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4.小鳥の次はトラさんとの出会い?

『それで、お前は何者だ? ここの人間ではないな』

「うんちょ、ぼくは…」

 僕は誰なんだろう? 名前も覚えているし、あの光に包まれてここに来るまでの事は覚えているから、多分長瀬蓮であっているとは思うんだけど。でも明らかに体型が違うし、ちゃんと話ができないし。何より小鳥を治したときに見た、あの透明な板には、確か数字の2か3って書いてったよね。だからこの感覚から、それと施設にいたちびっ子の事を考えると、2歳だとは思うんだけど。

 ここの人間じゃないって、それも分かってるつもり。だって、今目の前にいるこのトラさんみたいな動物、地球にはいないもんね。それに…。空を見上げれば、やっぱり太陽みたいなものが2つあって。これが地球だったら大問題になっているよ。

 僕が黙っちゃって、周りをキョロキョロしていたら、トラがハァってため息をつきました。だって答えられないんだもん。僕だって答えられるならそうしているよ。そんな面倒臭そうな顔しなくても良いじゃないか。

 小鳥がピュイピュイ鳴きながら、僕の頭の上から降りて来ました。それで僕が両方の手のひらをくっ付けて前に出したら、その手の上に乗って来てお座り。うん、やっぱりこの子可愛い。と、そんな事をしていたら、またトラさんの質問が。

『何も分からないのか? 何かあるだろう。名前は?』

 う~ん。名前、そのまま蓮で良いのかな? それも迷うなぁ。蓮はお父さんとお母さんからの大切な贈り物だから、そのまま僕の名前が蓮なら良いんだけど。さっきの透明な板には何も書いてなかった。もしかして僕は蓮じゃないの?

 またまた黙っていたら、またまたトラさんのため息が。僕はブスッとしてトラさんを見ます。そうしたら僕の顔を見た小鳥が、自分も顔を膨らませてブスッとした顔に。それで一緒にトラさんを見てくれたんだ。小鳥は僕の味方。ありがとう!! 分からないものは分からないんだからしょうがない! 1人と1匹でトラさんを見ます。

『お前達、会ったばかりなのだろう。なぜそんなに息があっているのだ?』

 良いじゃない、僕達は出会ったばかりだけど、仲良しなの! 

『まぁ、我はお前がどうしてここに来たか、なんとなく分かっているがな。この感覚。おそらく何か手違いがあったんだろう』

「ぼく、ここいりゅ、わかりゅ?」

 分かっているって何!? なら聞かなくて良かったじゃん。ていうか、逆にどうしてここにいるか教えてほしいくらいなのに。

『お前は手違いで、元々いた世界からここへ連れてこられたんだ。おそらくステータスで分からない部分は、手違いに対するお詫びだろう。そのうちこれに関してはお前に連絡が来るはずだ。昔のあいつにお前はそっくりだからな』

 トラさんの話によると、僕はある人達の手違いによって、地球からこの世界に送られて来みたい。昔、とっても昔に、僕と同じような人がやっぱりトラさんの前に現れて。その時の状況に僕は似ているんだって。だから多分そうじゃないかっていうのがトラさんの考え。
 それでその手違いとか、詳しい話については、そのうちその手違いをした人が、連絡をとってくるはずだから、それまで待ってろって。

 待ってろって。いつ会いに来て説明してくれるんだろう? 僕分からない事だらけで困るんだけど。それに手違いって言うなら、ちゃんと謝りに来なくちゃいけなくない? いくら僕が施設にとっていらない人間だったとしても、残してきちゃったちびっ子達の事が心配だし。
 僕のことだってそう。僕のことを心配してくれる人はいないけど、それでもこんな、森?か林か分からないけど、1人でこんな場所に置いていくなんて。しかも体は2歳になっちゃってるし。

 そんな事を悶々と考えている時でした。小鳥も僕と一緒に悶々と考える顔をしていたんだけど。いきなりトラさんの体が光り始めたんだ。僕も小鳥もビックリだよ。トラさんがそのビックリする顔まで一緒なのかって。僕達は顔を見合わせました。小鳥がニコニコ照れて。僕もニコニコ。何か嬉しい。

 と、それはそれとして。トラさんは慌てていないから大丈夫なんだと思うけど、何で光ってるの?

『おい、まさか我に任せるつもりじゃないだろうな?』

 上を見て話しを始めるトラさん。誰と話しているの? 今度はトラさんが見ている方を、一緒に見る僕達。

『ぴゅい? ぴゅいい?』

「ねぇ、だりぇちょ、おはなちかにゃ?」

 言葉は分からなくても、なんとなく言っている事が分かる。ちゃんとにお話できたら良いのに。あれ? そういえば…。僕何で普通にトラさんとお話ししているの?おかしいよね? 最初から普通に話していたからおかしいって感じなかった? それともおかしな事ばかりで、おかしな事に気づきにくくなってる?

『俺は前回ので十分だ。今度は別の奴に任せろ。大体こんな小さな子供の世話なんぞ。この前はもう少し大きかったから…、っておい!! 待て!!』

 もっと光り始めたトラさん。目を細くして見守ります。そして…。光が消えるとそこには。完全に光が消えていないトラさんの姿が。なんかキラキラ輝いている感じのトラさんになっていました。

『はあぁぁぁ~』

 今までで1番大きなため息をつくトラさん。それからお腹を出してだらぁと寝転びました。

『なんで我ばかりこんな事に』

 何だろう。さっきまでの凛とした姿じゃなくて、完璧にやる気のない顔で、だらぁとして。何があったのさ?

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