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第2章の第25話 スペースランドの戦い! VSスペースバルーンマン!?



「――ッッ」
僕達は覚悟を決めた。
一番初めに飛び出したのは、災禍の獣士レグドであった。

繰り出すは燃える爪、炎上爪だ。
対するエルスは「バリア(エンセルト!)」を張った。
そのエンセルトに炎上爪がぶつかり、パリンと砕け散った。
災禍の獣士が懐に入ってきた、チャンスだ。
エルス(僕)は、その拳にサイコキネシス(プシキキニシス)を纏い、下から上に突き上げた。アッパーだ。
俺は、もう片方の炎上爪を振り下ろし、これに対抗した。
上から振り下ろす炎上爪と下から捲り上げるプシキキニシスのアッパーがぶつかり合う。
ドォンと宇宙空間で衝撃波が起った。
続けて攻撃の勢いを続ける。
エルスはプシキキニシスを纏った拳を、突き上げる、突き上げる。
レグドは炎上爪を、振り下ろす、振り下ろす。
そして、両者同時に蹴り技を繰り出し、その技が交差し合い、衝撃波がドォンと起った。
エルスは衝撃波と蹴り圧に負け、そのまま体勢を崩す。
レグドも衝撃波と蹴り圧に負け、宇宙空間に弾き飛ばされた。だが、その宇宙空間でも体勢を立て直す。
両者の眼光が光る。
「「くぁあああああ」」
「はぁあああああ」
エルスは掌大のエナジーア弾を連続で放ち。
レグドはその燃える爪を振るい、飛来炎上爪を連続で飛ばしてきた。
斜め下から突き上げるようにエナジーア弾が連続で迫り。
斜め上から投じられるように飛来炎上爪が連続で迫りくる。
その相中でドォンドォンドォンと両者の業がぶつかり合う。光と炎のせめぎ合いが始まった。
「「くぁあああああ」」
「はぁあああああ」
押しつ、押されつの激しい攻防戦が続く。
「「あああああ」」
その時、ズキッとレグドが顔をしかめた。
当然だ、無理を押してこの場に来ているのだから。
エルスの連続エナジーア弾が盛り返した。
一転して窮地に立たされたレグドは――
「はぁあああああ」
連続射撃ができないのなら、単発最強の一撃を与えてやる。
俺は右手の炎上爪にエナジーアを集束、畜力させる。
そして、連続射撃のエナジーア弾が目前まで迫ったところで、それを解放した。
「『飛来爆華炎上爪!!!』」
ドンッと一振りし、爆発の華を咲かせた。
数々のエナジーア弾を小爆発させながら迫りくるそれは、飛来爆華炎上爪だ。
この攻撃を受けてはマズイ。瞬時に悟った僕は、大きく後ろに飛んで躱した。
そのまま飛来爆華炎上爪は、静止軌道ステーションの外壁を破壊し、天井部から室内へ侵入し、爆発の火炎が立ち昇る。
噴き上がる炎と噴き上がる酸素。
それを認めたエルスは駆けだし、その炎の中に身を投じ、静止軌道ステーションの中へ入っていった。
その際エルスは、我が身にバリア(エンセルト)を纏っていた。
それを宇宙空間から見下ろしていたレグドは、一度笑い。
エルスと同じ行動を辿るように炎の中へ身を投じたのだった。


宙をかけるエルスは、渡り廊下を高速移動していた。
思ってたよりも室内は明かりが灯っていた。
僕はここに来る際、真っ暗闇での戦いを想定していた。
なぜならそれは、あの時地球は、アンドロメダ王女の攻撃を受け、ライフラインを絶たれていたからだ。
だがここは、静止軌道ステーション。宇宙空間にあった。
これは、地球と静止軌道ステーションの発電設備が独立しているためで、まだ稼働していることを示唆していた。
明かりが灯っていれば、当然そこには酸素があった。
僕はここにきて笑った。
大丈夫だ、ここで万が一レグドを倒しても、エナジーア変換が解け分離した際、シシド君が無呼吸で死ぬ心配はない。
なら、戦えると。
と正面に防火扉があった。
「「はあ!」」
僕は掌からエナジーア波を先行して飛ばし、その防火扉を破壊し、さらにその先へ突き進む。
そして、渡り廊下伝いに防火扉があった。
僕はそれをまたエナジーア波を先行して飛ばし、その防火扉を破壊し、さらに突き進む。
また、防火扉があった。
僕はそれを1回、2回、3回、4回と破壊し突き進む。
そして、妙な光景を目の当たりにした。
僕はここで一度立ち止まる。それは――
「「――何だこれは……っ!!」」
それは、窓ガラスが所々割れ、渡り廊下に散乱していた様子だった。
渡り廊下内にあった酸素は全て、宇宙空間へ逃げ、ここは真空の状態である。
さらに渡り廊下には、首を絞めて死んでいった人達の亡骸が転がっていた。
「「ここで、何かあったのか……!?」」
と、その後ろから炎が迫ってきた。
奴か、その場で縫いつけられていた僕は、再び高速移動で渡り廊下をかける。
(何だ!? 何があったんだ!?)
僕の頭の中で焦燥が駆け巡る。
(奴か、レグルスがここへやってきてやったのか? ダメだわからない……ッッ)
後ろから迫る爆炎。
そして、前方から突如として、爆炎が迫ってきた。
「「おっとっと!」」
僕は前方の爆炎流(虎)、後方の爆炎流(狼)に挟み打ち合った。
まさに前門の虎、後門の狼の様相だ。
僕は首を左右に見やった。ダメだ挟まれた。
だがここは、渡り廊下伝いであり、窓際から反対側にはいくつもの部屋が設けられていた。
(いけるか!?)
エルス(僕達)は掌大のエナジーア弾を撃ち、その扉を破壊し、室内に半ば無理やり侵入する。
そこでもまた僕は、エナジーア弾を連続で撃ち続け、道がないなら作ることにした。
室内に壁穴を連続で開け、ないなら道を作っていく。
そして、先ほどまで僕達がいた渡り廊下伝いで爆炎流がドォンとぶつかり、僕達が開けた室内へと侵入してきた。
追いかけっこが始まった。
連続でエナジーア弾を撃ち、新たに道を作っていく僕に対し。
あちらは爆炎流の勢いで迫ってくるのだ。
「「はあああああ」」
連続でエナジーア弾を撃ち続ける。
「「はあああああ」」
連続でエナジーア弾を撃ち続ける。
「「はぁああああ」」
連続でエナジーア弾を撃ち続けた僕は、左右に分かれた道に出た。占めた。
僕はその道に躍り出る前、エナジーア弾からエナジーア波に切り替えて撃った。エナジーア波は新たに道を作るため、壁穴を破壊しながら突き進んでいった。
僕は左右に分かれた道に躍り出た。
遅れて爆炎流がゴォオオオオオと音を立てて、向かいの部屋に突き進んでいった。
た、助かった。
エルス(僕達)はその光景を横から見ていた。
(危なかったね)
(うん)


