤーを借りてもいい?」
「うん。いいよ」
ミサキはドライヤーのあるところに、ユタカを案内する。
「ドライヤーはここにあるよ」
一人暮らしにもかかわらず、ドライヤーは50台もある。さすがに多すぎるような気がする。
「ミサキちゃん、どれを使ったらいいの?」
「好きなのを使ったらいいよ」
ユタカはしばらく悩んだのち、水色のドライヤーを手に取った。
ユタカは髪の毛全体に、ドライヤーの熱を当てる。熱の温度に不満を持ったらしく、すぐに髪を乾かすのをストップする。
「もうちょっと、温かいほうがいい」
ユタカは別のドライヤーを使用するも、こちらにも不満を持ったようだ。
「もうちょっと、冷たいほうがいい」
ドライヤーにこだわりを見せる姿は、焼きそば店と働いているときと重なる。具材の大きさ、火加減などに人一倍気をかけている。
ユタカは10台目で、理想のドライヤーに巡り合えた。
「これはすばらしいですね。家にも一台ほしいです」
理にかなった方法で髪を乾かしていく。この様子を見て、自分ももっと髪について知りたいと思った。
ユタカがドライヤーを使い終えたとき、ミサキ、ホノカは髪の水分を拭き取る作業をしていた。髪の長さに応じて、乾かす時間は長くなる。それをわかっているのに、ロングヘアーであることをやめようとしない。大量の時間を消耗したとしても、ロングヘアーを楽しんでいきたい。
タオルで水分を拭き取ったあと、ドライヤーを丁寧にかけていく。髪の毛、頭皮、キューティクルを火傷させないよう、細心の注意を払った。
ミサキはドライヤーをかけたあと、髪の毛を触る。きっちりと手入れをされた髪の毛は、たっぷりの艶を伴っていた。
「よし、これでOKだね」
ホノカも髪の乾燥を終えた。こちらについても、満足そうな表情を浮かべていた。