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143章 最低の依頼

 クリームパンを食べていると、家の扉がノックされる。

「こんにちは・・・・・・」

 家を訪ねてきたのは、20くらいの男性。顔のパーツのバランスがよく、女性を虜にできる顔をしていた。

 ミサキは魅力を感じなかった。あまりに完璧すぎるからか、人間味を感じられなかったのである。ちょっとくらいの欠点を持っていたほうが、人間らしさを感じさせる。

「私に何の用ですか?」

「ミサキさんに依頼をお願いしたいと思いまして・・・・・・」

「どんなことをすればいいんですか?」 

「究極の空腹状態で、食べ物を探し出すという企画です。ミサキさんが食べ物を見つけたときの感動を、視聴者に伝えていきたいです」

「究極の空腹状態はどんなものですか?」

「24時間くらい・・・・・・」

「24時間も食べないのは無理です。仕事を引き受けることはできません」

 他人の命を弄んで、視聴率を稼ぐ。テレビ界は完全に腐りきっている。

「み・・・・・・」

 ミサキは会話を遮った。

「一文字でも続きを話した場合、殺人未遂として通報します。犯罪者として生涯を過ごすことになるでしょう」 

 男性は観念したのか、家からいなくなった。

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