☆彡
――僕達はトボトボと歩いていた。
(どうやらここは住居スペースのようだね)
(そう言えばTVで見たことあるな。静止軌道ステーションには大きく分けて、ホテルと娯楽施設と病院があるって! どうやらここは……)
(うん、ホテルみたいだね)
(……)
僕達はその幾つもの設けられた部屋扉を見た。
そして、不意にこうLが訪ねてきた。
(君がファミリアを立ち上げて王様になったら、彼女さんをここに連れ込んでくるといいよ。心も体も開放的になりそうだからね)
「ブッ!!」
エルスの精神世界で、隣にいたLはとんでもない事を言ってきた。Lの一計に、エルスは噴き出したのだった。
(いや、僕とアユミはまだ……!)
(ここで、初夜を送るのもいいかも……)
(しょ、初夜って……!)
それは端的に僕とアユミが結婚して、初めて行う夜の出来事である。いわゆる性行為のことを差す。
「うあぁ……はぅぅぅ……」
エルスは端から見れば、1人でに頬を赤らめ、その体をモジモジとしていたようだった。見ているこっちが恥ずかしい。
だが、今は戦闘中だった。
「「――!」」
その時、スバルの『危機感知能力』クライシスサーチング(クリシィエクスベルシーフォラス)が反応を示した。
エリア中央にある赤い点は、僕達のことを指し示し、いくつもの黒い点は、レグドや炎獣達を示していた。
(どうやら来たみたいだね)
(蹴散らしていくよ)
僕達は軽口を叩くのをやめ、こちらから炎獣達を潰しにいった。
渡り廊下にて。炎獣に見つかる前にエナジーア波で攻撃し、その光の中で炎獣は光滅した。
次に室内にて。2匹の炎獣を発見し、交戦になる前にエナジーア弾を連続射撃し、その炎をかき消した。
次にトイレには。1匹の炎獣を発見し、遠くからエナジーア波で狙撃し、その光波の中で炎獣は光滅した。


――次にドリンクカウンターバー前にて。3匹の炎獣を発見したものの、あちらが先にこちらに気づき襲い掛かってきた。
僕達は交戦に入った。
「バトルカード! 『小太刀』! でやぁ!!」
取り出したのは1枚バトルカード『小太刀』。
エルスはそれをバリア(エンセルト)で覆い、エナジーアを流し込むことによって、『小太刀』を生成したのだった。
それを構え、まさに電光石火一閃。
瞬く間にエルスは、炎獣達を切り捨ててみせた。炎獣達を形作っていたその炎がかき消した。
「ふぅ……」
エルスは一息ついた。
(ここはドリンクカウンターバー前か……。うわぁすごい値段……! こっちではミルク200円が2000円相当もするよ!)
(すごい単価の上がり方だよね……。でもここまで運搬費用やその他のコストもかかるから、むしろ当たり前ともいえるよね!? 良かったね! 利用する前にこれて!)
正直、このお値段なら一般庶民である僕は願い下げだ。これには僕も憤る。
(来ること前提かっ!!」
で、でも、そこはやっぱり将来的にお金を溜めさえすれば。
「……まぁいつかは考えてもいいかも……と!)
(お!)
エルスはついニヤけていた。
(……)
正直、だらしがない。今は戦闘中の身だ。
それを攻撃を仕掛けるチャンスと捉えた者がいた。
それは、隠れていた炎獣だった。
僕達はそれを、下から捲り上げるようにして『小太刀』を振るい、半分に切り捨てた。
しかも、その炎獣はミルクを咥えていたので、切り捨てた際、取りこぼしたんだ。
ふわぁと浮遊するミルク瓶。
エルスそれをキャッチした。
エルスは『高級ミルク』をゲットした。
さらに辺りをよく見てみれば、『高級ミルク』や『各種ドリンク』、いかにも『高級そうなお酒』が散乱し、宙にふよふよと浮いていた。
それは見て、僕は口を零した。
「「え……まさか……! 炎獣達はこれを飲んでたのか……なんて贅沢なっ!!」」
(少しくらい、彼女さん達に持って帰ろうか? 地球産の飲み物なんて、アンドロメダ星に帰ったらとても貴重だよ!)
「「……ごめんなさい。少し分けてもらいます」」
エルスは手を合わせて謝り。
今後の自分達のために『高級ミルク』他を手に入れたのだった。
(やったね! じゃあ次行こうか!)
頷くエルス。
エルスはちゃっかりしていたのだった。


