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50. 実感

 50. 実感



 私たちは魔物の巣の奥でグリフォンと対峙する。そしてグリフォンの速さと上空に逃げられることで苦戦するなか、ある1つの作戦を思い付く。私はそれをリーゼとゲイルさんにも話す。

「わぁ!すごく楽しそう!」

「おお。良かったな貴重な経験だぞ?キルマリア。その作戦で行くか!」

「あたしが死んだらエステル姉さん恨むからね!」

「安心して。お墓はちゃんと作ってあげるからキルマリア」

「縁起悪い!ぴえーん!」

 こうして私たちはグリフォンを倒すため、動き出したのだった。

「罠魔法……蜘蛛の糸」

 私は罠魔法で名前の通り大きなクモの巣を作り出す。これはグリフォンを攻撃するためでも、動きを拘束するためでもない。ただの強度のある大きなクモの巣を作るだけだ。

「準備できたわ。リーゼお願いね」

「うん!」

「あのさ……本当に大丈夫?あたし星にならないよね?」

「大丈夫だよキルマリアちゃん!さすがに私でもそこまでは無理だよ!」

「いやリーゼ。死ぬって意味だよ?」

「最強美少女アサシンなら大丈夫でしょ。ほらほら、行くわよ」

 私がそう言うとリーゼはキルマリアの足を持ち上げる。そしてその怪力で、そのままグリフォン目掛けて投げ飛ばす。

「ぎゃあああ!!もう帰りたい!!」

 そんな叫び声を上げながらキルマリアが飛んでいく。そしてキルマリアはグリフォンに攻撃を仕掛ける。

「次はゲイルさんの番ですよ。キルマリアの命を無駄にしないでください」

「さよならキルマリアちゃん」

「おい。死んでないだろさすがに可哀想だぞ……。まぁ……安心しろ」

 キルマリアの勢いのある攻撃をグリフォンはかわす。しかしかわしたその場所はゲイルさんの剣先に捉えられた。そして一瞬で振り抜いた斬擊が上空にいるグリフォンを斬り裂き仕留める。

「きゃあああ!!あたしおわた!!」

 キルマリアの悲鳴を聞きながら私とリーゼは走り出す。そして罠魔法の蜘蛛の糸で作った大きなクモの巣を引っ張り、そこにいたキルマリアを回収する。

「あー!助かったー!生きてるー!」

「はい、おかえりキルマリア」

「おかえりキルマリアちゃん!」

「うぅ……この2人怖い……泣く」

 キルマリアを無事回収した後、ゲイルさんの元に向かう。するとそこには絶命しているグリフォンの姿があった。

「お疲れ様ですゲイルさん」

「ああ。エステル見てみろ」

 私がゲイルさんの指差すほうを見るとそこには絶命したグリフォンの身体の中から紫に光る何かを見つける。

「これは?」

「『魔石』だ。もしかしたら……今回のことは人為的かもしれないな……」

「人為的?誰かがこんなことを引き起こしていると言うことですか?でも一体誰が?」

「あくまで可能性の話だ。とりあえずこれを持って帰るぞ」

 私たちは魔石を拾い集め、来た道を戻る。キルマリアは泣きじゃくりながら私たちについてくる。そんなキルマリアを見ながらリーゼは苦笑いを浮かべていた。

 私たちはグリフォンを討伐し、外にいるエドガー隊長たちと合流し魔石を渡してロデンブルグの魔物討伐依頼は終わりを迎えた。

 こうしてロデンブルグでの事件は幕を閉じる。しかしその裏で何者かによる事件が起こっていたことはまだ誰も知る由もなかった……。




 ―――数日後。
 私は『妖精の隠れ家』にいる。今回は色々とあったけど、無事に依頼は達成できて良かった。まぁキルマリアには申し訳なかったけど。

「エステルちゃん。無事に依頼を達成できたわね。ありがと。おかげでこのクラン『妖精の隠れ家』にも少しボーナス入ったのよ!キルマリアちゃんも頑張ったわね?ふふっ」

「うっ……うん。あたし……頑張った」

「どうしたのキルマリアちゃん?」

「気にしないでくださいアリシアさん」

 そんな話をしていると店の入り口が開く。そこから現れたのはエドガー隊長だった。

「おう!邪魔するぜ。アリシア今日も綺麗だな!結婚してくれ!」

「ふふっ。殺したいわねその顔。要件を言ってすぐにでも帰ってくれるかしら?」

 めちゃくちゃ嫌われてる……。まぁ分からないでもないけどさ。

「相変わらずだなアリシア!そんなところも可愛いぜ!」

「……ごめんエステルちゃん。殺してもいいかしら?」

「ダメです。でエドガー隊長はなんの用事ですか?」

「おっ!そうだ!忘れるところだったぜ!エステル。お前に話がある」

「私に?何でしょう?」

「この前のロデンブルグの魔物の巣のグリフォンから出てきた『魔石』なんだが……お前らの言う通り、ありゃ人為的なものらしい。」

 やはりそうなのか……それならその犯人は誰で一体何の目的があるのか。

「それでだ。実はオレたちもその件を追うことになっている。そして今から遠征に行く。お前はアリシアの仲間だ、この先何か情報があったらお互いに共有したい。」

「え?」

「言っておくが、これはオレとお前の取り引きだ。アリシアは関係ない。どうだ?これでもこの前の件でお前を認めてるんだぜ?」

 そうエドガー隊長は私に告げる。正直、この人は苦手だがそこまで私のことを信頼してくれているのか。悪い気はしない。

「分かりました。私に出来る範囲であれば協力します。」

「おう。話しはそれだけだ。せいぜい頑張れな」

 そしてエドガー隊長は店を後にした。

「へぇ。珍しいこともあるのね。エドガーが私のこと以外で誰かと協力するなんて。エステルちゃんが騎士団の隊長にも認められたか、ふふっ私も鼻が高いわね?」

「そんな大げさですよアリシアさん」

「いいや。あなたは間違いなく、この『妖精の隠れ家』の立派なリーダーよ。これからも頑張ってね」

「はい。精進しますね。」

 私は微笑みながら返事をする。少しずつこのクラン『妖精の隠れ家』の力になれている実感が沸いてきたかな。そんなことを考えるのだった。

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