95章 アヤメの視線
ミサキのおなかがギュルルとなった。
「おなかすいた・・・・・・」
わずかな寒天で生きられる人もいれば、ラーメン5杯、餃子10人前、から揚げ10人前を食べても空腹になる人もいる。顔だけでなく、おなかも不平等である。
「ミサキちゃん、何を食べるの?」
「まだ決めてないけど・・・・・・」
アヤメはいつにもなく、瞳を輝かせていた。
「ワクワク、ワクワク、ワクワク、ワクワク、ワクワク、ワクワク、ワクワク」
「アヤメちゃん、食べるところに興味があるの?」
「うん。ミサキちゃんの食べているところを見ると、元気をたっぷりもらえるの」
アヤメと話をしている間にも、空腹は進行していくことになる。ミサキは席を立つと、自販機に向かった。
昼は中華だったので、それ以外のものを食べたい。しばらく考えたあと、洋食を食べることに決めた。
パン10枚、シチュー10人前、グラタン10人前のボタンを押す。しばらく待つことによって、豪
華なメニューを食べられる。
「ミサキちゃん、何を食べるつもりなの?」
「パン10枚、シチュー10人前、グラタン10人前だよ」
「ミサキちゃんの胃袋は、とてつもなく大きいね」
痩せているにもかかわらず、大量のエネルギーを必要とする。見た目=生きるために必要なカロリーは不一致だ。
アヤメはマイバッグから、スマートフォンを取り出す。
「ミサキちゃん、食べているところを映像に収めてもいい?」
「ダメだよ。そんなことをされたら、とっても恥ずかしいよ」
アヤメは食いつくと思ったけど、スマートフォンをカバンの中にしまった。
「わかった。ミサキちゃんの食べるところを、心の中に永久保存する」
アヤメは羨望の眼差しを向けていた。ミサキは恥ずかしさのあまり、顔をそらしてしまった。