――そこは当問題の発祥の地、結婚式場だった。
炎獣達はそこをたむろしていた。その数13匹。
何匹もの炎獣が「ウウッ!!」と唸り。「ウォ――ン!!!」と吠えて、襲い掛かってきた。
この数を僕はバリア(エンセルト)を張るのはマズイと判断した。
後手後手に回っては危険だ。なら攻勢しかない。
僕達は懐からバトルカード『フラワーバルカン』を取り出し、バリア(エンセルト)で覆い、エナジーアを流し込むことによって、『フラワーバルカン』を生成したのだった。
それを構え、連続射撃。
襲い掛かってきた炎獣達を屠っていく。
その時、エルスの直上にはシャンデリアがあり、その上に乗っていたのは炎獣だった。
炎獣は火炎放射を吹き、シャンデリアを吊るしてあった鎖を焼き切って、シャンデリアを落としてきた。
重力の降下に従い落下するシャンデリア。
それが音を立てて、ガシャンと落ちたのだった。
宙に浮く炎獣。したたり顔を浮かべる。
だが、その背後には無事なエルスがいて、『小太刀』を一閃。
その炎獣を切って捨てた。
エルスはそのまま、着地を決めて。
ある技を放つ。
「「ロイ、君の技を借りるよ!! 『クルクルのロイ』!!」」
それはスバルの故AIナビ、ロイの必殺技だった。
僕は、その場で高速回転しながら斬撃を加えていく。
「キャン」
「ウャン」
「ギャン」
1回。
まだ回転は止まらない。
僕はできるだけ集まっている炎獣達目がけ飛んだ。
「!」
「キャゥン」
「バゥン」
2回。
着地と同時にさらに飛ぶ。
それは向かい側のシャンデリアの上にいた炎獣を巻き込み、斬切(ざんせつ)する。
「キャン」
3回。
そのまま天井に着地。レッドカーペット上にいる炎獣目がけ飛ぶ。
「キャガン」
4回。
まだまだ回転は続く。
今度は壁に向かって飛び、壁に壁着する。
5回。
そのまま今度は縦回転に切り替え、飛ぶ。
「「おおおおお!!」」
「!」
6回。
ドォンとレッドカーペット上にいた炎獣に向けて大回転切りを振り下ろし、仕留めると同時に人が入れるくらいの穴を開けた。
その光景を眺めていた炎獣達は、一斉に飛び掛かってきた。
「「フラワーバルカン!!」」
いい的だった。
僕は、フラワーバルカンを構え連続射撃を敢行した。
実を言うと、『クルクルのロイ』は未完成の技で一時的な目眩状態に陥っていた。
それでも敢行した理由は、集団戦闘を避けるためだった。
1匹、2匹、3匹、4匹と仕留めていく。その渦中、最後の1匹に嚙みつかれた。
「ッッ」
その炎獣の体が発光する。自爆狙いだ。
((マズイ))
僕は炎獣(こいつ)を振り払った。爆発する――
「「――バリア(エンセルト)」」
とっさの機転で、スバル(僕)からLに変わり、バリア(エンセルト)張って、その爆発を凌いだ。
「「うわぁあああああ」」
その爆発の中、パリンとバリア(エンセルト)壊れて、どうにか凌いだのだった。
その爆炎が晴れていくと……無事な姿のエルスが立っていた。その顔を拭う。
「フゥ……危なぁ……まさか自爆してくるなんて……)
その精神世界で、また僕達は並ぶ。
(今のは危なかったね)
(ホント、君のバリアには助けられぱなしだよ! それにしてもそのバリアはエンセルトだっけ!? かなり便利だよね! 今度やり方を教えてよ!)
(いいよ。この戦いを切り抜けたらね! それに――開拓者(プロトニア)になる以上、君の身は君で護らないとね!)
(……確かに! でも、仲間の命を守る以上、必要な能力だと思うよ!)
(言えてるー!)
精神世界にて、僕たちは快活の笑みを浮かべる。
「「……」」
エルスは歩み出し、この穴の先を見た。どうやら下の階に続いているようだ。
ただし、その穴から宇宙空間に空気が逃げ出すように勢いよく噴き上げていた。
さらにエルスはこの結婚式場に空いた大きな横穴を見た。そこは本来ならば、一面窓ガラスがあった場所だった。なぜこんなにも大きい横穴が開いているのか、不思議でならなかった。
「「……この結婚式場で何かあったのか……?」」
僕はこの結婚式場の周囲をよく観察した。端的にいうとそれは荒れていた……。それは確実にここで何かあった事を報せていた。
僕は一度目を瞑り考えた。
だが考えたってしょうがなく。
『危機感知能力』クライシスサーチング(クリシィエクスベルシーフォラス)を広げ、災禍の獣士レムドを探した。
どうやらこの階層(フロア)には、いないようだ。いるのはこの下の階層(フロア)からだ。
「「――……考えていたってしょうがない。行こう!」」
僕は、自分が開けた穴に向かって飛び。その身を投じていった――


