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第2章の第26話 逆襲! 怒りのポテンシャル


(スバル、君を救うのは僕だ!!)
僕はその小さな手を伸ばし、スバルの手を掴んだ。
必ず助けるから。
その瞬間、辺り一帯に光が走った。
スバルとLがいたところに光の球体が出現し。
その光が弾け飛ぶ、現れたるは、彩雲の騎士エルスだ。
「「……許せない。僕は完全に怒ったぞ――っ!!! クゥアアアアア!!!」」

その身からオーラが迸(ほとばし)る。それはまるで嵐のようだ。
併せて今までエルスが見せた事がなかった。尾と羽が幻影的に見えた。
(……何だ!?)
レグドはエルスの逆鱗に触れてしまったのだ。
その尾に集束、畜力されるのはエナジーアだ。
1つ、2つ、3つと尾に光が灯っていく。
そして、その嵐が止み。エルスは眼前の敵をギンッと捉えた。
「「『幻影攻勢』ファントムアファンセ(ペセヴェイシィシ・プロスヴィチコス)!!」」
現れたる幻影の数は3体。その容姿はエルスにそっくりだった。
(何だ!? 分身か何かか!?)
(……)
その幻影の一体が駆けだし、攻撃を仕掛ける。
拳を振るって殴り掛かってくる。
「パンチか見え見えだ」
俺はそのパンチの先を、トンと片腕で簡単にいなしてから、カウンターを合わせて反撃する。
炎上爪を叩きこむ。
その瞬間、幻影体の身に閃光が走り……ドォンと爆発した。
「ガッ!」
俺は思わぬ反撃にあい、天を仰いだ。
その時、残り2体の幻影達がその手にエナジーアを集束していた。
そのまま自分達の身を削り、エナジーア波を撃ってきた。
ドドンッと爆発に次ぐ爆発が相次いだ。
そして、その尾に4、5、6、7、8、9と最大9本の尾に光が灯った。
ま、まさかこの攻撃は……。
(テレポート(チルエメテフォート)!)
僕はその場から、レグドの目前まで瞬時に瞬間移動した。
俺は、目の前にいる屈んだエルスを見て驚いた。ま。
「まさか」
「「『九重(エンネアソロス)エナジーア波』!!!」」
9つの尾が光る。
僕は突き出した掌から九重のエナジーア波を解き放った。
ゴォオオオオオと音を立てて迫りくる『九重(エンネアソロス)エナジーア波』。それは二重螺旋を描く。それは無属性と氷属性を表していた。
「こっこれは!!」
迫りくる。
「おっ」
迫りくる
「おおおおお!!!」
お、俺は畏怖と恐怖を覚え、それに抗うように手を突き出して、受け止めようしたが――抗う事もできず、そのまま吞み込まれていく。
ドォオオオオオンと冷凍洞窟の方へ飛んでいく。
僕は、『九重(エンネアソロス)エナジーア波』を放出続ける。
「「はぁあああああ!! 消えてなくなれ――ッ!!」」
エルスの怒りに呼応するようにエナジーアのパワーがドォンと膨れ上がった。
それはエナジーア波の波を伝い先端部へ送られる。
俺は『九重(エンネアソロス)エナジーア波』に圧され、冷凍洞窟の壁、ガラス張りの洋館の鏡壁を何枚も割り、メリーゴーランドの馬を破壊し、乗物バイキングの船を破壊しながら、
スペースランドのその奥へ爆進する。
「ウォオオオオオ」
遅れて『九重(エンネアソロス)エナジーア波』の波を伝い先端部達し膨れ上がる。それは孔雀狐の顔に似ていた、それに呑まれる。
――キルロロロロロと意志を持ったかの如く、それが鳴いた。
そして、ドォオオオオオンと大爆発。
その爆風と爆煙がスペースランドに嵐のように吹きつける。
「「……ッッ」」
僕は勢いよくその場から駆けだした。
追い打ちだ。
スペースランドを抜け抜け、暗いエリアに入った。


