177章 仕事の依頼
家でゆったりとしていると、ドアをノックされる音がした。
扉を開けると、20歳くらいの女性が立っていた。スーツ姿を着用しており、仕事の依頼であることを感じさせる。
「ミサキさんはこちらでしょうか?」
「はい、そうです」
「仕事の依頼をするために、こちらにやってきました」
焼きそば店で働いているため、自分勝手な行動は許されない。20くらいの女性に、そのことを伝える。
「焼きそば店で仕事をしています。シノブちゃんの許可を必要とします」
「シノブさんに話をして、OKをもらっています」
焼きそば店に行ったときに、いろいろといわれるのかな。ミサキは憂鬱な気分になった。
「仕事はどんなことをするのでしょうか?」
心の中に断食の恐怖が蘇った。とんでもない依頼でなければいいけど・・・・・・。
20くらいの女性は唾を飲み込む。
「遊園地のアトラクションを宣伝していただきたいです」
アイスクリーム撮影、水着撮影、お風呂撮影とは明らかに異なる。未知の領域に足を踏み入れようとしている。
「遊園地のアトラクションの宣伝?」
「バンジージャンプ、ジェットコースター、回転ブランコ、フリーフォールなどをやっていただきます」
バンジージャンプと聞いたことで、顔は真っ青になった。
「命を危険にさらす企画は、お断りさせていただきます」
「バンジージャンプは、10人のスタッフをつけます。安全確保に万全の態勢を整えます」
何人のアシスタントをつけても、100パーセントの事故を防げるわけではない。バンジージャンプの大事故は、死に直結する。長く生きたい者として、わずかなリスクも抱えたくなかった。
「それでも・・・・・・」
「バンジージャンプは無理なら、ジェットコースターなどにのっていただけませんか。危険性はかなり低いと思います」
ジェットコースターなら、事故の危険性は小さい。仕事を引き受けてもいいかなと思った。
ミサキにとっては、もう一つ重要なことがある。そちらの確認を取ることにした。
「遊園地は片道でどれくらいですか」
片道1時間以内であればベスト。移動距離の短い仕事であることを、切に願っていた。
「片道4時間くらいといったところでしょうか。稀に大渋滞を起こすこともあり、10時間以上を要することもありますね」
片道10時間と聞いて、魂は抜けてしまった。
「ミサキさん、ミサキさん・・・・・・」
「か・かたみゅち・・・・・じゅじか・・・・・・・」
10時間もかかると、生命に重大な危険が生じる。
「サポートはしっかりとします。安心してください」
「か・かたみゅり・・・・・じゅ・・じか・・・・・・」
「渋滞の起きる確率は、1パーセント未満です。0と考えてもらってもいいでしょう」
100or0でない限りは、どうなるのかはわからない。確率を当てにするのは危険だ。
「ミサキさんのことを知っている、シノブさんなどにサポートをお願いしました。彼女たちといっしょなら、不安も解消されると思います」
シノブも一緒であることを知って、ミサキの不安は和らぐこととなった。
「それなら・・・・・・」
ミサキが前向きになったのを確認すると、女性は仕事の話を進める。
「ミサキさんだけでなく、アヤメさんにも遊園地の仕事をしていただきます。視聴率70パーセン
トコンビで、お客様を呼び寄せてほしいです」
「アヤメちゃんもやってくるんですか?」
「はい。大食い少女、トップアイドルの競演です」
アイスクリーム、温泉に続いて、遊園地で共演するとは。アヤメとは切っても切れない糸で結ばれている。