73章 最強新人アイドル
ミサキは自宅で、テレビをつける。
テレビでは、新人アイドルの運動会を放送中。参加人数は多く、100人に迫ろうとしていた。
テレビに映る女の子の中で、日の目を見られるのはごくごくわずか。ほとんどの女の子は日の目を見ることなく、テレビ画面から自然消滅する。シノブ、アオイ、マイ、ツカサ、ナナ、ホノカと同じ運命をたどる。
アイドル活動で無理をした場合は、病院送りになる。アイドルを目指す代償として、人生を棒に振る。
100メートルを完走した新人アイドルが、テレビで挨拶をする。スタイルがいい、かわいいとは思うけど、人の心に働きかけるものが不足している。人間を夢中にさせるポテンシャルがなければ、アイドルでやっていくのは難しい。テレビに映っている新人アイドルは、マイ、シノブよりも明らかに劣っている。本人にいってはいけないけど、アイドルとしての素質が0だ。
一部のアイドルは、太い声をしていた。声優にはいいと思うけど、アイドルとしては減点材料である。シノブがいっていたとおり、声も重要である。
団栗の背比べの、新人アイドルが続く。インパクトが弱かったからか、顔、名前を記憶することはなかった。名前を覚えてもらえない=アイドルとして売れないことを意味する。
テレビにある女性が映し出された瞬間、チャンネルを持つ右手の力が抜けた。
「サクラココロです。よろしくお願いします」
アヤメが売れるといった理由が、はっきりと伝わってきた。ココロの醸し出すオーラは、他を凌駕していた。
「ココロさん、あこがれの人はいますか?」
クドウアヤメを挙げると思っていたけど、そういう展開にはならなかった。
「私のあこがれは、ミサキさんです」
「大食い少女ですか?」
テレビ局に名前を認知されている。ミサキの想像している以上に、名前は知れ渡っている。
「そうです。私にとって、一番の憧れの女性です」
「どういったところに、憧れを持っていますか?」
「ミサキさんのスタイル、声に憧れています」
160センチ、42キロはアイドルとしてもトップクラス。アイドルを目指すものにとっては、憧れになりうるようだ。
声については、よくわかっていない。こちらについては、ピンとこない部分があった。
リポーターは質問の仕方を変える。
「アイドルで憧れている人はいませんか?」
アヤメは即答した。
「アイドルではいません。私が絶対に1番になります」
アヤメと話したからか、ビッグマウスに感じなかった。ココロはアイドルで一番になる、素質
を兼ね備えている。
「ココロさんの活躍を期待しています」
「ありがとうございます」
ココロは頭を下げる。オレンジ色の髪の毛は、彼女をさらに引き立たせていた。