――そこは映画館だった。
今、映画館で上映されていたのは、地球防衛隊が悪の侵略者宇宙人から、地球を護るという物語だった。
だが、そんな上映などまるでお構いなしに、土足で踏み入った者がいた。
倒れた俺は顔を左右に振って、どうにか意識を繋ぎ止める。
その直後、怒る孔雀狐が急襲にきた。
ガッとその顔面を捕まれ、幾つもの映画館の座席を壊しながら突き進む、ドガガガガガッと。
「「やあっ!!」」
僕は力いっぱいレグドをボウリングの球のように放り、斜め下から突き上げるようにドガガガガガッと各座席を壊していった。
さらに追い打ちは続く。
僕はその場から勢いよく駆け出し。その掌からエナジーア波を連続で撃ち込む。
1条、2条、3条、4条、5条、それは迫りくるエナジーア波の軌跡だった。
それは各座席を破壊しながら、レグドに迫り、光の雨を降らせた。
「おおおおお!!!」
そしてそのまま壁を破壊し、次のエリアへ。

――そこは観葉植物があり、温水プールが流れているレジャー施設だった。
その外壁が壊れ、1体、2体と侵入してきたものがいた。レグドとエルスだ。
「ハァ……ハァ……」
「「……」」
呼気を整えるレグド。
それを宙から見下すエルス。
「中々のパワーとスピードだ!!」
俺は立ち上がった。
「だが、これならどうだ!! 『堕威炎戒』!!!」
俺達を中心とした炎の輪が広がった。
ゴォウゴォウと炎が燃え盛る。
「「これが何だ?」」
「これで終わりだと思うなよ――っ!! 獅子隷属!!」
と次々と炎の輪から炎獣達が生まれてきた。
「「「「「「「「「「ウォーン」」」」」」」」」」
その数10匹だ。
「我が力となれ!! 獅子隷属達よ!!」
その瞬間、エルスの幻影の翼が光を放った。
そのたくさんの模様から、光線が次々と照射され、炎獣達を屠っていったのだ。
これにはレグドも驚き、呆けてしまう。
「なっ!?」
ドガッと強烈な蹴りを宙から叩きこんだ。
蹴り飛ばされたレグドは、まるで水切り石のように何度も跳ねて、ザバァンと流れる温水プールに沈んだ。
「「まだ、わかってないようだね……」」
エルスは、いやそのLの口調が変わっていた。
スバルが死にかけ、その逆鱗に触れてしまったからだ。
流れる温水プールの中からレグドが姿を現した。その手を高床に伸ばし、バシャッと身を打ち上げる。
「ハァッハァッ」
(ど、どうなってる!? 俺は戦う前に調べたはずだ!! 奴の戦闘力はたったの1000だったはずだ!! い、怒りで5000まで上がってる!?)
宙から降りてくるエルス。エルスはそのままレグドの手の前に降り立った。
その手をドンッと踏みつけ、その顔面にエナジーア弾を連射射撃する。
――ドッドッドッドッドッ
被弾する被弾する被弾する。
連続射撃をしながらエルスは会話を飛ばしてきた。
「「戦う前に殺意を持てといったな!?」」
「あぅ……グググッ」
俺はもう片方の手で、炎上爪を放ち、奴の足を狙った。
だが、バリア(エンセルト)で阻まれた。
い、いや……これはエンセルトか。
立ち昇る湯気が、蒸気が、オーラが揺らめいていた。
「こ、これはバリア(エンセルト)か!?」
「「もう謝っても、許す気はないよ」」
僕はこの踏みつけている腕に狙いを定めた。
「「バトルカード『脇差』!!」」
それはスバルの意図も介さず、施行された。。
バトルカード『脇差』をバリアで覆い、エナジーアを流すことによって生成した。
「お、おい、何をする気だ!!?」

