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84章 アヤメがやってきた

 クドウアヤメが、家にやってきた。アイドルと二人で生活するからか、いつにもなく緊張していた。

 家の周辺には、大量のボディーガード。アヤメの身を守るためとはいっても、さすがに多すぎるような気がする。ボディーガードの存在によって、快適な生活の妨げとなっている。

「ミサキちゃん、こんにちは・・・・・・」

 アヤメは振袖を着用。肌の露出は少ないものの、キラキラしているように感じられた。 

「アヤメちゃん、振袖はとっても似合っているよ」

「ミサキちゃん、ありがとう」

 アヤメは家の中を見回す。

「ミサキちゃんは、豪華な家に住んでいるね。とってもうらやましいよ」

「アヤメちゃんはもっといい家に住んでいるのでは・・・・・・」

「そんなことないよ。一般家庭と変わらないよ」

 一般家庭と変わらないといっているものの、実際はどうなのかわからない。ミサキの家がかすむようなところに、住んでいる可能性はおおいにある。

 ミサキは大会のときに、気になっていたことを聞く。

「男の人が優勝していたら、どうするつもりだったの?」

 アヤメはあっさりと答える。

「要望があった場合は、一緒に生活していたよ。お客様の約束を破るのは、アイドルとしてタブーだからね」

「男と暮らすのは苦しくないの?」

 タケシのようなイケメンならまだしも、ゴリラ人間と生活するのは考えられない。ミサキだったら、絶対に逃げ出していた。

「ファンがいるからこそ、アイドルとして活動できる。ある程度については、妥協する必要があると思う」

 アヤメの発言から、プロ意識を感じた。写真集、グッズを買ってもらうためには、自分の気持ち、プライドを捨てる覚悟を必要とする。

「アイドルを長くやっていると、理不尽なことはたくさんあるの。いちいち気にしていたら、心
身がもたなくなるよ」

「アヤメちゃん・・・・・・」

 アヤメは振袖の帯を解く。

「振袖はきついから、通常着に着替えるね」

「更衣室はあっちにあるよ」

 一人で生活するだけなのに、更衣室がつけられている。ミサキは利用したことがないので、どうなっているのかはわからない。

「女性同士なので、ここで着替えるよ」

 アヤメは振袖を脱ぐ。ミサキは条件反射的に、視線をそらしてしまった。

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