137章 ナナと出会う
ミサキは店を出たあと、ナナと出会った。焼き肉店で一緒だったときよりも、顔色は良くなっていた。
「ナナちゃん、こんにちは」
「ミサキちゃん、こんにちは」
「ナナちゃん、仕事は決まったの?」
「うん。スーパーでレジ店員をしている。忙しいときもあるけど、比較的ゆったりできるので、仕事はやりやすいよ」
退職してから1週間も経っていない。ホノカ、ナナは退職をする前から、就職活動をしていたと思われる。事前に退職希望日を、伝えていた可能性もある。のんびりとしているように見えて、行動するところはしっかりと行動している。
「ミサキちゃんのおかげで、退職金はそれなりにもらえた。3~4カ月くらいは、何もしなくても生活できそうだよ」
退職するまでの期間は数カ月。3~4カ月の生活費分の退職金は、かなりの太っ腹だ。
「ミサキちゃんのおかげで、退職金をもらえた。焼きそば店の売り上げの90パーセントは、握手会、アヤメちゃんの貸し切りなどによるものだった。そのお金がなかったら、退職金はもらえな
かったと思う」
売り上げが多いからこそ、たくさんの退職金をもらえる。それはれっきとした事実である。
ナナはパンの量について、指摘を入れてきた。
「ミサキちゃん、すごいパンの量だね」
「うん。これくらいは食べないと、すぐにおなかペコペコになるから」
ミサキのおなかに、ナナは掌を伸ばした。
「ミサキちゃんの胃袋はすごいのに、体はすごく細いね。同じ女性として、とっても羨ましい」
必要摂取カロリーの0を一つ抜くだけで、食品を食べる量は大きく変わる。ごくごく普通の生活をするために、必要摂取カロリーを2000に書き直してほしい。
ナナは手をゆっくりと離す。
「私は仕事があるから、この辺で失礼するね」
「お仕事、頑張ってね」
「うん。ミサキちゃん、ありがとう」
ナナはテンション高めで、新しい職場に向かっていく。足のリズムからは自分に合った仕事を、発見できたのを感じさせた。