41章 労働契約書
4時間にわたる労働が終了する。
4時間勤務をできたのは、31人前の焼きそばを食べられたから。焼きそばを食べていなかったら、空腹のどん底を味わっていた。
アオイ、ナナは仕事を継続中。パートタイムで働く女性とは異なり、フルタイムで仕事をするようだ。
帰宅の準備をしていると、シノブから声をかけられた。
「ミサキさん、少しだけ残ってください」
「わかりました」
シノブ、アオイ、ナナは仕事をしている。3人の邪魔にならない場所で、待機することにした。
シノブは右手に、一枚の紙を持っていた。
「ミサキさんのための、労働契約書になります」
労働契約書には、時給、働く時間が記されていた。
「1日2時間労働です。1カ月の勤務日数は、20日を想定しています」
時給は10ペソ、1カ月の労働時間は40時間である。1ヵ月の勤務をすると、400ペソの収入となる。
「時給については、大入り当てを支給することもあります」
聞きなれない言葉だったので、首を傾げる。
「大入り手当て?」
「飲食店で採用している制度です。お客の数が一定以上になったら、従業員にお金を渡すというものです。時給の少なさを補うために、設定しました」
焼きそば店の時給は、世間の半分程度の相場。ボーナスなどをつけなければ、他社に遅れを取ることになる。
「ミサキさんがよかったら、契約書にサインをお願いします」
時給はかなり安いけど、労働者のことを大切にする。ミサキはこの店で、骨をうずめたいと思った。
ミサキはサインをしたあと、頭を深く下げる。
「これからもよろしくお願いします」
ミサキ、シノブはがっちりと握手をする。その様子を見ていた、アオイはほっぺに空気を詰め込んでいた。
「シノブさんだけずるいです。私も握手したいです」
シノブと手を離したあと、アオイとがっちりと握手する。彼女の掌からは、苦労、苦悩などがひしひしと伝わってきた。