☆彡
【スペースランド】
スタッとエルスは着地を決めた。
穴の中を通って落ちてきた先は、巨大な遊戯施設であった。
「「まさか、静止軌道ステーションにこんな遊戯施設があるなんて……」」
そこの特徴は、カーボン・ナノファイバー(CNT)と塗布膜を高度に利用した品々が広がっていた。
通路は色彩がとてもよく、色鮮やかだ。
また水道や電気ケーブルやガス管などの重要な埋め込み場所には透明なCNTが使われていた。
遊戯施設もすごい。
冷凍洞窟に幽霊屋敷にガラス張りの洋館、メリーゴーランドにジェットコースターに乗物バイキング、極めつけに観覧車等様々だ。
よくぞこんなに集めたものだ。
そして、僕の目を引いたのは、今にも死にそうな勢いで倒れていく、犬や猫達を発見した。
当然だ、僕達が新しく開けた穴から室内の空気がドンドン抜け出しているのだから。
「ク~ゥン……」
「ニャ~ン……」
犬や猫達はぐったりしていた。
((しまった! まだ生きている動物達がいたのか……!))
僕は辺りを見回した。よく見れば何かがあったのか。帽子やハット、カバンや片方の靴が所々に落ちていた。ここでも何かあったようだ。
「「何があったんだ……ッッ!? ……ッッ」」
その時だ! 観覧車の上から飛び、ここに落ちてきた影があった。
そいつの特徴は大型の人型で、まるでバルーンみたいな奴だった。
「「何だこいつは!?」」
「僕ちんはこのスペースランドの守護神スペースバルーンマンだよ! この宇宙人め、みんなの仇だ!!」

【静止軌道ステーションの管理ロボットたちの長 スペースバルーンマン】
ピエロみたいな顔立ちに、巨漢デブみたいな腹、着ている衣装の色は赤(レッド)だった。

といきなりそいつが、その拳を突き出してきた。
何やってるんだ? そんな遠くから攻撃が届くはずが……。
とドンドンその拳が伸びてきて――
「!」
僕は思わずガードを取った。とそのままその攻撃は、僕の体をすり抜けていった――
「「!?」」
「えっ!?」
スペースバルーンマンは、その双眼に熱センサーを搭載していた。
ピッピッピッとそれが反応する。
「そんなはずはない!? 僕ちんの攻撃がすり抜けたなんて! そんなはずはッッ」
僕ちんはそんなデータ処理を信じられないばかりに首を振った。
「スペース――」
スペースバルーンマンは再び攻撃に移る。その拳をビヨーンと伸ばす。
「バル―――ン」
伸びていく伸びていく。
「パンチ」
伸縮性にとんだ拳を繰り出した。
エルスは一度避けようと思ったが……。
(避ける必要もないよ)
(えっだって)
(いいからいいから)
とLが避ける必要がないからと止めた。
その攻撃は、エルスの体をすり抜けていった――
スバルは(えっ……)と驚き、Lは(ねっ)とその通りの結果になった。
これにはスペースバルーンマンも「えええええ!!!」と目玉が飛び出すくらい驚いた。驚きの機能を備えていた。
「そっそそそんなはずはない!! スペースバルーンマンパンチは天下無敵!! オラァあああああ!! クッ! このこの! えいえい!」
その伸びーるパンチは全て、すり抜ける、すり抜ける、すり抜ける。
「でやぁ!!」
スペースバルーンマンはその場で一回転回り、遠心力を利用した伸びる蹴りを繰り出したが……。
それすらもすり抜けた。
(こっこれは……)
(ねっ……僕達エナジーア生命体には、どんな物理攻撃も効かないんだよ)
「ッッ」
それはとんでもない能力だった。エルスは驚いた。
「くっくっ! このっ! でやあ!!!」
と攻撃をこれでもかと繰り出していたスペースバルーンマンは、ついに攻撃が効かない現実を思い知った。
「こっ……の」
ズ~ンとその場で酷く落ち込んだ。
「シクシク……」
「「なっ……何だかな~~」」

「にやぁん……」

「「ハッ!」」
こうしている間にも、どんどん室内の酸素濃度が薄くなっていくのだ。
猫や犬などは弱り、衰弱していた。
これには僕も可哀そうに思い駆けだした。
その猫ちゃんを抱きかかえた。
「「しっかり……」」
「……」
猫ちゃんは暴れる気力もなく、ぐったりしていた……。
「「…………L、一度、エナジーア変換を解いて」」
(!?)
(僕は地球人だ。人の子として、この苦しみを知って、この場を救いたい!!)
(き、君は馬鹿なの!? 後少しで全ての酸素がなくなるんだよ!!)
(頼む……でなければ、凍った地球を救うなんて、とても夢物語なんだ)
(……ッッ……ッッ勝手にしろ!!)
やむなくエナジーア変換が解け、スバルとLとに分離した。

