バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

40章 90分後

 31人前の焼きそばを食べてから、90分が経過する。

「ミサキさん、仕事はできそうですか?」

「はい。いけそうです」

 空腹になるスピードが速いからか、腹痛は完全に収まっていた。

「無理そうだったら、声をかけてくださいね」

 他人を心から大切にする。食べ物をろくに与えなかった母親に、聞かせてやりたい言葉である。

 仕事に戻る前に、アオイから声をかけられる。

「ミサキさん、すごい食べっぷりでしたね」

 31人前の焼きそばを食べられるのは、特殊な体をしているからである。一般的であったなら、3人前くらいでギブアップしていた。

「そうですね」

「私も食べられるようになりたいです」

 雑談をしていると、シノブからお叱りを受ける。

「雑談をする時間があったら、注文を取ってください」

 ミサキは気持ちを、仕事モードに切り替える。

「わかりました」

「注文数が多いので、数を間違えないでくださいね」

 店内は客でごった返しており、空席は一つもなかった。昨日とは別の店で、働いているような気分になった。

しおり