142章 パン屋に再びやってきた
ミサキは2日連続で、パン屋にやってきた。
「ミサキちゃん、いらっしゃい」
ホノカの温かい声を聞いているだけで、柔らかい気持ちになれる。彼女の持つ優しさは、人の心を和らげる効果を持つ。
「ホノカちゃん、今日もパンをたくさん購入するよ」
ミサキがトレイを持つ前に、ホノカに声をかけられた。
「ミサキちゃん、一つのパンを集中して買わないようにしてね。パンのデパートリーを減らすと、他の人から不満をいわれるから。パンを補充しようとしても、60~70分くらいはかかる」
昨日は同じパンばかりを購入する。バランスが偏っていたために、パンの種類を減らしてしまっていたようだ。
「いろいろな種類のパンを、2~3個くらいもらうね」
「ミサキちゃん、気をつかわせてごめんね。本音をいうなら、好きなように買ってほしいと思っているけど、そういうわけにはいかないの」
20種類くらいのパンを購入すれば、40~60個のパンを確保できる。20000キロカロリー少女にとって、十分な量といえる。
ミサキは40個のパンをトレイに乗せたあと、ホノカのいるところに向かった。
ホノカはゆっくりと、パンをレジに通していた。パンを守ろうとする姿勢は、こちらにもはっきりと伝わってきた。
「75ペソです」
ミサキはパンの代金を払ったあと、40個のパンを受け取る。今日の昼ごはん、おやつはこれにしようと思った。
「ミサキちゃん、焼きそば店はどんな感じ?」
「私はサイン、食べることが中心なのでわからないよ」
ミサキは厨房に入る時間はほとんどなく、中の様子については分からない。
「そうだよね。わからないよね」
ホノカは胸に手を当てたあと、小さな息を吐き出す。
ミサキは話をしようとすると、新しい女性客が入ってきた。ホノカの仕事の邪魔にならないよう、パン屋からいなくなった。