ギュオオオオオオオオオオ

と天井に空いた穴に室内の全ての空気が奪われていた。
その時、全身がドクンと熱くなり、体の内側から沸騰しているようで息苦しかった。こ、呼吸ができない……。
そ、それに酷く冷たく痛い。何だこれ。
外宇宙の温度、氷点下270度。
スペースランドの設定温度24度。
現在の温度は、氷点下26度ぐらいだろうか。
「ゼェッ……ゼェッ……」
「さあ、わかっただろ!? 人間がこんな過酷な環境下で生きられるものか!」
「……ッッ」
その時、耳もキィーンと耳鳴りがして、Lの声が聞こえ辛くなった。
開いた口もすぐに乾いて、息ができない。
(く、口が乾いて、息ができない)
僕は最後の空気を吸い込もうとしたけど、失敗した。
その時、グラッと体がふらつき、目まいを起こした。それだけじゃない、頭がズキズキし出した。
(こ……これが無酸素症候群というやつか……く、苦しい……ッ)
僕は目を瞑った。
その時、精神世界の向こうで師匠と先生が何か叫んでいる気がした。
「ッッ」
僕は唇をかんだ。意識を繋ぎ止める。

と、スペースバルーンマンはエナジーア変換が解けたスバルの後姿を認めた。
「これはチャンス!! スペースバルーン――」
その拳が伸びーる、伸びーる。
「ダメだ、目の前が2重、3重に歪んで霞む……」
その時、僕の視界が2重、3重に回りながら霞んでいた。赤、緑、青の歪んだ視界だ、こんなの気持ち悪いを通り越して、どうにかなっちゃうそうだ。ひ、非常に危ない状態だ。
その時――
「パンチ」
ドンッと背後から攻撃を受けて、肺から呼気が漏れた。
「がっ! にぎっ!」
僕は前のめりに倒れそうになった。が、足を強く踏み出し、持ちこたえた。
「ゼェッ!」
(今、一瞬意識が飛びかけた! けどこれなら……)
僕は、その手に抱いた猫ちゃんをゆっくり降ろし、あの歌を歌い始めた。
(歌えるんだ)
「チャンス到来! チャンス到来!」
スペースバルーンマンはチャンスとばかりに、隙だらけのスバルの背中を、狙い始めた。
被弾する、被弾する。
「あっ、ぎっ!」
(この痛みが、僕の意識を繋ぎとめる! 歌えスバル! でないと自分も猫ちゃんも、ワンちゃんも死ぬんだぞ!)
これにはLも「あわわわ」と手を口に当てて、慌てていた。
「『氷原を荒べ、1条の氷柱(つらら)』」
僕の目は充血し、涙を流した。
(この1条に、僕達の全てを賭ける!!)
「『我が腕に宿りて』」
吐く息すら白く、その口は凍えていた。
(全ての魔力をこの一撃に乗せる!!)
「【『彼の者を撃て』!!」
僕は我が身を一度抱き、瞳から涙の雫を流し、それが猫ちゃんに落ちる。
(生きたい、僕達は生きたいんだ)
「『氷柱』アイシクル(パゴクリスタロス)!!!」
僕は天を仰ぎ、手をあの空いた穴へ突き上げた。
それは天への願いだった。
地に生きる者達は、『生』への渇望を歌った。
「ニャ~ン」
「ワォーン」
冷気の気流が激しく逆巻く。
それは生きたいという願いだ。
冷気の気流はその願いを乗せ、天を衝いた。
それは太く、長く、地表と空いた穴を塞ぐ、氷柱となった。
これには、先ほどからスバルの後姿を殴っていたスペースバルーンマンも、その攻撃の手をやめた。
「理解不能……原理……ふ、の……う……っ」
それは機能を停止したように、手足をだら~んとしていた。
それは理解不能を超えて、奇跡を目の当たりにし、心という回路をやられたからだ。
「……」
スバルはその意識を繋いでいた。
その顔は、口は、手はしもやけを起こし、小刻みに震えていた。
そして、グラァとその場で倒れた。
Lは「スバル!!」と叫んだ。

精神世界の向こうで師匠が、先生が、「スバル!!」と叫んだ。

そして、スバルの近くで倒れていた猫ちゃんは息を吹き返し、弱ったその足で立った。
よろよろとした足取りで、この功労者の元へ。「ニャ~ン」と声を上げる。
「……」
そして、眠りに落ちかけたスバルの顔をペロッと舐めた。
猫ちゃんの舌はざらざらしていて特徴的だった。
「……」
ペロペロ、ペロペロと。
「……うっ、う~ん……」
と僕は目を開けた。
僕の目に最初に映ったのは、僕の顔を舐めている猫ちゃんの顔だった。
天を塞いだ氷柱が、まるで祝福するようにキラキラとその氷の結晶を降らせた。
それは、僕と猫ちゃんの上に。
そして、それを見ていたLの上にも降っているのだった。
「ニャオ~ン」
「ワォーン」
他の猫ちゃん達やワンちゃん達が生の喜びの声を上げた。


