157. 裏切りはダメです
157. 裏切りはダメです
あれから何度か挑戦しているが一向にクリア出来ない。というよりどこまで進んでいるのかも全く検討がつかない。恐るべし『ラブ☆メモリーズ』……。
「くそっ……なんでオレの気持ちが伝わらないんだよ伊織……」
「あの先輩。伊織ちゃんはゲームのキャラクターですよ?現実と混同しちゃダメです」
「ぐぅ……でも、それでも伊織には伝わって欲しかったんだ!だってあんなに楽しそうにしてたじゃないか!」
その後何度かやり直したが結局伊織とは上手くいかないまま時間だけが過ぎていった。
「くそっ!全然クリアできねぇじゃねぇか!おい夏帆!ノート持ってこいノート!全部書き出して絶対クリアしてやるぞ」
「はいはい。わかりましたよ先輩」
それからしばらくノートに書き出しては攻略法を模索していく作業が続いた。しかしどれもこれも失敗に終わっている。この女……なんてワガママなんだ。夏帆のワガママなんてめちゃめちゃ可愛く見えてくるぞ。
「ふぅー……これでもう20回くらいはやったぞ……」
「ですねぇ。私も少し疲れてきました」
「よし。次だ。次はこっちを試すぞ」
「はいはい」
そう言ってまた攻略法を模索する作業に戻る。しかし、何度も繰り返しやっているうちにさすがに飽きてきた。ふと夏帆のことを見てみると、ずっとスマホを操作していた。
「なぁ、お前何やってんの?」
「え?あぁ、これですか?実は今、SNSに投稿されたラブコメ小説を読んでいたんですよ」
「お前『ラブ☆メモリーズ』を裏切るなよ!お前が持ってきたんだぞこのゲーム!クリアするまでスマホ禁止!他のこともやらない!そして明日は土曜日。クリアするまで帰さん!以上!」
「えぇ~……まぁお泊まりはいいんですけど。私はただ先輩のためにと思ってですね……ってちょっと待ってくださいよ!スマホ!私まだ読み終わってないんですけど!?」
「知らん!自業自得だ!」
「うわぁぁぁあああん!先輩スマホ返してくださいよぉ~!」
こうしてオレと夏帆の地獄の『ラブ☆メモリーズ』攻略が始まるのだった。