102章 記念写真
「ミサキさん、食べているところを見たいです」
「さっき食べたばかりだから、すぐには食べられないかな」
白米3キロ、肉1キロ、野菜1キロを食べたばかりである。1時間くらいは、何も口にしたくなかった。
ミサキが食べられないことを知ると、ココロはがっくりと肩を落とす。
「食べるところを楽しみにしていたので、とっても残念です」
アヤメは散歩から戻ってきた。昼と比べると、時間は短めだった。夜の散歩については、早めに切り上げる方針のようだ。
「ミサキちゃん、ただいま」
「アヤメちゃん、おかえりなさい。お客様が来ているよ」
「私にお客様? どんな人なのかな?」
アヤメはお客様の顔を見ると、驚いた顔をしていた。仕事関係者と顔を合わせるのは、想定していなかったようだ。
「ココロちゃん・・・・・・」
アヤメ、ココロのツーショットはとっても豪華だった。ミサキは無意識のうちに、
「三人で記念写真を撮りたい」
と口を滑らせてしまった。
アイドル達から反対されるのかなと思っていると、アヤメから前向きな発言がなされた。
「ミサキちゃん、私も取りたい」
ココロも賛成する。
「いいですね。写真を撮りましょう」
誰をセンターにするのかを考えていると、アヤメから思わぬ発言があった。
「ミサキちゃんをセンターにしよう」
ココロも同じ意見だった。
「とってもいいですね。ミサキさんをセンターにしましょう」
3人のうち、2人の意見は決まっている。ミサキがどんなことをいっても、覆ることはないと思われる。
ミサキはセンターに立った。裏の裏で生きてきたからか、大いに違和感があった。
「ミサキちゃん、笑顔を作ってね」
笑顔を作ろうとすればするほど、ぎこちない表情になってしまった。笑顔というのは、人工的
に作れるものではないようだ。
「ミサキさん、とっても固いですよ。スマイル、スマイルです」
ココロはわき腹に手を当てる。ミサキはくすぐったさのあまり、白い歯がこぼれることとなった。
「シャッターチャンスです」
ココロはシャッターを押すと、3人の笑顔が映っていた。アヤメ、ココロの笑顔は自然体、ミサキの笑顔は人工的に作られたものだった。
「アヤメ先輩、写真はどうですか」
アヤメは瞳を輝かせていた。
「とってもいいね。この写真を記念にしよう」
恥ずかしい写真だったので、ストップをかけたい。そのように思ったものの、口にすることはできなかった。