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158. ドーナツ最強説

 158. ドーナツ最強説




「あっ先輩!伊織ちゃんの信頼ゲージが下がってますよ!」

「落ち着け夏帆。ここはドーナツを食べに行こう。ドーナツ最強説あるからなこのゲームは。」

 オレと夏帆は始めてから何度目かわからない『ラブ☆メモリーズ』を攻略しようと一緒になってやっている。ちなみに今は2章で、伊織の好感度をMAXまで上げている最中だ。

「何とか夏休み前までに好感度をMAXまで上げなくては……!」

 すると画面に初めての選択肢が出てくる。『伊織がしてきて嬉しいことを夢で見たんだ』というものだ。

『1.一緒に寝る』
『2.抱きしめられる』
『3.キスをする』
『4.一緒にお風呂に入る』

 ……うわぁぁぁぁ!!これどうすんの!?えっ?どれ選べばいいの?

「先輩……?さっきから顔真っ赤ですけど大丈夫ですか?」

「あ、ああ。全然問題ないぞ。それよりこの選択肢なんだが……」

「先輩は私にされたらどれが嬉しいんですか?」

「へ?」

 いきなり聞かれて変な声が出てしまった。でもそんなこと気にせず夏帆は答えを待つように見つめてくる。

「いやそりゃあ……全部だが」

「そうですか……じゃあ私は『4.一緒にお風呂入る』を選びたいと思います」

「ちょっ!?待て待て!それおかしくないか!?だって今2章だよな?まだ2章なのになんでいきなり最強イベント発生してんだよ!」

「先輩はゲームの進行度なんて関係ないんですよ。好きな人が喜ぶことはしたくなるものです。それにほら、早くしないと伊織ちゃんに怒られちゃいますよ」

「伊織はそんな汚らわしい女じゃねぇんだよ!お前じゃあるまいし」

「ちょっと先輩、それはそれでなんか嫌ですよ」

 まぁいい。考えても仕方ないので夏帆の言う通りにオレは意を決して『4.一緒にお風呂入る』を選択した。

『は?……マジでキモいんですけど?もう話かけないで。さよなら』

 画面にはいつものツンデレではなく、本気でドン引きしている伊織が表示されていた。そしてそのままゲームはエンディングを迎えた。

「もう!なんですかこの女!清楚ぶってるんですけど?そう思いませんか先輩?」

「……うんそうだな。なんせお前がすごく可愛く見えるしな」

「えぇ!?そ、そんな急に褒められても困りますよぉ〜」

 オレの言葉を聞いた途端、夏帆の顔はみるみると赤くなっていき、最終的に俯きながら身体をクネクネさせるという奇行を始めた。ウザい。まだまだクリアするまで時間がかかりそうだ。

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