☆彡
その様子を遠くから眺めている者がいた。
災禍の獣士レグドだ。
レグドは、ジェットコースターの上にいた。
「開拓者(プロトニア)にとって、心技体のうち、周りを動かす力……心は合格だ! ……が! あの程度で倒れるようでは体は不合格だ!」
俺は手を目線まで上げ、指をパチンと鳴らした。
その呼びかけに応じ、このスペースランドの至る所で火の手が上がった。
「!」
Lが、スバル付近にいた猫ちゃんが、スペースバルーンマンが、猫とワンちゃんが、そして弱ったスバルがそれに気づいた。
駆ける足。幾多もの足、それは炎獣達の足だった。
これには戦わなければならないばかりに弱ったスバルはそれでも、体に無理を押して立ち上がった。
「そ、そうだよな……」
そして、僕達は囲まれた。
「お前を倒さないと……いけないんだよな。レグド?」
遠くからそれを眺めていたレグドは。
「――さあ、このピンチをどう切り抜ける?」
俺は遠くからこの現場を認めていた。
「くぅう……」
と立ち上がっていたスバルはその場で倒れた。
その体は冷え、疲弊しきっていた。
無理もない。あんな過酷な環境の中、魔法なんて相当体に負荷をかける技をあえて敢行したのだから。
だが、しなければ確実に、心が折れていた。
スバルは安易にエナジーア変換に手を出さず、やり遂げたのだ。
(僕も……君の相棒である以上、こんなピンチは切り抜けないとね)
「スバル! 君は少し休んでなよ! ここは僕が1人で切り抜ける!」
僕も覚悟を決めた。
(僕も、安易にエナジーア変換に頼らない!)
周りを取り囲んでいた炎獣が飛び掛かってきた。
「バリア(エンセルト)!」
僕は周囲にバリアを張った。
飛び掛かってきた炎獣はそれに張り付いた。
「くぁあああああ!!! エナジーア!!!」
そのままエナジーアを込める。
「エンセルト!!!」
それはエナジーアとエンセルトとの合成業だった。
ドォンと周囲にいた炎獣達をまとめて弾き飛ばした。
「キャン」
「ウャン」
「ギャン」
「キャゥン」
「バゥン」
「キャン」
「キャガン」
とやられざまにそれぞれ鳴き声を上げた。
だが、右から足音が、左から足音が、増援の足音が迫ってきた。
さらにやられた炎獣達も次々と起き上がり「ウウッ」と鳴き声を上げる。

「L、お前の能力は防御寄りだ。一撃で屠るにはまだまだ経験不足だぞ!」

「クソーッ!!」
と僕は悔しさが滲み出た。
(自信があったんだけどな……!)
「L……!」
スバルは心配そうな目でLを見た。
(そんな目で見ないでよ。大丈夫……君には指一本たりとも触れさせないから!)
と警戒した炎獣達は一斉に火炎放射を放った。
「バリア(エンセルト)!」
僕はエンセルトを張り、その火炎放射を防いだ。
ゴォオオオオオ
火炎放射の炎の舌がバリアを炙る。
その中では、グングンと熱が上がっていく。
「ニャゥン……」
「……クッ」
スバル(僕)は歯がゆさを感じた。
「あわわわ……これは一体何事なんだ!?」
他所、1人外れたところにいたスペースバルーンマンはその光景を認めた。
何とこんな風に見えていたのだ。
弱ったスバルが猫ちゃんと一緒に閉じ込められ、炎獣達の攻撃からバリアを張り、何とか攻撃を凌いでいる姿を。
ただし、Lは視認できないので、やはり誤った認識だった。
双眼の熱センサーには視認できるが、火炎放射の熱で、やはり見えていない。
なんか残念だ……。
ゴォオオオオオ
その時、天を衝き穴を塞いでいた氷柱が、火炎放射の放射熱により解け始めていた。
氷の表面から雫が流れ始める。
エンセルトの中がグングンと熱量が上がっていき。スバルは汗を流し始めた。あ、熱い、茹だるような暑さだ。僕は汗を拭った。
(マズイな、このままじゃ……でも、どうすれば……!)
(こんな時、ロイならどんな指示を出していた…………ハッ!)
僕は思いついた。それを彼に伝える。
「サイコキネシス(プシキキニシス)だ!」
「!」
「クルクルのロイのように、時計回りに回転させるんだ!!」
「ハッ!」
僕は天啓を得たかのように、彼の指示に従った。
エンセルト、これに今度はプシキキニシスを込める。さらに時計回りに回転運動を加える。
火炎放射が渦に巻き込まれ、次第に火災旋風のようになる。
これを見たスペースバルーンマンは「おっ、おおっ、おおおおお!!」と驚きの声を漏らした。
その姿は、氷の柱に並び立つ、火炎柱のようであった。
「そっ! そのまま打ち下ろせ――ッ!!」
「フッ――いけ――っ!!!」
天を衝いていた火災旋風が意思を得たかの如く、眼下目がけて打ち下ろされた。
その火災旋風の渦は、炎獣達を巻き込み、その炎の渦の中でかき消していった。
僕はこのチャンスを逃さなかった。
前に躍り出て、連続エナジーア弾を撃つ、撃つ、撃つ。
「くぅあああああ」
それは1匹も逃さず、仕留めていく。
その様に驚き、炎獣も逃さず、仕留める。
こいつ等は集まると脅威だ、確実にここで潰す。
そして、最後の1匹が唸り声をあげて、ドンッと仕留められた。
「ハァッハァッ」
Lは、その小さな体で炎獣達を仕留めたのだった。