「「この腕ももらっていく!!」」

「じょ、冗談もほどほどにしろよ!!」
その脇差を振り上げ、その腕目がけ振り下ろした。
「ギャッ!!」
ザクッとその腕から音が鳴る。噴き出すのはエナジーアの粒子だ。だが、一振りでは切れなかった。
「アアアアア!! こっこの!!」
俺はエルスの顔面目掛け炎上爪を放った。
だが、その揺らめくオーラによって搔き消された。
「ッッ!!」
やはりバリア(エンセルト)ではない。こっこれは
ザクッ
「アアアアア!!」
ザクッ
「ア……アアアアア!!!」
エルスは浮かべていけない顔を浮かべようとしていた。
「「中々切れないなァ……!」」
ザクッ
「ッッ」
顔をしかめるレグド。
その剣を再び上げて、振り下ろすエルス。その動作の繰り返しだ。
その時だった。
ビタッとまるでエルスの意志に反するように、切り傷を負わされた腕の前で、その一振りが止められた。
それどころかブルブルと剣を震わせながら、自分の目の前に持ってきたのだ。
これは明らかに、少年が意識を取り戻した事を示唆していた。
そのエルスの精神世界にて
(な、何やってるんだ!! これはチャンスなんだよっ!!)
(ダメだ!! やらせない!!)
(……ッッ)
(君の手は汚しちゃいけない。汚すなら僕の手だけで充分だ!)
スバルはあの時の事を思い出していた。悔いていた。
まだやりようはあったはずだからだ。
だが、あの命の際に立って、どうしようもない状況だった。そのもしかしたらが頭から離れないのだ。
厄災の混濁獣をぶった切り、その中にあった人の形を象った炎の核。
その左腕をぶった切る時、この少年はシシドに謝っていた。いや、許さなくていい謝罪だった。
(君の手は汚させない。王女に合わせる顔がないからね)
エルスはだら~んとその剣を下ろした。
(それに、人殺しなったらそもそも開拓者(プロトニア)試験を受けられないからね。それじゃあ困るんだよッッ!!)
(……わかったよ!)
(……)
スバルはほっと一安心した。
――その時だった。
ドォンと床が爆砕されて、空いた穴の中にレグドが身を投じていった。
その穴に中に温水プールの水がザァザァと音を立てて吸い込まれていく。
「しまった! 逃げられた!」
(もう何やってんの!!)
「「ととっ!」」
エルスは、眼下に見える穴を覗き込んだ。
穴の中から、ドガァン、ドガァンという壁や床を壊す音が聞こえてきた。相当荒れてるな。
僕は『危機感知能力』クライシスサーチング(クリシィエクスベルシーフォラス)を広げた。
いる、この下だ。
(後少しだ! さあ行こう!)
エルス(僕)はその穴の中に身を投じていった――


☆彡
その光景を見ている人達がいた。
チアキは自身の水晶玉で詳細に見ていた。
「どうなることやと思うたんけど……何とか一戦踏み込えたやなぁ……もう、ハラハラドキドキさせんなや……」
もうあたしは一安心し嘆息した。
その水晶玉には、穴の中を降りていくエルスの姿があった。


クリスティは一面黒雲に映る、その映像を注視していた。
「すごい子だったんだ……チィッ」
あたしは指をパチンと鳴らした。もちろん、悔しさからだ。
「こんな事ならもっと積極的に攻めるんだった」
それは後悔の念からか、クリスティが動いたとき、その超乳が揺れた。

アユミとクコンはガタガタ、ブルブルと震えていた。無理もないその下着姿では。
目の前には焚き火があって、凍えるその身を温めていた。
あたし達は黒煙に映る、その映像を見上げていた。
「がが、頑張ってるね! スバル君!」
「う、う、うん!」
さ、寒い、本気で凍え死にそうだ。
「で、ででも、腹部を貫かれて、そのまま焼かれて死なないなんて、スバル君も大概変わってるね!?」
「え」
「だ、だだって! 普通なら死んでるんだよ! 魔法だって使うし……あれは魔法使いか何かだよ!」
「……」
スバル君はその一歩で、地球人のその枠組みを踏み越えようとしていた。
いや、もしかしたらもう既に――
冷たい吹雪が吹雪いていた。
さらに戦いは加速する。


