88章 アヤメの健康意識の高さ
アヤメは昼食後、歯をきっちりと磨いていた。
「アヤメちゃん、とっても律儀だね」
「虫歯をつくってしまったら、歯医者を利用する必要が生じる。歯科医に行くことで、アイドル活動の時間を大量に奪われることになるよ」
歯医者通い=無駄なコスト。アヤメはそのように考えていると思われる。
「虫歯になるようなアイドルは、真の一流アイドルとはいわないよ」
食事だけでなく、歯についても厳しい。超一流アイドルは、妥協を許さない。
アヤメは糸ようじみたいなものを取り出す。
「歯を磨いたあとは、歯間ブラシで歯垢を除去するの。歯の中にある汚れを、少しでも取っておきたい」
アヤメは歯間ブラシで、歯垢を除去する。汚れを残さないように、念入りに行っていた。
「これくらいやれば、歯の汚れはなくなっているね」
使い終わった歯間ブラシは、ゴミ箱へと捨てられていく。
「ミサキちゃん、どうかしたの?」
「私には想像もつかない生活だったから・・・・・・・」
「アイドルをやっているうちだけだよ。アイドルを卒業したら、ラフに生活するつもり」
アヤメはストレッチの体勢を作る。
「ミサキちゃん、ストレッチを手伝ってほしい」
「ストレッチの手伝い?」
「柔軟体操をするので、後ろから押してほしい」
「わかった」
ミサキは背中をゆっくりと押す。トップアイドルの背中は、ふんわりとしていた。
「ミサキちゃん、ありがとう」
アヤメの体はとっても柔らかく、関節が外れているかのようだった。ミサキはどんなに努力を
重ねても、絶対に届かないと思われる。
アヤメは念入りに、柔軟体操を続ける。自分の体を守ろうとする姿勢は、こちらにもはっきり
と伝わってきた。
「昼のストレッチはこれで終わりだね」
今日のストレッチではなく、昼のストレッチといっていた。朝、夜にも、ストレッチをするのだろうか。
「朝、夜もストレッチをするの?」
「うん。朝、昼、夜で効果が違うの。すべてを取り入れることで、アイドルとしての体を保っていきたい」
健康を維持するために、やれることはすべてやる。アヤメという女性は、完璧主義なのかなと思ってしまった。