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2.ヒール! お願い小鳥さん治って!

 大きな声で叫ぶ僕。叫んだ瞬間でした。かざした手のひらの所がポワッと光って、それが勢いよく光り始めたんだ。それですぐに小鳥も僕もどっちも包んじゃって。

「にゅうぅぅぅ!!」

 変な声が出ちゃったよ。でもそれどころじゃなくて、僕は慌てて目を閉じました。あの時みたいな光。そう僕をよく分からない場所に連れて来たあの強い光に似ています。ただ違うところも。あの時は白色で。ううん、眩し過ぎて白に見えたのかもしれないけど。でも今度は少し、ほんの少しだけ緑に見えたような気がしました。綺麗な淡い緑色ね。

 これって魔法のヒールが発動したって事かな? 魔法? 魔法なんて物、僕達の世界にないから、本当に魔法か分かりません。でも本当に僕がヒールが使えていて、あの小鳥に効いてくれれば。何とか小鳥を治してあげたい!
 眩しくて目を閉じちゃってるから、しっかり手を小鳥にかざせているか分かりません。でも僕は手を引っ込めないでさっきの姿勢のまま、光が消えるのを待ちました。

 どのくらいだったかな。僕の体にちょっとした変化が。なんか体の中から、温かいものが抜けていく感覚がしたんだ。それと同時に、目を瞑っていても眩しい光が、少しずつ収まってきたような感じに。
 あと少ししたら目を開けても大丈夫かな? 早く小鳥を確認したいけど、もしまだ眩しいのに目を開けて、僕の目がどうにかなっちゃったらダメだし。あと少し?

 様子をうかがう僕。と、さっきまでの明るい光が、一気に消える感覚が。僕はそっと目を開けました。
 うん、かなり光は弱まってる。今光っているのは小鳥を包んでる光と、僕の手から少しだけ溢れるように出ている光だけ。それからやっぱり光は淡い緑色でした。その光もどんどん薄くなっていって、最後フッて全部の光が消えたよ。

 動かない小鳥。じっと小鳥を見つめる僕。羽を確認したら、あれだけ黒かった羽が、綺麗な青色に戻っていました。これって僕のヒールが効いたってこと? 治ったの? う~ん。小鳥が動かないから良く分からない。治ったならそれで良いんだけど。

 僕はそっと小鳥の頭に手を伸ばします。でもすぐにその手を止めて。撫でてあげようかなってって思ったんだけど、知らない人間に触られたくないかなって。でも心配だし。手を出したり引っ込めたり、何回も繰り返す僕。やっぱり心配だからちょっとだけ触らせてね、痛い事しないからね。

 思い直してもう1度手を伸ばしました。そしてそっとそっと小鳥の頭を撫でてあげます。うわあぁぁぁ! とってもふわふわ! こんなに気持ちの良いふわふわ触ったの初めてだよ! とっ、いけない。喜んでる場合じゃなかった。

「じょぶ?」

『………』

「じょぶぅ?」

『………』

 小鳥は目を開けません。呼吸はしてるんだけど。もしかしてダメだった? 羽は元に戻ったけど間に合わなかったとか。僕は撫でる手を止めずにそのまま声をかけ続けます。

「こちょりしゃん」

『………』

「じょぶぅ?」

『………』

「こちゃりしゃん」

『………ぴゅい』

 今鳴いた!? 聞き間違いじゃない? 僕は大きな声でさらに小鳥に声をかけます。でも次の瞬間。

 いきなり体全体から力が抜ける感じがして、僕はその場に倒れ込みました。小鳥の横に寝る感じに倒れる僕。小鳥を撫でていた手はそのままで。小さい子供の手でも、小さい小鳥には重いと思って、急いで手をどかそうとします。でもそれすら出来なくて。

 どんどん眠くなってきます。僕どうなっちゃうんだろう。倒れて地面に顔が付いた感じ。やっぱりしっかり草を感じているから、今は現実なんだ。僕このまま寝て大丈夫かな? 絶対にまずいよね。でも次に気づいたら元の僕の部屋のベッドの上だったりして。それならそれで、今までの生活に戻るだけだし。夢だったんだで終わりなんだけど。

 でも。この小鳥のことは心配だな。最後までどうなるかしっかり確認したかった。夢でも現実でも、小鳥が元気になって、飛び立つところが見たかったな。それなら安心して夢からも覚めれるし。きっと飛んでる姿も可愛いんだろうなぁ。

 そんな事を思っていると、眠気はどんどん酷くなってきて。もう目を開けていられませんでした。最後に小鳥を確認します。もし僕が眠っちゃって、そのときに気がついたなら、それでもし体が元に戻っているなら。どうしてこうなったか分からないけど、これからは気を付けて暮らすんだよ。家族がいるなら家族と仲良くね。

「やちゅみ、こちょりしゃん」

 僕は小鳥におやすみって言ってから目を閉じました。閉じる瞬間、小鳥の目が開いたような。それなら良いなぁ。

      *********

 何だあの力は。いきなり力が爆発したような。しかもかなりの力が。全く、ゆっくりしているというのに。だが、調べない訳にもいかんし。はぁ、さっさと確認をして、もしこの森に危害を加えようとしている輩が居るのならば、さっさと消してしまおう。そしてまた昼寝に戻るとしよう。だが…。

 我は立ち上がると、力が爆発した場所へと向かって走り出した。あの力。負の気配はしなかった。それどころかとても温かったな。あのような力で、この森に危害を加えようとするだろうか。
 それに力が爆発する前、同じような場所から、何かが生まれたような、急に現れたような気もしたが。すぐにその気配は消え、何も起こらなかったから放って置いたのだが。あの力の爆発と何か関係があるのか。

 なぜ我の守る森で面倒ばかりが起きる。この前ようやく厄介な人間達を追い返したと言うのに。もし人間関係で問題が起こっているのならば、あやつの責任は大きいぞ。
 
 と、この辺りか。ん? あれは?

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