「L、戦場では殺意を持てといったが……なかなかやるではないか!」

「ハァッ……ハァッ……。勝った!」
僕は勝ったことを実感した。

「――では、次だ!」
俺は更なる試練を与える。
俺は目線の高さまで手を持ち上げて、パチンと指を鳴らした。

するとどうだろうか。
俺の意志に呼応するように、散った炎獣(あいつ等)の炎が呼応し燃え上がったのだ。
それは円形。L達を取り囲むように火の手が上がった。
俺は手を突き出し、こう言い放った。
「『堕威炎戒』!!」
炎が生きているかのように燃え上がり、綺麗な円形を形作る。
そのままジリジリと円の中心部へ向けて、収縮していく。
「さあ、この危機(ピンチ)をどう切り抜ける!?」
バチバチと火炎が燃え盛りながら迫ってくる。それは放射熱だけで、僕達を焼き殺すほどだ。
「あっ、熱い……!」
(クッ、この炎の勢い……ッッ!! あいつ、近くにいるな!! でもどうする!?)
ゴォオオオオオ
と唸り声を上げながら迫ってくる堕威炎戒。
(合成業ぐらいで、この炎の勢い、止められそうにない……ッッ!!)
でも。
「でも、やるしかないよね?」
僕はその小さな手を突き出し。
「くぁあああああ」
全力のバリア(エンセルト)を張った。
堕威炎戒がそれにあたり、ジリジリと炎の舌で焙る。
「エナジーア!!」
僕はエンセルトにエナジーアを加え、強度を底上げする。さらに。
「サイコキネシス(プシキキニシス)!!」
僕はプシキキニシスを加え込める。さらに回転運動も加える。
(こ、これでどうだッ!?)
ジリジリと押されていたエンセルト圧がこの時、拮抗した。
ゴゴゴゴゴ
「ヌグググググ!!」
今、エンセルトの中ではドンドンと気温が上がっていた。
こ、このままじゃマズイ。
「え、L……」
Lはその小さな体で懸命に僕達を護っていた。
こ、ここで。
(ぼ、僕が動かなければ……誰がやる!!)
「うっ、うあああああ!!!」
と地に伏していたスバルは起き上がった。
猫ちゃんも顔を上げて僕の顔を見た。
猫ちゃんの瞳に映ったのは、汗が滴る僕の顔だった。
僕は駆けだし、Lのその隣に並んだ。
「!」
バッとその手を突き出した。
「氷の神! ヘルメスよ!! 僕に力を!!!」
僕は無我夢中で魔法を放った。僕はその手から冷気を放出したんだ。
「す、スバル!! よ、よーし!!」
僕達2人は並んで、徹底抗戦を敢行した。
スバルが内側から冷気のエネルギーを放出し、それが回転中のエンセルトに混ざる。
エンセルト回転中による循環運動だ。
さらに言えば、スバルとLは高いシンクロ率を示していたことも起因する。
有り体に言えば、それは合成業というより、合体業のそれだ。
「うぉおおおおお!!」
「くぅあああああ!!」
猫ちゃんはその場で起き上がり、必死に徹底抗戦する並んだ2人を見て、「ニャオ~ン」と声を上げた。

スペースバルーンマンは見た。
エンセルトの中で必死に抗う少年の姿を。
「……ッッ……ッッ」
その拳を震わせた。
同時に思い知った。先程少年の背後からいいように拳打をお見舞いしていた、己の愚かさを。

拮抗していたエンセルト圧がジリジリと押し出し始めた。
「おおおおお」
「あああああ」
「「ッッ」」
押していく、押していく。そして――
「「くぁあああああ!!!」
2人は一斉に芳(かんば)しい鳳声(声)を上げた。
ドォンと並び立つ2人の気勢に押され、この日、堕威炎戒屈し、その炎の輪を散らした。
辺りにキラキラと舞うのは、氷の結晶と炎の残滓であぅた。

「や、やった!」
スバルが、Lが、油断しその手を下ろした、その時だった。
――ズボッ
「……え……」
スバル(僕)は腹部を見た。
燃える爪が僕の腹部を深々突き刺さっていた。
「ゴフッ……」
「!」
スバルは血反吐を吐いた。
Lは振り返った。
その腹部から生えていたのは燃える腕だった。燃え盛るその体、それは災禍の獣士レグドがやった事だった。
「スバル――!!」
「やはりお前は危険だ!! この場で退場を願おう。ムンッ!!」
メキッ
「あっ」
メキメキ
「あああああ!!!
ドンッ
とその燃える爪が背中から生えた。
そして――
「このまま焼け死ね!! 炎上爪!!!」
その瞬間、ボッと腹部から炎が噴き出し、瞬く間にスバルの体が燃え上がった。
スバルは地獄の業火の苦しみの中、その声を張り上げた。
「うあああああ!!!」


☆彡
その頃、磔になっていたアユミちゃんとクコンさんの両名は、アンドロメダ王女達の手によって解放されていた。
そのアユミちゃんは、天を仰いでいた。
空にはビュオオオオオと吹雪が吹雪いていた。
このアース・ポートから見える、壮大に雄大にそびえ立つ宇宙エレベーターのその先を。
「……」
その時だった。
何の前触れもなく、結んであった靴紐が解け、その方ヒモが千切れていたのだった。
あたしはそれを見て。
「靴紐が……」
「どど、どうしたのアユミちゃん、んん」
あたしもクコンちゃんもこの寒空の下、下着姿で、彼の帰りを待っていた。当然、さささ寒い。
「ううん。なな、なんでもない。ききききっと大丈夫だよね?」
「あ、当たり前でしょ! なんてたってアユミちゃんのボーイフレンドでしょ!」
「……うん」
あたしはもう一度、宇宙エレベーターを見上げて。
「元気な姿で帰ってきてね。あたし待ってるから……」


