83章 食べたりない
途中で決勝戦が終わったため、満足に食べることはできなかった。3000~4000キロカロリーを摂取する計算は、水の泡と消えた。
「ミサキさん、おめでとうございます」
エネルギー不足ゆえに、体がかすかに左右に揺れた。
「ありがとうございます」
「勝因は何でしょうか?」
「たくさん食べられたことではないでしょうか」
「ミサキさん、おなかはいたくないですか?」
「はい。おなかは安泰です」
ミサキのおなかがギュルルとなった。焼きそばを食べられなかったことで、エネルギー不足が顕著になった。
「ミサキさん、おなかがすいているんですか?」
「はい、おなかがすきました」
焼きそばを食べるプランが狂ったので、おなかはスッカスカだった。こんなことになるのなら、ラーメンを2倍くらい食べておけばよかった。読みを誤ったために、空腹地獄を味わうこととなった。
「あれだけの量を食べたのに、おなかがすいたんですか」
「はい、何かを食べたいです」
「噂には聞いていたけど、すごい胃袋ですね」
エネルギー不足になったことで、軽いめまいを感じることとなった。
「おなかすきました。何かを食べさせてください」
ミサキの危機を感じ取った、シノブがこちらに近づいてきた。
「ミサキさん、おにぎりを持ってきたよ」
大食い大会のMVPはシノブ。彼女がいなかったら、空腹で病院に運ばれていた確率は高い。
「シノブちゃん、ありがとう」
ミサキは10個のおにぎりを食べる。カロリー補充したことで、少しだけ持ち直すことができた。
「ミサキさん、まだまだいけそうですね」
「シノブちゃんの焼きそばを、10~20人前は食べたかったです」
マイクを持っている、女性の目がきょとんとする。
「ミサキさんには、優勝賞金の50万ペソが渡されます」
食べるだけ食べて、50万ペソをもらえる。ミサキにとって、大食い大会は天国といえる。
「クドウアヤメさんと生活する権利を与えられます。一緒に生活しますか?」
一緒に生活するのは任意なのか。こちらについては、ゆっくりと結果を出そうと思った。