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89章 アヤメの体温

「ミサキちゃんも、ストレッチをしてみようよ」

「私がストレッチをするの?」

「うん。とっても気持ちいいよ」

「わかった。やってみる」

 ミサキは柔軟体制のポーズを作ると、アヤメはゆっくりと背中を押す。

「ミサキちゃん、痛くないかな?」

「うん、いけるよ」

「もうちょっとだけ押してもいい?」

「いいよ」

 アヤメは背中越しに、体を預けてきた。ミサキは唐突な展開に、あたふたしてしまった。

「アヤメちゃん・・・・・・」

「ミサキちゃんの体温は、おかあさんみたいに優しいね」

 アヤメはすぐに離さなかった。ミサキの体温を、1秒でも長く感じ取ろうとしていた。

「ストレス解消に最高だね・・・・・・」

「アヤメちゃん・・・・・・」

「人前では絶対にいえない、ストレスをたくさん持っているの。どこかで解消しようとしたけ
ど、解消する場所は見つからなかった」

「・・・・・・・」

「ミサキちゃんの温かさは、ストレス解消にもってこいだよ」

「・・・・・・・」

 アヤメは体をゆっくりと離す。体をくっつけてから、3分が経過していた。

「ミサキちゃんから、エネルギーをたっぷりもらえた」

 ミサキの背中には、アヤメの胸の感触が残っている。とっても柔らかく、とっても優しく、とっても形が整っていた。 

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