101章 ココロ登場
ベッドで休んでいると、玄関のチャイムが鳴らされた。アヤメは体を起こすと、ゆっくりと玄関のほうに向かった。
玄関の扉を開けると、思いもよらない人物が立っていた。
「ミサキさんですか?」
「はい、そうですけど・・・・・・」
アイドルデビューしたばかりの女性は、頭を深々と下げた。
「サクラココロといいます。はじめまして」
「ココロさん、はじめまして」
14歳の少女の肌は、水分たっぷりだった。触ってはいないにもかかわらず、もちもちしているのがはっきりと伝わってくる。
ココロの足の細さは、アヤメに匹敵するレベル。ぎゅっと握っただけで、骨がすぐに折れると思われる。
「ミサキさんに会えて、とっても光栄です」
テレビで話をしていたとき、ミサキを憧れの女性であるといっていた。心の笑顔を見ている
と、本心であることを察した。
「ミサキさん、サインをください」
「サ・・・イ・・・ン?」
「はい。サインをください」
「サイン色紙は持っているの?」
「はい、ここにあります」
ココロが差し出したのは、立派なサイン色紙。サインに対する思いが、こちらに伝わってくる。
ミサキがサインを終えると、ココロはケースの中にしまった。
「ミサキさんのサインを、大切にします」
ココロはトップクラスのアイドル。ミサキのサインをもらうためだけに、ここにやってきたというのは考えにくい。
「ココロさん、どんな用事でやってきたの?」
「アヤメ先輩と打ち合わせをするために、こちらにやってきました」
休みの日であっても、仕事の打ち合わせをする。アイドルという職業は、思っている以上に大
変である。
「アヤメちゃんは、夜の散歩に出かけているよ」
「どれくらいで戻ってきますか?」
「それについてはわからないかな」
「アヤメちゃんが戻ってくるまで、こちらで待たせていただきます」
ココロは靴を脱ぐと、家の中に入ってきた。14歳ということもあって、大いにあどけなさを感じた。