☆彡
――スタっとエルス(僕達)が降りた先は、病院の玄関広間(ロビー)だった。
そこは温水プールの水で、水浸しだった。
それだけじゃない。医療用人型アンドロイドが至るところで機能停止していたのだ。
室内は暗く、電気が通っていない事を示唆していた。
さらに所々に持ち主不明の所持品が落ちていた。
そして、ここでも人の気配がない。
(ここでも何かあったみたいだ……)
(上でもそうだったけど、この静止軌道ステーションには人がたくさんいたんでしょ? それがいないっておかしいよね?)
(……んっあれは……)
それはキラーンと光っていた。
僕はそれを手に取って調べてみた。
それは金細工を施したネックレスだった。中央のルビーを加工し何かの紋章らしきものがあった。
それを見たLは。
(こっこれはレオファミリアの紋章だ!)
(レオファミリア!?)
初めて聞くファミリア名だった。
(力こそが正義のファミリアだよ! なるほど……ねぇ)
(?)
Lは1人で納得した様子だった。
(段々とパズルが組みあがってきたぞ……)
(どーゆう事?)
(僕の筋書きはこうだ!
アンドロメダ星から脱出する時、宇宙探査機に忍び込んでいた宇宙人2人は、そのレオファミリアに保護されていたんだ。
そのまま、静止軌道ステーションに奇襲をかけ、某宇宙センターの最高責任者を捕らえた。
だからあの時、あのタイミングで、宇宙の法廷機関の場に乗り込んできたんだ)
(……)
(大手柄ものだったよ! 他のファミリアの話題をさらうぐらい……。
で、そして場面は戻るけど……その最高責任者を捕まえるだけじゃ飽き足らず。この静止軌道ステーションに襲撃をかけて、人と金品を攫っていったんだ。
だから場はあんなに荒れていた。
あそこは荒っぽい人達が多いくらいだからね。
レオファミリア。それは、力こそが正義のファミリアだ! 何でもありだ!
今頃、捕まった人達はどんな扱いを受けているのやら……」
(……ここには気が強そうな人達が大勢いたからね。プライドだって高い……! 僕だってムカつくぐらいの大金持ちだ!
だから、それ故か、かえって世界の名高る大富豪なだけに少なからず死傷者がでているのかも……。……見せしめか!)
僕達はどちらからともなく、うんと頷いた。
おそらく、ここまでの大筋は当たりだろう。
さすがLだ、賢い。
(よくわかったねそんなこと)
(姫姉が毛嫌いしていたファミリアの1つだからね。でも、参ったな……)
(?)
(話し合いだけで、穏便に済まなくなってきた)
(あ!!)
僕はなんとなくわかってしまった。
今後、これはファミリア間の大きな問題に直結しそうだった。
(人質だよこれ……! もう多分、難民なんて扱いを受けていない)
(……ッッ)
僕は歯がゆい思いをした。
(後でアンドロメダ王女様に相談しよう!!)
これにはLもうんと頷いたのだった。
でも、これですっきりした。


――僕達はこの病院内を歩み出した。
辺りは暗く、ヒンヤリしていた。今にもお化けが出てきそうな気配だった。
エルスはふわふわと浮遊移動する。
途中で分かれ道に出たが。
(こっちだ)
『危機感知能力』クライシスサーチング(クリシィエクスベルシーフォラス)を持つエルスの前では迷いなく、その道を正確に示す。
その時、足元にクマちゃんのぬいぐるみが転がっていた。
僕はそのぬいぐるみを見て。
サイコキネシス(プシキキニシス)にて念移動で、フワリとその手に取った。
「……ッッ。必ず助けるからね!」
エルスはその額にクマちゃんぬいぐるみを押し当てて、誓いを立てた。
Lは何も言えなかった。
言えるはずもない、それは相当難しいことを。


