3.色々な煩い声
『本当にすまん事をしたのう』
誰? 誰の声? 僕の知らない声。
『まったく、どうするんですか! もしかしたら命が危なかったかもしれないんですよ!! だいたい***のせいで、彼は本来いるべき場所から移動する事になったんです。それに対してもきちんと責任を取るべきでしょう!』
さっきはお爺さん?の声、今度は女の人の声だ。こっちも僕の知らない声だよ。
『じゃから、たくさん加護を与えたではないか。他の事についても…』
『ですから、それも命があってこそ。送る場所も間違えるは、何も出来て良いないじゃないですか!! しかも何ですかあのステータスボードの表示は!!』
『そ、そんなに怒らんでくれ』
『怒らずにいられますか!! あんな書き方をして! 年齢も2か3? みたいな? どう考えても2歳でしょう! それにみたいななどと書かなくても、非表示で良いのです!』
『いや、まぁ、その辺はなんとなく?』
『なんとなく? はぁ、彼がいてくれたおかげで何とかなりましたが…』
煩い。僕眠たいんだから静かにしてよ。せっかくゆっくり眠れる、そんな感じがしてるんだから。
『私達がどこまで彼にできるか、これからまた考えますよ! はぁ、あんなに小さく転移してしまって。そのうち体も心も、自然と溶け合っていくでしょうけど。それまでは少し大変かもしれないわね。私がしっかり見守らないと』
あっ、声が小さくなってく。ふぅ。何で2人が喧嘩しているか分からないけど、これでゆっくり寝られるね。喧嘩っていうか女の人にお爺さんが、怒られてるって感じだったけど。
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『そうか。すまなかった。すぐに気づいてやれなくて』
『ぴゅいぃぃぃ』
『大丈夫だ。我がしっかりと力を注いだ。そのうち起きるだろう』
『ぴゅい! ぴゅいぃぃぃ!』
『お前の気持ちも理解した。しかしそれをこの子供も望むかは分からんぞ。一応聞いてみるが』
う~ん。今度は何? 僕やっと寝られるんだけど。静かにしてよ。ん? やっと寝られる? 僕何をしていたんだけっけ? 確かいつも通り先生に言われた仕事を終わらせて、それからベッドにダイブしたんだよね。それでそのまま寝たんだっけ? 何か僕しなかった? 何かしていたような気がするんだけど。
僕は少しだけしっかりしてきた頭で、目を開けずにそのまま考え始めました。何か同じ事を前にも考えなかった? どうしてって? そうそう、何か思い出してきた。
確かあの時もベッドにダイブしたのにって。でも僕の周りは木がいっぱいで、森の中に来ちゃったみたいに。
そうだ、それから色々考え事をしていたら、小鳥の声が聞こえたんだった。それで声の聞こえた方に行ったら、小鳥が怪我だか病気だかになってて。何とか出来ないかって考えたら、目の前に変な透明の物が現れて。能力の所にヒールって書かれていたんだよね。だからもしかしたら小鳥の悪い所が治るかも。そう思ってヒールって叫んだんだ。叫んで…。それから?
「こちょりしゃん!!」
僕は目を開けて、小鳥の事を呼びました。そう、僕あの時急に眠くなって寝ちゃったんだよ。最後に小鳥が動いた気がしたんだけど、小鳥どうなった!?
『目が覚めたか?』
ん? 誰? 目線は横。やっぱり寝ていた僕。あの時のままなら寝ている僕の前には小鳥が居るはずで。でも僕の目の前に小鳥はいませんでした。代わりにいたのは大きな真っ白なトラっぽい生き物で。
僕は何とか起き上がります。起き上がるときに体を見たけど小さいままだったよ。残念。と、今はそれどころじゃなくて。どうして僕の前に小鳥じゃなくて、ツノの生えている白いトラみたいな生き物がいるの? もしかして僕を食べるためにあの場所から連れてきた? 小鳥は無事!?
キョロキョロする僕。その時トラっぽい生き物。もうトラでいいや。トラの後ろから小鳥の声が聞こえました。
『ぴゅいっ!!』
「こちょりしゃん!!」
『ぴゅいぃぃぃっ!!』
鳴き声と共に、あトラの頭の後ろから何かが飛び出して来て、僕の胸にぶつかってきました。それでそのまま下に落ちそうになって。右の足が洋服に引っかかって止まっている状態に。僕は急いでそれを落ちないように抱きしめます。
『ぴゅいぃ…』
『まったく、慌てて飛び出すからだ』
僕はぶつかってきた物を見つめます。ぶつかってきた物も僕を見つめて。その後すぐに僕はそれを抱きしめました。
僕がどのくらい寝ていたかは分からないけど、森で1番初めて会った小鳥。他の鳥には会ってないけど、この小鳥があの時の具合が悪くて倒れていた小鳥だって。僕にはちゃんと分かるよ。
良かった! 元気になったんだね! 羽も綺麗な瑠璃色になってるし。苦しそう呼吸もしてない。それどころか僕の胸に思い切りぶつかってきたもんね。元気になって本当に良かった。
『ぴゅい、ぴゅい、ぴゅいぃぃぃ!』
「よかっちゃ、げんき!!」
『ぴゅいぃぃぃっ!!』
『おい、そろそろ我が話しても良いか? お前の話しもしなくてはいけないし。この子供にも話しを聞かなければ』
僕はバッと顔を上げます。小鳥に会えて、しかも元気になってる姿を見て。とっても嬉しくて、すっかり忘れていました。僕の前にトラがいた事を。
と、小鳥が僕の手の中から出てきて飛ぶと僕の頭の上に。それでそのまま僕の頭に座った感覚が。
『忘れていた、という顔だな。お前の方も』
トラが僕の頭の上を見ます。
『ぴゅい…』
小鳥が小さな声で鳴きました。何か、そんな事ないよって、失敗失敗って言ってる感じの鳴き声。可愛い。
『はぁ、まったく。出会ったばかりだというのに、もう気があっているというか何というか』