☆彡
地獄の業火の炎が上がる。
スバルはその炎の中、意識を手放しそうになっていた。「あ……あ……」とその声が聞こえた。
「や、やめろ――っ!!」
「ニャーン!」
Lがその手を伸ばし駆け出す。
猫ちゃんは勇敢にもその炎の死神に向かって飛び掛かるのだった。
「邪魔だ!」
俺は片手間でエナジーア弾を撃ち、L、猫ちゃんに当たり、吹っ飛ばした。
「あうっ!」
「ニャン」
「その場でジッとしていろ!!」
その時、ガッとその腕を捕まれた。
その燃え盛る腕を掴んだのはスバルだ。激痛のあまり、目は赤く充血し、口から吐血していた。
「……ッッ……ッッ」
「どうだ!! 苦しいか苦しいだろうな!! だが開拓者(プロトニア)達の冒険はもっと苦しいんだ!!」
「そ、それでも僕は……僕は……」
その掴んだ腕に力を込める。
「立つんだ!!」
「!?」」
開拓者になる。
ファミリアを立ち上げる。
氷の惑星となる地球だって救う。
「約束したんだ!!」
お前を倒して、アユミちゃんの元へ帰ると。
「だから!! これは!! 死なばもろともじゃないッッ!!」
「!? ぬっ抜けない!!」
魔法の粒子がスバルを中心として集まっていた。ま、まさか――……
「ま、待てっ!!」
「『ガイアグラビティ』(ガイアヴァリィティタァ)!!!」
ズドォンと重力場が重くのしかかる。それは術者も巻き込んでいた。
その刺された腹部から止めどなく、命の血飛沫が噴き出す。
(こ、こいつ死ぬ気か!!)
「うう~~!!」
やっぱり詠唱を経ていない分、パワー不足だった。
だから、足りないその分を補うために、魔力とこの命を燃やす。
僕は、この腕に力を込め、叩きおらんとしていた。
ギシギシとその腕が鳴っていた。
(クッ、このガキ……利き手ごと持っていくつもりか!!)
「うう~~!!」
「うぉおおおおお!!」
俺は腹部から手を引き抜くと同時、エナジーア弾をその腹部目がけ打ち込んだ。
その衝撃と激痛により、このわずわらしい重力場がやんだ。
スバルの体は宙が舞う――
その体から燃え盛る炎が消えていく――
腹部から血の軌跡が放射線状に流れていく――
そして、ドサッとカーボン・ナノファイバー(CNT)の色彩の上に落ちたのだった。
その目は色をなくしたように白く濁り、体の大部分の血液を失い、ビクンビクンと痙攣を引きつっていた。
「す、スバル――!! うわぁあああああ!!!」
僕は、エナジーア弾を連射しながら駆ける。
そのエナジーア弾が行きつく先は、レグドだった。
ドドドッと被弾する被弾する被弾する。
その時、レグドは訳が分からず棒立ちしていた。
お、俺は何やってるんだ。
だが、あの一瞬感じた気配は――
その横をエナジーアの粒子(涙)を流しながら、Lが一過していた。
――俺は、訳が分からなくなっていた。
(開拓者にとって、必要な心技体のうち、圧倒的に劣っていたのは体だった……。地球人は弱い、果てしなく弱い……
だが、あの一瞬だけ……! このレグドが恐怖と畏怖を覚えた……?!)
俺は打ち震えた。
(危険だ! 奴は必ず、我等の脅威となる危険因子だ!)
俺は向き直った。
(今、この場で確実に仕留めるべきだ。若い芽のうちに!!)
その時、辺りに光が走った――
(奴はLを従え、俺を超え、王と王女の喉笛に迫る牙だ。今のうちに始末しなければ……!!)


――少しだけ時間が戻る。あの一瞬、辺りに光が走ったのはなぜだったのか。
それは、少し前のスバルとL視点だ。
Lはスバルの横に来て。その空いた穴を塞ぎにかかっていた。
バリア(エンセルト)でその穴を覆い、どうにか塞げないかと実行してみたが……。
「だ、ダメだ……ッ!! 止まらない!!」
「あ……あ……ぅ!」
スバルは意識がないのにも関わらず、その身が勝手にビクンビクンと痙攣を引きつっていた。非常に際どい状態であった。
その時だ、『エナジーア変換携帯端末』が機能したのは。
【適合者の生命維持活動が危ぶまれています! このままエナジーア変換行うのは危険ですが、その生命を補完することは可能です! 実行しますか!?】
「ッッ!! もちろんだ!!」
(スバル、君を救うのは僕だ!!)
僕はその小さな手を伸ばし、スバルの手を掴んだ。
必ず助けるから。
その瞬間、辺り一帯に光が走った。
スバルとLがいたところに光の球体が出現し。
その光が弾け飛ぶ、現れたるは、彩雲の騎士エルスだ。
「「……許せない。僕は完全に怒ったぞ――っ!!! クゥアアアアア!!!」」


TO BE CONTIUND……

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