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25. 私たちは後衛です

 25. 私たちは後衛です



 訓練2日目。今日は朝早くからなぜか湖の周りを走らされている……。もちろん体力作りが重要なのはわかっているけどさ。私たちはいきなり起こされてアリシアさんから今日の特訓メニューを渡された。しかも出来なかったら殺すわよ?とか笑顔で言われたし……。

 そして最初にランニングをすることになった。おそらくこの湖の周りは20キロメートル以上ある。それを2時間も走るのか。

「ゼェ……ハァ……なんで朝から……ランニングなんですの?」

「ミルフィ……文句言わない……喋るのは疲れるだけよ?」

「ボク……もう無理……」

「頑張ってルシルちゃん!まだ少ししか走ってないよ?」

「なになに?だらしないなぁ?こんなの余裕っしょ!もうキャパいのみんな?」

 キルマリアは朝から元気ありすぎだ。まあこの子の場合は、スタミナが有り余ってるというか、底なし沼みたいな感じよね……。

「ほらほらみんなー?まだまだこれからだよ!いつメンたちよ!あたしに続けぇ!」

 そう言ってキルマリアは先に走っていく。もういいや……キルマリアは放っておこう。

「でも、さすがはキルマリアね。あの子は体力おばけだから」

「あれを見てると、なんだか負けられませんわね。やる気が出てきましたわ!華麗なるブレードガンナーの私が続きますわ!」

 こうして私たちはペースを上げながら走り続けた。そしてようやく湖を周り戻ってこれた。

「あらあら。まだまだみんな体力作りが必要みたいね?」

「ゼェ……ゼェ……しんどいですわ……」

「ボクもうダメ……」

「私も限界だよぉ……」

 そう言ってみんなその場に倒れこむ。まさかここまでとは思わなかった。体力持つかしら?

「それじゃあ休憩したら、素振り千本よ?朝ごはんはそれからね。」

 え!?千本!?千本って言った今?ちょっと待ってそれは聞いていないんだけど。そんなこと言ったら、絶対やりたくない!私は立ち上がってアリシアさんのところに行く。

「あ、あの〜千本っていうのは?」

「ん?どうしたのエステルちゃん。千本というのはそのままの意味だけど?」

「いや。私は『スカウト』ですし、他のみんなも……」

「ふふっ。面白いこと言うのねエステルちゃん。素振りとジョブは関係ないでしょ?それともやりたくない理由とかあるのかしら?」

 うぅ……。やっぱりこの人怖い。ここで断ったら本当に殺されそうだ。仕方がないやるしかないか。

「わかりました。やります……」

「それでよし!それじゃあみんな。まずは500回ずつ振ってもらうからね?10分以内に終わらせなさい!」

 鬼畜すぎる。でも、これが終わらないとご飯食べれないんだろうなぁ。頑張るか……。私たちはそのまま素振りを始めた。

 10分間無我夢中で振るった。なんとか目標回数を振り終えた。みんなへとへとになっている。

「ゼェ……ハァ……死ぬかと思いましたわ……」

「ほんとよ……これは……キツいわね……」

「ボク……つ、疲れたぁ〜」

「あー楽しかった!またやりたいかも!」

「こんなの走るより楽じゃん!」

 リーゼとキルマリアだけは元気だ。

「あなたたち。その調子だとこれから大変よ?これからこの訓練中は毎日やってもらうから覚悟しておいてね?」

 ま、毎日って……。確かに剣を使うなら必要だと思うけど、私たちは後衛ですよ?それに、こんなにハードだなんて聞いてない。

「ふわあぁ。見張りをしていたから眠いわ。あとはエステルちゃんに任せるわ。お休みなさい」

「え!?ちょ!アリシアさん!」

 そう言ってアリシアさんはそのままテントに入っていった。寝るのはやいな。まぁでもこのペースで特訓してたら、ルシルとミルフィが持たないかもしれないし、それに私もあまり体力がある方ではないから、ちょうど良かった。

「エステル姉さんどうする?あたしは魔物討伐したいけど。」

「そうね……じゃあキルマリア。私と一緒にいきましょ。みんなは自由にしていて、特にルシルとミルフィはしっかり休んでね。」

 そう言って私たち二人は森の奥へ入っていった。一応昨日の場所まではマッピングをしてある。まぁそこまで広くはないけど。

「ねぇキルマリア。ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかしら?」

「なに?なんでも答えてあげるよ!あたしは超絶美少女。最強のアサシンだからね!」

「最強かどうかはわからないけれど、私はこのパーティーの中でもキルマリアが一番戦闘能力があると思っているわ」

「え?マジで?あたしのこと認めてくれるのエステル姉さん?嬉しいなー!キルマリアしか勝たん!」

 そのおしゃべりはマイナスなんだけどさ。でもふと考える。『妖精の隠れ家』のメンバーは全員『ジョブ』としての能力は申し分ないくらい普通に発揮している。ただ、パーソナルな部分が……うん。個性的なだけだ。

「だからあなたが前衛である以上、キルマリアを中心に戦闘を進めなくてはいけない。つまりキルマリアには一番負担がかかることになる。」

「そっかー。だからあたしに話を聞いておきたかったってわけね?でも、そんなこと気にしなくていいよ!あたしはエステル姉さんの指示に従って動くだけだからさ!」

「ありがと。でもあなたが一番私の指示を無視するけどね?」

「そんなぁ~ぴえん」

 そのあとは昨日の草原で魔物を狩っていた。やはり今日見て思ったけど、キルマリアは『アサシン』としてだいぶ完成されていると思う。攻撃パターンは豊富だし、相手の裏をかくような戦い方ができている。だんだんみんなのことがわかって来たような気がするわ。

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