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5.トラさんの面倒ごと?

「どちたの?」

『お前のお守りをしてくれと頼まれた』

 どういう事? それからも、何でだとか面倒だとか、ブツブツ言ってゴロゴロしていたトラさん。でも途中で小鳥が飛んでいって、トラさんの鼻の頭を思い切り突きました。僕が何回もどうしたのって聞いてるのに、ずっとブツブツ言っていたから怒りに行ってくれたみたい。ありがとね。

『分かった、分かった。今話す』

 ようやくお座りの格好に戻ったトラさん。小鳥も僕の手のひらに戻って来ました。トラさんによると、僕をここに連れて来た人が、トラさんに僕の事を守って欲しいってお願いして来たみたい。それでその守るための力として、トラさんは特別な守る力を貰ったんだって。

 誰とも話してなかったよねって確認をします。確かにトラさんは話をしていたけど、ずっと1匹でお話しをしていたはず。そうしたら話をしなくとも、それくらい分かるって言いました。感覚で分かるんだって。前にも今と同じような事があったから分かるんだって。

 う~ん。僕をここに連れて来た人、本当に1度僕の所に来て説明してくれないかな? それに今のお話しを聞いて、トラさんがブツブツ言うのも分かるよ。急にここに連れてこられた僕を、全然知らないトラさんが面倒を見ろって。普通だったら連れて来た人が責任を持って、何かするべきじゃない?

『まぁ、もう力は貰ってしまったし。我の守って来た森で、お前に死なれてもな。仕方ないからお前の面倒を見てやる』

 良いの? 嫌なら断ったほうが良いよ。僕はその連れて来た人に何とかしてもらうから。と言っても、どうやって連絡を取れば良いか分からないけど。

『それに、どうもお前からは不思議な力を感じるからな。前に来た者とは別の不思議な力だ。我は我の知らない物があるのが嫌なのだ』

 何の事か分からないけど、トラさんがそう言うなら良いけど。でもこれからどうするんだろう?

 トラさんが僕の洋服の襟の所を咥えて、僕はぶらぶら。小鳥さんはトラさんの頭の方に移動します。それでいきなり思い切りジャンプしたんだ。1回でそこら辺の木よりも高く飛んだトラさん。いきなりでちょっとビックリしたけど、でもすぐにそんな事は気にならなくなりました。

 いつの間にか空はオレンジ色になっていて、目の前にはとっても綺麗な夕焼けが。こんなに綺麗な夕焼け見た事がありません。僕は思わず拍手しちゃいます。と、今度は体がビュンと横に。木のてっぺんに降りたトラさんがまた動いて、一気に木を10本くらい飛び越えて、空中を走っているみたいなの。それにも僕は感動してまたまた拍手しちゃいます。

 そんな移動をしていると、頭の上の方から小鳥の歌い声が。ピュイピュイ楽しそうに歌っているんだ。僕もそれに合わせて鼻歌を歌います。

『お前達は呑気だな。お前、少しも心配はないのか?』

 心配? それは心配だけど、今の僕にできる事なんてそんなにないでしょう? だったら僕はトラさんについて行くよ。そうだ! 僕のこと守ってくれるんでしょう? だったら何処に向かっているかは知らないけど、着いたらちゃんとお願いしなくちゃ。面倒かけちゃうかもしれないけど、よろしくお願いしますって。挨拶は大事だもんね。

「これからいっちょ」

『ん? ああ、そうだな。これから一緒だな。我も人間いうところのお人好しというものか。さっさとこの子供の不思議な力について聞いて、別れれば良いものを…。よし飛ばすぞ!!』

 もっと速く飛び?走り始めたトラさん。ジェットコースターみたいでとっても楽しかったです。そして着いた場所は、大きな洞窟の前でした。僕を下ろしたトラさんは、僕と小鳥に待っていろって言って、さっさと洞窟の中に入っていきます。でもすぐに出入り口まで戻ってきて。

『中に入って良いぞ。取り敢えず魔法で中は明るくした』

 魔法で明るく? やっぱりこの世界は魔法が使える世界なんだね。洞窟の中に入ったら、トラさんの言った通りとっても明るくて、洞窟の中じゃないみたいでした。そしてどんどん中に入って行くと広い場所に出て。

『もっと奥にも行けるが、取り敢えず今日はここまでだ。色々準備がいるからな。さて、我は知り合いに借りてくる物がある。お前達は外に出ず、ここで静かに待っているのだぞ。ご飯も持って来なければいけないからな。良いか分かったな』

「あい!!」

『ぴゅいぃぃぃ!!』

 ね、一緒に待っていようね。トラさんは僕達の返事が合って、ちょっとだけニヤッと笑った後、洞窟から出ていきました。

 トラさんがいなくなってからすぐに、小鳥が僕の洋服を引っ張って。それについて行ったら、そこに木の葉が溜まっている場所が。そこに飛んでいってちょこんと座る小鳥。そうだね。ゴワゴワの岩場に座るより、木の葉の方が良いよね。僕は小鳥の隣に座りました。うん、ふかふか。お尻痛くないよ。

「こちょりしゃん、にゃまえは?」

『ぴゅい? ぴゅいぃぃぃ!』

 う~ん、流石に細かい言葉までは分からないや。喜んでるとか、怒ってるとか、ブスッとしてるとか、そういうのは分かるんだけど。トラさんが帰って来たら聞いてみようかな? 小鳥の名前知ってるかな? ていうかトラさんの名前も知らないや。その前に僕の名前の問題も。

 あの透明な板に書かれている事が本当なら、今の僕は名前がないって事で。もし自分が名前を考えて良いなら、僕はやっぱり蓮が良いな。僕の大切な名前。お父さんとお母さんに貰った大切な。うん! 僕は蓮だよ!!

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