――その時だ。
通路の奥から爆炎流が迫ってきたのは。
僕はすぐに横にあった病室に逃げ込んで、やり過ごした。
(またこれか!)
(こちらからも反撃しようよ!)
(よしっ!)
僕はすぐに行動に移した。
病室から抜け出して、エナジーア波を撃つ、撃つ、撃つ。合計3条のエナジーア波だ。
そのまま通路伝いに飛んでいくエナジーア波。
僕はその場で、手を器用に動かして、操作した。
エルスの脳内には地図データがあった。
スバルの持つ『危機感知能力』クライシスサーチング(クリシィエクスベルシーフォラス)を、Lがサイコキネシス(プシキキニシス)増幅したものだ。
この狭い通路内において、エナジーア波(それ)はまるで意思を持ったかの如く、曲がり角を曲がる、曲がる、曲がる。
そして――
((捉えた!))
「「ハアッ!!」」
僕はその手を勢いよく振り下ろす。
「なっ!?」
俺は驚いた。
そのエナジーア波は一切の迷いなく、俺の背後から奇襲を仕掛け直撃したからだ。
「ぐあっ!!」
ドォンと通路内で爆発が起こった。
確かな手応えをエルスは感じ取った。
「よしっ! いけるっ!」
(どんどん、行くよーっ!)
僕達は通路を駆けながら、エナジーア波をドンドン撃つ。さっきと同じ3条のエナジーア波だ。
その通路の先。
レグドはまさかという思いで、距離を取っていた。
完全に立場が逆転していた。
(まさかあいつ等! 見えているのか!?)
と通路の向こうから、まるで意思を持ったかの如くエナジーア波が迫ってきた。
間違いない、通路に合わせて軌道が曲がっている。
さっきみたいな被弾はごめん被る。
「飛来炎上爪!」
と俺は飛来炎上爪を飛ばし、3条のうち2条を潰した。
残る一条はその燃ゆる炎上爪を直接振るい、潰してやった。
そのやられた感覚をエルスは感じ取った。
「「防がられた!!」」
僕は何のこれしきとばかりに、また3条のエナジーア波を撃った。
3条のエナジーア波は、通路の曲がり角に合わせて軌道を変えていき、レグルスに迫るが。
「フンッ」
レグドは自身の爪を燃え上がらせて、炎上爪にてその3条のエナジーア波を難なく潰した。
ここであることに気づく。
(コントロールできるのは3条までか……!)
レグルス(俺)はそう睨んだ。
無理もない、この通路はいくらか曲がり角がある。
角が多ければそれだけ、コントロールが求められて、その条数もおのずと狭まってくるからだ。
まぁやろうと思えば、10発は軽く打てるだろうが……廊下や壁、天井を破壊するのは目に見えている。
かと言って、単発にエナジーアを注ごうが……。
「「……」」
レグドがそんな事を思っているとき。
いくつもの通路が曲がりくねった先にいるエルスは、その掌にエナジーアを集束、畜力していた。
それは普通に打つよりも、大きなエナジーアの球だ。それを掌に留めている状態だった、が。
「「ハアッ!!」」
エルスは高めた大きめのエナジーア波を撃った。
それはいくつもの通路が曲がりくねった先にいるレグドを捉えていた。
やはり、撃ってきたかエルス。
ものは試しだよな。だが、それは無駄なあがきだ。
俺はそれを両手で受け止める。
「ヌグググッ、ハアッ!!」
受け止めていた俺は、その軌道を真上に弾いた。
大きめのエナジーア波は、天井に穴を空けて、いくつもの天井の壁を破壊しながら突き進み、ドォオオオオオンと爆発が生じたのだった。
その空いた天井部から爆風が吹きつけられた。


――エルス、レグドの知らないところで、監禁されたロボット達がいた。
それは偶然にも床に地響き生じ、それが迫るたびに地響きが強まっていった。
そして、この部屋の隣で爆音が生じたのだ。
ドォオオオオオン
それはこの監禁された、クローズされた部屋の電子錠を破壊し、扉を破壊するほどの勢いだった。
「なっなんや!? 爆発かいな!?」
それは爆煙の影に隠れてシルエットにしかわからないが、上半身は人型で下半身は魚の尾が生えていた。まるで人魚のようだ。
この声質、口ぶりからして女性だろう。
だがこの時、エルスが気づかないことから、それは人ではない、おそらくスペースバルーンマンと同じロボットだと思われる。
そもそも位置的にも、明らかに上の階にいる。
その人物は、何かにあい、今までこうして捕まっていたのだった。
それは1人だけではない、この部屋にはいくつかのロボットの影があって、その息を潜めていたのだった。


