バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

18.人間達への伝言(前半レン視点、後半スノーラ視点)

 スノーラが言った通り、着いた場所には小さな湖がありました。小さな湖? かなり大きいと思うんだけど。とっても綺麗な湖で水は透明、だから水の底までばっちり見えます。それから湖の底にはキラキラしたものがいっぱい。全部砂利と石らしいんだけど、透明な粒なんだって。茶色く見えるものも、良く見ると透明の茶色。

 それから魚もカラフルで、僕とルリが湖を覗き込んでいたら、どんどん集まってきました。ここの魚は特別。スノーラは神聖な物だって。だからこの森に住んでいる魔獣さん達も、ここの魚は絶対に食べません。それなのにお魚さんが多くなりすぎる事はなくて、不思議な魚だって言ってたよ。

 あとは湖の周り。僕がルリと初めて会った場所。そう、ルリが倒れていた場所ね。あそこも小さい花畑だったけどとっても綺麗で。でも、湖の周りはそれ以上に綺麗な花畑でした。ルリは花畑が大好きなんだって。だからここに来たことある?って聞いたら、ここは初めてで、ルリはとっても喜んでいました。小さいルリは、まだ遠くまで行けないからね。僕もだけど。

 僕達が喜んでいたら後ろから声が。

『で、あいつ何しに来たの?』

 振り返ったらやっぱりカースでした。

『まぁ色々な』

『進展でもあった? まぁゆっくり話そうか。レン、ルリ。広い場所で2人で遊ぶなんてつまらないだろう? 僕の友達を呼ぶから待ってな』

 カースがとっても綺麗な声で鳴きました。歌い始めたって方が正しいかも。今のカースの姿は魔獣の姿。カース、歌うのとっても上手だったよ。
 カースが歌い終わって少しして、向こうの方。カースの後ろの草むらがガサゴゾ揺れ始めて。最初にリスに似てる魔獣さんが何匹かぴょんって出てきました。それから次々に小さな魔獣さんや、ちょっと大きな魔獣さん達が出てきて。狐に似ていたり、猪に似ていたり、たぬきに似ていたり。

 うさぎに似ている魔獣さんも。でも時々スノーラが狩ってくるツノが生えているうさぎ魔獣さんじゃなくて、このうさぎ魔獣さんはツノはなくて、耳の毛がもこもこ、それから体ももこもこの、とっても気持ちよさそうなうさぎ魔獣さんです。同じような魔獣でも、違う種類がいるのかも。

『みんな、スノーラの所で暮らしてるレンとルリだ。今日はここに遊びに来たんだ。だからみんな仲良く遊ぶんだよ』

 僕とルリは魔獣さん達に囲まれてぎゅうぎゅうに。そのぎゅうぎゅうのまま押されるように、湖の方へ歩いて行きます。みんな僕達の匂いをクンクン。僕も思わず一緒にクンクン。そうしたらお前人間だろうって、スノーラとカースに笑われちゃいました。

 魔獣さん達は僕の事を怖がる事はなくて、すぐにみんなで一緒に遊べたんだ。スノーラに足はバシャバシャしても良いって言われたから、みんなで湖の周りに並んで足をバシャバシャ。それから水のかけ合いっこしたり。

 僕達が遊び始めると、スノーラ達は少し離れた所に座って話を始めました。バディーのお話だよね。そういえばバディーは人と契約しているって言ってたけど。それにスノーラもいつかは人のいる場所に行くって。この世界の人の生活ってどんなかな。僕ちゃんとできるかな? もしダメだったら? もしダメならまたこの森に帰ってきても良いのかな?

      *********

『そうか。やっぱりあいつも気がついてここまで調べに来たんだ』

『ああ。この前レンが現れた時、どれだけの者が気づいたか』

『まぁ、俺達レベルなら完全に気づいたろうし、バディーが気づいたって事は、最低でもバディーレベルは気づいている。もう少し下の連中もかな。で、何を話したんだ?』

『一応これからの事についてな。バディーの所ならば問題はないと思い、一応伝言を頼んだ』

『最近僕も人間の所には行っていないけど、何も変わっていなければ、確かにバディーの所だったら、レン達が行くのは安全かもね。まぁ、人間達は欲の塊だから。その辺変わってしまった者達もいるかもしれないけど。バディーが離れていないって事は、まだ大丈夫って事だろうね』

 そう、我はバディーに伝言を頼んだ。あの時のように、別の世界から人間がやって来た事。今我と暮らしていて、我がその人間の守りをしている事。その人間はまだ小さいので力を借りたい事。
 だがもしこの人間を保護したのち、この人間に何か不利な事をするのであれば、我の全てをもってこの人間を守り、関わった者全てを消すという事も。

 バディーはそんな事はないと怒っていたが、バディーが自分の主を信じて守っているように、我にとってもレンとルリが大切なのだ。それくらいは言わなければ。

『全てを消す…ね。君が本気を出したら国1つくらい簡単に消えちゃうよ。人間もそれは避けたいだろう? でも…。確かにレンは特別だからね』

 もし人間達が私の話を了承したのならば、迎えに来いとも伝えてもらった。今の奴らにどれだけの力があるか。確かに人間達はこの森の奥にはそうそう入れない。だが本気でレンを保護しようと思えば。バディーが戻り話をして、準備をして森に来れば、大体10日くらいか? それまでに我も色々準備をしなければ。

『そっか。行くのか。僕も一緒に行こうかな』

『いや、お前には我の代わりにこの森を守ってもらいたい。そして何かあった時の連絡係にもなってほしい』

『…絶対そう言うと思った。あ~あ、僕もレンと契約してみたかったのに!』

『すまないが頼む』

『もう! 分かったよ。ていうか分かってるよ、僕もこの森が大事だからね。あっ、そうだ! 代わりに僕のお願い聞いてよ。それくらい良いでしょ!』

『何だ?』

『まぁ、君は嫌がるかな? でも僕は良いと思うんだ、君だって気づいてるはずだし。レンと契約してよ』

『おい、我は…』

『あれからどれだけ経ってると思っているの? 君も前に進まなきゃ、幸いレンは君と相性バッチリだし。僕は君が心配だったんだよ。あ~これで少しは落ち着く』

『………』

『うんうん、良かった良かった。良し、僕もレン達と遊んでこようっと』

 カースがレン達の所へ飛んでいく。我が契約? 我はニコニコと楽しんでいるレンを見つめた。

しおり