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24. 知る初めてのこと

 24. 知る初めてのこと



 訓練と野営という名のキャンプは1日目が終わろうとする。今日は訓練は出来なかったけど、みんなが楽しめたならよしとしよう。

「とりあえず見張りを決めましょうか。基本的に私とエステルちゃんを軸にして若い子から交代で2人ずつでいいかしら?」

「それで構いませんよ。それじゃ最初は私がやりますよアリシアさん」

「ええ。お願い。じゃあまずはリーゼちゃんからね」

「はーい!」

 こうして見張りの順番が決まったのだった。私はこの後ルシルと見張りをすることになる。

 ちなみにキルマリアは「マジ?それじゃ、あたしまたマスターと一緒じゃん!しんど!」とか言ってアリシアさんに「キルマリアちゃん。ちょっとこっちに来て?」とか言われてテントに入って行ったけど無視しておいた。そして夜になり、私とリーゼは焚き火を囲んでいた。

「あのさリーゼ。今日の私の罠魔法どうだった?」

「えっ普通にすごーいって思ったよ?」

「でもあれはリーゼが誘導してくれたから成功したんだよ。もっと精度が必要よね……」

「うーん……そうかなぁ?私はすごく助かったけどなぁ~」

「そう言ってくれるとありがたいんだけどね……。」

 あれは完全に私の力不足だ。威力はあったけど、広い草原じゃなかったらみんなを巻き込む可能性もあるし。そもそも仕掛けた場所への誘導も必要……。まだまだ改良しなきゃだな。

「あのねエステルちゃん。私ねエステルちゃんが来てから、いっぱい戦えて感謝してるんだ!」

「え?リーゼはあまり戦闘経験がないの?」

「うん。危険だからって、力をコントロール出来なくなった時だけマスターやゲイルちゃんに手伝ってもらってたの。最近は扉壊すの少なくなってきたし!」

「そうなの……私はてっきり……」

「えへへ……ごめんね黙ってて。でも、みんなとダンジョン攻略をして、やっと自信がついたんだ。だから今日みたいにエステルちゃんと一緒に戦えて楽しいの!もちろんみんなとも!」

「そっか……ありがとうリーゼ。私もリーゼがいてくれて嬉しいよ。これからも一緒に頑張ろうね」

「うん!よろしくねエステルちゃん!」

 私は勘違いしていた。リーゼは魔物の首をへし折ったり、キルマリアと共に恐れず前衛で戦ってくれてたけど、自分なりに考えて行動してくれていたんだ。そんなことに気づけないなんて情けない。でもリーゼのおかげで私も成長できた気がする。

「ねぇエステルちゃん。明日は何をするの?」

「そうね……やっぱり実践じゃない?みんなとどこまでできるか確認したいし」

「確かに!私も楽しみだよ!エステルちゃんもいっぱい強くなるといいね!」

「ははっありがとね」

「もうそろそろ交代だ!ルシルちゃんを起こしてくる!それじゃお休みなさい!また明日ねエステルちゃん!」

「お休みリーゼ」

 リーゼは嬉しそうにテントに戻っていった。「いっぱい強くなるといいね!」……か。そしてしばらくするとリーゼと交代したルシルがやってくる。

「あの!よっよろしくお願いします。」

「ええ。そんなに緊張しなくていいわよ?」

「あっはい」

 まぁ……ルシルは15だもんね。普通に考えれば大人の人と2人きりなんだもんね、無理もないか。

「ねぇルシル。今日どうだった?ミルフィと一緒だったけど?」

 私がそう聞くと、ルシルはすごく楽しそうに話し始めた。湖で釣りをするのが初めてだったミルフィが大きな魚を釣ったらしい。そしてミルフィはソロで活動していたから、またパーティーを組む楽しさを実感しているという話だった。本当に楽しそうに話すルシル。

 焚き火の火が消えかかっている。私は木の枝や葉を追加する。最初は緊張していたみたいだけど、気づけばルシルの話を長い時間聞いていたみたいね。

「あとあと……」

「ねぇルシル?ミルフィの事を話すときすごく嬉しそうね?あなたにとって大切な存在になったのかしらね?」

「え!?……その……」

 私の言葉を聞いた途端、顔を真っ赤にして黙り込んでしまうルシル。まったく分かりやすいんだから……でもそれは男の子としての気持ちなのかしらね?それとも女の子?

「あのさルシル。私はあなたとミルフィが後衛としてより連携して戦うことが出来ればパーティーとして成長できると思っているの」

「えっ……あっ……はい!ボクもそう思います!ミルフィさんの魔法弾丸は強力ですし!」

「ええ。だからあなたがミルフィを支えてあげてね。ミルフィは自信家の割にすごくネガティブで泣き虫だからさ。しっかり守ってあげるのよ」

「はい!わかりました!」

「ふふっ良い返事ね。それじゃあそろそろ交代の時間だし、交代して寝ましょうか」

 私とルシルはアリシアさんとキルマリアと見張りを交代する。キルマリアが半泣きだったのは見なかったことにする。こうして1日目の夜は過ぎていくのであった。

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