その後、何条ものエナジーア波を投じるエルス。
その破壊行為により、下の階の方で爆撃音が轟いていた。はっきり言って物騒でしかない。
その監禁されていたシルエットは怯えていた。
段々とその破壊行為が無駄撃ちに思えてきたエルス。
(クソッ、すべて避けられるか防げられる。これじゃあ無駄遣いだ……!)
続けざまに3条のエナジーア波を撃つエルス、それはこれ以上は無駄だと判断し、その撃とうとしていた手からエナジーアを留めた。
その時、Lの案が飛ぶ。
(なら、頭を使おうよ!)
それもそうだ。
とエルスは第一手術室に入り、エナジーア波を放ち、壁を破壊した。
そのままエナジーア波が壁伝いをドンドンと壊し、分かれ道に出た。
「「そこだあ!!」」
エルスは器用に手を動かし、エナジーア波を操作。
通路を突き進んでいたレグドは、真正面からそれを喰らうハメになった。
「何ッ!?」
ドンッと被弾した。
さらに追加で二条被弾した。
「がっ!!」
俺はのけぞり、たたら足を踏んだ。
(か、確実にこっちの位置を補足してやがる!! Lめ! そんな能力まで開花していたのか!?)
断じて違う。
それはスバルの能力であった。あくまでLのはそのサポートだった。
さらにエナジーア波が迫る。
「クッ! クソッ!!」
俺は炎上爪にエナジーアを込める、集束、畜力させる。
エナジーア波が迫る。
俺をそれを最小限の動きで避けて、避けて、もう片方の炎上爪で潰した。
だが、その時ズキッと痛みが走り、顔をしかめた。
「グッ……!!」
あの時、エルス(L)にザクッザクッやられた腕の痛みが訴えやがったか。
そして、炎上爪が炎を上げて、爆華炎上爪完成の合図を報せた。
「爆華炎上爪!!」
それを一振りした。
廊下伝いに迫るは爆炎流だ。
それはエルス(僕達)真正面からきた。
だが、慌てることなくバリア(エンセルト)を張って、ドォンと耐え凌いだ。
エンセルトがパリンと砕け散る。凌ぎ切った。
エルス(僕達)はさらに進む。
そこは爆炎と爆煙が上がっていた。
「「……」」
僕達は1歩歩み出した。
その渡り廊下にはまた穴が開いていた。
いる、この真下に。とうとう追い詰めたぞ。
(――行こう! これが最後のバトルだ!!)
エルス(僕達)は、その床穴に身を投じていった――



【玄関広間(ロビー)】
――そして、その階の床にスタッと着地を決めるエルス。
僕達の前に広がったのは、凄然とした玄関広間だった。
天井には豪華なシャンデリアがあり、ステンドグラスがそれを引き立てている。
壁面には一面窓ガラス張りがあり、大きな穴が開いていた。ここからも侵入の出入りの形跡があった。
次の階へと渡る螺旋階段もしくはエレベーターが備え付けられ、
各場所には壊れた観葉植物、床には荒らされたレッドカーペット。
そしてここは他と違い、壊れたアンドロイドを始め、人間の警備隊の人達が争ったのか亡骸が浮いていた。もう腐敗が始まっている。
明らかに何かにあって、荒らされた後だ。
受付(フロント)には人の気配がなく、殺風景で、
室内は電気が落とされて、フワッと物が無重力で浮いている状態だ。
「「……」」
とそこに大きな炎が現れた。
いや、炎ではない、それは災禍の獣士レグドであった。
「「……これをやったのはお前か?」」
「いや違う。俺が来る前からこうだった」
僕は今までの疑問を解消するため、あえてその質問を投げかけた。
だが返ってきたのは、それはレグドがやったことではないことを示唆していた。
「……さあ、そろそろ始めようか」
「「……」」
僕は頷いて答えた。
レグドが構えを取り、
エルスも構えを取った。
両者眼光が鋭く、
ジリジリと足を動かした。
その足運びは妙で時計周りに回転しながら、両者助走を取るためにやや後退気味だった。
「「……」」
「……」
それはロビーの向かいにあった小さな滝であった。象っているのは人類の文明の発展を祝う富と名声を込めてドラゴンを模していた。だが、その口から今は水は出ていない……。
ただ、ふわふわと浮く一滴の水があった。
それが天井のステンドグラスに吸い込まれていき、ピチョンと試合開始のゴングを鳴らした。
両者同時にエナジーア波、炎上爪を打ち合い、その相中で爆発が起きたのだった。


TO BE CONTIUND……

しおり